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決戦!天界天華 プリンセス・アウラン part.5

「見てよ。コレを……」


 ファウは城のモニタールームへと連れてこられた。

 魔法の縄で手を後ろで縛られている。普通の縄と違って緩むことも切れることもない魔力でできた強力な縄だ。抜けることは不可能だろう。


「これは!?」


 ファウは息を飲んだ。

 その部屋にはピコピコと音を立てる銀色の箱がぎっしりと立ち並び、その表面には色とりどりの点が星のように瞬いている。


 これこそ映画の世界のようだ。宇宙や海上を部隊とした戦艦の内部だ。

 この城、天界の城は空を飛ぶ船のようであった。ということは天界の城は全てが城を模した戦艦なのではないだろうか?


「アウフフ、半分正解ってトコロね」


 勿論、全てが攻撃用の戦艦ではない。およそ3分の1が戦艦として密かに組みかえられているのだ。

 密かに……。



「お前、このことは天界の奴等も知ってないのか!?」

「当たり前でしょ。そんなの知られたらすぐにやめさせられちゃう。魔界を攻撃するにはこれが一番てっとりばやいのに、それをしないなんてバカとしか言いようがない……あっ、今ので余計なことを言われても困るからコレつけないとね」


 ふっとプリンセスアウランがファウに唇を近づけた。


「くっ、何しやがる!!」

「お口にチャック……なんてね。からかってみただけ。本当はこうするだけで」

「…………!!」


 こちらは魔法のガムテープ。指先をファウの口に沿わせただけで、ファウの口が開かなくなる。


「さぁ静かにして。鑑賞会を始めよう。大迫力の手に汗握る映像、ここでしか見られない。あっ、ポップコーン食べる?」


 口が塞がっているのだからポップコーンなんか食べられるわけがない。

 それでもプリンセス・アウランはファウの身体の上にポップコーンをおいた。

 モニタールームの椅子はまるで映画館の椅子のようにしっかりとしていてふかふかだった。


(ポップコーンといい、コイツ何を考えてやがるんだ?まだ殺すつもりもなさそうだが……)


 プリンセス・アウランはファウの隣の椅子で、子供のように目を輝かせながらモニターを見つめている。

 幕間劇が終わったようだ。といっても戦艦のモデルがグルグルと回っていただけだったが――。



 ジャーン!というオーケストラヒットが鳴り響く。続いてバイオリンの旋律が細く長く行進曲を奏で、それをラッパによる低い音が勇ましく飾り立てている。



 プリンセス・アウランが天界の音楽隊に特別に作らせたという特製のパレード曲『コンセリーグ』だという。


 このパレードのタイトルを頂いた戦艦『コンセリーグ』

 無数の戦艦を率いて魔界の空を制圧し、そこから爆弾の雨を降らせ、魔界の都市を徹底破壊していく。


 爆風とともに砂埃を巻き上げながら崩壊していく高層ビル。まるで危機を察知したアリのごとく足早に逃げまとう人々。


 それでも血の気の多い魔族は羽を広げて空を覆う戦艦へ立ち向かう。

 しかし戦艦に装備された対空気銃はそんな魔族を近づけることはない。そんな魔族を尻目に、最後は戦艦の一斉砲撃で魔王の城もろとも魔王を打ち倒し、戦艦は夕日の水平線へと消えていく。

 ――そうした映画だった。


「どう?面白いでしょ。これがこれから起こることなんだよ。何を隠そう……」

「…………」

「この城がまさにこの映画の主人公、コンセリーグなんだから」

「む、むむ!!」

「そう。もう映画は始まってるの」

 


 パチンとプリンセス・アウランが指を鳴らすと、周囲の状況がモニターへと写りだされた。

 周囲には黒いカラスの群れのような戦艦が無数に浮かんでいる。

 その艦隊の旗艦コンセリーグは巨大な主砲が搭載されている。更に左右に搭載された魚眼のような目はまるで生きているかのように妖しく光り輝き、目が合えば恐怖で動けなくなりそうだ。。

 

 あのオガー島でのガーラン・バードとは比較的にならない威圧感、脅威である。

 地上から魔法での攻撃が始まった。

 まるで打ち上げ花火のような閃光が宙へと向けて放たれ、艦隊を赤に黄色にそして黒色、色鮮やかに彩った。

 


 黒煙が戦艦を包む。状況は確認できないが、それでも攻撃の手は緩められない。

 次から次へと絶え間ない攻撃がコンセリーグと周囲の艦隊へと浴びせられた。

 


「すごい!すごいネ!!こんなに攻撃されたらさすがのコンセリーグもひとたまりもないかも……だけど」

 

 突如として戦艦を包んでいた黒煙が吹き飛ばされた。

 問答無用の状態確認である。誰が見ても、その姿には傷ひとつ付いてはいない。

 

「…………」

 

 静寂が広がった。あれだけ攻撃したにも関わらず、傷ひとつ付けられていない現実が地上の魔族へと広がったのだろう。

 しかしそれでもなお諦めず、次の攻撃の準備をしようとしたときだった。

 ギラリ!とコンセリーグの魚眼が鋭く光ると、

 巨大な主砲へと光が集まっていく。光はまるで流れるホースの先で詰まった水のように集約され、やがて巨大な光となり、

 

「それっ!発射!!地上の魔族をなぎ払って!!」

 

 歓喜の声が視聴中のプリンセス・アウランから上がると、それを合図としたかのようにコンセリーグは大いなる光を解き放った。

 地上は全てが消え去っていた。先ほどまで魔族が集まり、魔法や大砲を用意して攻撃していたのがまるで嘘のようであった。

 そしてエンディング、天界の完全勝利で邪悪な魔族は滅び去った!!というテロップが入り、壮大なオーケストラと共に幕が下りた。

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