決戦!天界天華 プリンセス・アウラン part.1
オガー島での『天界獣襲撃』。
これにより天界のプリンセス・アウランによる人間界への干渉、そして魔界への侵攻疑惑が生じていた。
魔界ではこれに対して天界へ抗議を申し出るも、
「そのようなことは一切関知していない」
と跳ね除けられてしまった。天界出身である『おはらい戦隊』についても、
「そのような野蛮で低俗な輩は、天界には存在しませんよ。そもそも、おはらい戦隊?なんですかお笑い芸人のユニットですか」
といった具合でまともに相手をしてくれない。
さて……
プリンセス・アウランとは――
天界の次期を治める女神だと言われている。
態度は尊大、自分以外の者をアリの兵隊程度にしか思っておらず、名前と実績を上げるためには何にでも手を出す。
それでいて悪名だけは『ワガママな姫君』程度にしか周知されていない。恐るべしであろう。
そんな彼女である。魔界への侵攻、その前段階であった人間界での魔王襲撃の失敗を受けて、そのまま大人しくしている訳がないだろう。
彼女はこれまでの全てを思うとおりにこなしてきたのだ。
天界で一番ランクの高い大学をトップ成績で卒業した。しかも6歳(人間の歳に換算して)でである。
通常ならば22歳、もしくは27歳は掛かるところを3分の1以下で修めているのだ。
これは口利きや策謀によるものではない。全てプリンセス・アウランの実力だ。
――ちなみにファウもマジメにしっかりと生きていれば、これに近い成績と能力を修めていただろう。
曲がりなりにも魔界の大魔王の娘である。ポテンシャルと潜在能力は魔界でも随一だ。
……ただやはりそうした金の卵、黄金のサラブレッドでも本人にその気がなければただの石と化すのだろう。
ファウの場合はまだサビきって薄汚い赤茶色に染まっているわけではない。
まだまだ金の輝きを取り戻すことができるのだ。そのきっかけが訪れる日は近い。
そんなことは露知らず、ファウが夢沙市のタイガーゴールドストリートを歩いていた時だった。
目の前に立ち塞がる人影が4人……
「そこのお前、ちょっと待つんだ」
「…………」
ファウは無視して通り過ぎようとするも、
「お前だと言っているだろう。お前だ、お前、お前じゃなければ誰が居る?」
「ああ?なんだってぇ」
明らかに挑発されている様子に、さすがのファウも我慢がならなくなった。
振り返って、ギロりとその4人組を睨んでやると、
「お前ら――クソ戦隊じゃねぇか!!」
そう彼らはクソ戦隊……いや、もとい『おはらい戦隊』の4人であった。
悪魔祓いのエクソーン
陰陽師 オンミョーン
お支払いのキャシャーン
露払い ワイパーン
4人揃っておはらい戦隊、EXシスターズ!!なのである。
そんなEXシスターズことおはらい戦隊は、前回のオガー島での一件で勇者マニアルと共に魔界へと移住してきた。
ディアスの話によれば、誰にも迷惑を掛けないことを条件に、居場所を把握する装置を持たされたうえで、魔界での自由が許されたという。
そんなおはらい戦隊が今、ファウの前に現われたのだ。一体何の目的があってのことなのだろうか!?
「フッ、そういきり立つな。我々は別にお前と争うためにやってきた訳ではない」
「どうせー、僕達がキミの前に出て来るときは、前回の仕返しにやってきたーとか思うんでしょ……」
「残念だけど、今僕達が争っても1銭にもならない」
「そうそう。むしろ同じ敵を相手に戦う仲間なのだワ」
「あんだァ?なに言ってんだお前ら」
どうやら今度は襲撃や復讐が目的ではないらしい。
そもそも『おはらい戦隊』はディアスに魔界や人間界での悪事や破壊活動を禁止されている。
もしもこの約束を破ってしまったら、ディアスは魔王ディアボロスの悪夢を『おはらい戦隊』に見せて、悪夢の中で処罰するだろう。
「ディアスさん、そんなこともできるのか」
「そうなのヨ。元の姿に戻りたくないから、悪夢の中で罰を下すって言われてるの」
「あの姿で凄まれたらいくらお金を出しても許して貰えないね」
「そんなことはどうでもいい。今日はお前に話があって来たんだちょっと付き合ってもらおうか」
「どういった用だ?面倒ごとならゴメンだぜ」
「……天界のことだ。プリンセス・アウランの、な」
「ほぅ、そりゃ面白そうだな」
ファウは頷くと、近くの店を指差した。そして二つのことをエクソーンに告げたのだった。
一つはそこの飯屋で話を聞く、ということ。
そしてもう一つは飯代は全てお前達が持つ、ということだった。