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決戦!天界天華 プリンセス・アウラン part.8

「なに言ってんだ、テメェ。アイツはプリンセス・アウランだぞ。お前じゃないだろ」

「違う!違う違う!俺がプリンセス・アウランなんだよ!!アイツは……」

「アウフフ、久しぶりね。元気にしてた?」


 プリンセス・アウランが不敵に笑った。

 その言葉は剣の話していたことを否定してはいない、と同時にその声は彼女にも聞こえているようだ。


「ファウ、一体何を一人で話しているんだ?」


 エクソーンがきょろきょろとしながら言った。どうやらどこかに話し相手がいるのではないかと思っているらしい。



「アウフフ……って、もうこの笑い方も必要ないか。クズどもにコイツの声が聞こえないのは不便だな。聞こえるようにしてやろう」



 突如として黒い波動がプリンセス・アウランから沸き立った。とても強い寒気と痛みを伴う強力な闇の波動だ。

 こんなものが天界の姫であるプリンセス・アウランから立ち上るわけがない。

 


「こりゃ魔界の魔力だ。なんでコイツがそんなものを……」

「アイツは魔界の魔王だ。かつて天界を攻めた魔王ゼーラーなんだよ!!」

「ウックック。相変わらず口の利き方がなっていないな。剣に封印されても治らなかったか」

「エエッ――って、魔王ゼーラーって一体何ものなのヨ!?」

「ワイパーン……お前、そんなことも知らないのか」

「ボクも知らないけど」

「どーまんせーまん、僕は名前だけ」

「…………」



 ファウは絶句した。まさかお払い戦隊がそんなことも知らないほど馬鹿だったとは――

 いや、そうではない。問題なのは目の前に憧れだった魔王ゼーラーと呼ばれた者がいることだ。

 この剣はプリンセス・アウランを『魔王ゼーラー』だと言い、そして彼女もそれを肯定する発言をしている。

 恐らくは話している通りだろう。



「おい、アレは本当に魔王ゼーラー……様なのか!?」

「そうだ。もともとアイツはこの剣に封印されてたんだ。それをオレ……本物のプリンセス・アウランが解いちまったんだよ」


 剣、もとい本物のプリンセス・アウランが話した。

 大昔の天界による魔界侵攻は魔王ゼーラーを倒し、魔族を解放するための戦いだったのだ。

 天界に天使により魔族は解放され、天使と魔族は協力して魔王ゼーラーと戦った。

 戦いは熾烈を極めた。魔王ゼーラーの闇の力は天界の天使の光を持っても払うことが出来ず、闇の力を持った魔族では魔王ゼーラーに傷を負わせることはできない。

 倒すことができないのならば力を封じるしかない。

 魔族は闇の力を封印する剣を作り出し、そして天界はそれを扱うことの出来る人間を用意した。

 魔王に対抗する者はどこの世界、いつの時代も人間であった。

 それは天界の天使や魔界の魔族が持ち得ない力を、世界を作り出した神が与えていたということなのかもしれない。

 この辺りは天界でも魔界でも知られてはいない。世界を作り出した神の世界の話だという異次元の話になってしまうからだ。


 話が逸れた。元に戻そう。



「伝説の通りならば、その剣の話していることは辻褄が合う」

「さすがエクソーン、そんなことも知ってるのネ!」

「逆だ!逆逆!!お前達が知らないことが多すぎるんだ!一体、今まで何をして生きてきたんだ!?」

「どーまんせー、おはらい戦隊で遊んでたんだよー」

 

 お払い戦隊も固唾を呑んで状況を見守っていた。

 ファウに剣を届ければ事態を打開することができるだろうと踏んでいたのに、届けたら更に事態は大きくなってしまった。

 


「一体僕達はどうするべきなんだろうね?」

「伝説の魔王なんて私達が敵う相手じゃないワ!」

「しかし逃げる訳にもいかないだろう」


 エクソーンが呟いた。そんなお払い戦隊の騒ぎをよそに、プリンセス・アウランの姿をした魔王ゼーラーはファウへと語りかけている。


「ファウ、私はキミのことを気に入っている。キミからは……何故か私の魔力に近いものを感じる。もしかしたら私がキミの遠い祖先なのかもしれない」


(私に魔王ゼーラーの魔力……魔力?)


 もちろんファウに魔王ゼーラーとの血縁関係は全くない。

 遠い親戚でもなければ大昔の祖先である訳でもないのだ。

 それなのに魔王ゼーラーはファウに自分に似た魔力を感じていると言っている。

 これは一体どういうことなのだろうか?


「…………」

「さっきも言ったが、私はキミを気に入っている。どうだ?私と一緒に魔界を征服しないか。アウフフフ」

「お前、その笑い方癖になってんのか?」

「アウ、クック……ごめんね。長いことソイツの身体にいるせいで、この癖が抜けないようだ。我慢してくれよ……それで、どうなんだ?私に付いてくる気はないのか」

「そうだなぁ」



 ファウはちらりとおはらい戦隊の方をみた。4人ともこの事態を打開する手立てが思いつかないらしく、ただただ立ち尽くしているだけだった。

 そして元がプリンセス・アウランだと自称している剣に至っては、

 

「こんなヤツの話なんか聞くことはねェ!!」


 否定意見を叫ぶばかりである。どうにもうるさいので、ファウは剣を布にくるんだ。

 この布には魔力を遮断する効果があり、くるむとたちまち、怒鳴り声は聞こえなくなった。


「剣を納めた……ということは私に付いてきてくれるんだね。嬉しいよ。歓迎するよ」

「ただ条件がある」

「というのは?」

「コイツらの身の保証と魔界を無闇に攻撃しないで欲しい」

「前者は簡単なことだが、後者はどうだか分からないな。相手の出方次第、になる」

「じゃあ私が交渉役になるよ。私の親父が今の魔界の大王なんだ。事情を説明して、降伏すればよし。喧嘩になったらコイツで戦争、喧嘩別れでいいぜ」

「いいのか?お前の親父なんだろ?」

「構わねェよ。どうせ威張り散らして口うるさいだけなんだ」

「アウフフフ、やっぱり面白いよ、キミ。いいよ!やってみてよ」


 魔王ゼーラーが楽しそうに笑った。見た目は幼い少女のプリンセス・アウランだけに、とても可愛らしく見えるのが愛らしい。

 そんな様子をお払い戦隊は立ち尽くして眺めていた。


「おっ、おい……本当にそれでいいのか!?お前の父親なんだろう?」

「いいだろ。まだ喧嘩別れして戦争になると決まってるわけじゃないんだぜ」

「どーせー、8割は喧嘩することに決めてるんだ」

「そっちの方が楽しみそうな顔してるワ、ファウちゃん」

「ハハハ!もしも戦争になったら、お金を集めてやらないとなぁ。衛兵に手持ちのお金、全部渡しちゃって流石に集金しないといけないからさぁ」



 戦艦コンセリーグのプリンセス・アウランの部屋で突き抜けるような明るい声が響いた。

 やれやれ、とその声を艦の衛兵は呆れながらに聞いていたのだった。

 この先、一体何が起こるのか。彼等は教えられてもいなかったし、どうせプリンセス・アウランの途方もない我侭に振り回されるのだろうと嵐の前の平穏を味わっていたのだった。


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