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爆弾を解除せよ!魔界イースト高等学校、爆破全壊の危機!! その1

 魔界には学校が存在する。

 それは魔界での暮らしにおいて必要なものを修得するための勉強をするところである。

 

 

 『魔界での暮らし』と一言いっても、それは一般の人間界の人間が想像するような闘争に明け暮れた修羅の世界ではない。

 魔界には魔界の人間界と変わらないような生活もちゃんと存在するのだ。

 


 さて、前置きがちょっと長くなった。

 魔界の生活や学校の勉強内容について説明をしていると、どうしても長くなってしまう。

 そうした話が長くなることは、あまり面白いことではないので割愛しよう。

 追々、状況に合わせて紹介していくので、どうぞお楽しみにするか、その場だけ読み飛ばして欲しい。

 どうぞ宜しくお願いします。



「学校の授業なんかつまんねぇよ。私は魔王の娘だぞ。十分強いんだから、学校で勉強する必要もないだろ」

 ファウの口癖である。

 


 ファウの魔界学校の成績は殆どの教科において『大天使』である。

 大天使と聞くとなんだか良いイメージがするが、それは人間界の感覚だ。

 忘れないで欲しい。ここは魔界である。悪魔の棲む世界である……悪魔族は一部にしか居ないが悪魔の世界である。

 


 悪魔の世界においての『大天使』なんてのは人間界における『ゴミクズ』と同義であり、忌み嫌われている存在だ。

 学術の評価にそんなものを付けられるのは、とてつもない屈辱、最低評価なのだった。

 

 しかし、ファウはそんなことも気にせず、


「強けりゃいいだろ。強けりゃさ」

 あっけらかんとしていた。強ければいいのは魔界においては一番大切なことではあるのだが、ことファウが将来なるべき『魔王』にとってはそれだけでは、全く足りない。

 


 魔王に必要なのは『圧倒的な強さ』だけではない。全てを従わせる知性、カリスマ性も兼ね揃えている必要がある。

 

 

 でなければただの暴れん坊で終わってしまう。一人が強くても、有能な部下を従えなければ、数多の配下を従えた相手には太刀打ちできないのだ。

 そうしたことも勿論、魔界学校の『魔会科』で教えているのだが、ファウは授業をサボっているので聞いていない。

 


「見つけたぞ!このバカ娘が!!とっとと学校に戻らんか!!」

「げっ!!ゼンソク!?お前、授業じゃなかったのかよ!!」

「今は体育で別の先生がクラスを見てるんだよ。それよりお前、ちゃんと授業に出ないか!?」

「私にはそんなモン必要ないんでな……それより、向こうからサキーマが来てるぜ。何か大事な話でもあるんじゃないか!?」

 


 ファウが廊下の角を指差した。サキーマはファウの担任、ゼンソク先生の恋人である。



「なにっ!?いったい何の用だろう?……って、おい待てぇっ!!」

 一瞬の隙を突いて、ファウはその場を去っていってしまった。ついでに角を曲がって出てきたのは、体育教員のワンシンであった。



「おや、ゼンソク先生、どうしなすった?」

「まったく!ファウのヤツは……!!困ったもんだ。真面目にやってりゃ、相当なモンだというに……」

「あぁ、そういうことですか」

 ワンシン先生はゼンソク先生の溜息を聞いただけで、事態が飲み込めたようだった。

「あのアズマ様も昔はあんな感じでしたぞ。ファウも今はああでも、そのうち目覚める時が来ますって」

「そうでしょうかなぁ……」

 ゼンソク先生は苦笑を浮かべてファウが走り去った廊下の先を眺めていた。


 

「って、せっかく授業フケても金もないんじゃやることがないな」

 ゲーセンへ行くにも買い物をするにもお金がなければ始まらない。ダークフレイムファンタジーとバクレツホースライムの件で所持金が吹っ飛んだファウである。


「こういうときは……」


 カツアゲでもするか。と思ったが、不良に近いファウでも一応は大魔王の娘である。カツアゲなんてはしたない真似はしたことがないのであった。

 父親に勘当される程度ならまだ望むところでもあるのだが、大魔王権限で『ガッツォー諸島』に島流しにされてはかなわない。



「仕方ない。学校にでも戻って点数でも稼いでやるか」

 ここは素直に授業に参加して、お小遣いを稼いでやるのが賢いとファウは思った。



 ゼンソクに何か言われるのもシャクではあるが、素直に授業を受ける分には文句はいえまい。

「ありゃ、普通に授業に出てるほうが得な部分が多いんじゃねーか?バカらし」

 

そうして学校の方へ足を向けたときであった。


「うわー、泥棒だー!!」


 叫ぶ声がけたたましく響いた。見ると、商店の一つから全身をローブに包んだ人影が外へ飛び出してきた。

 その人影は丁度ファウの方へと走ってくる。



「てめぇ!邪魔だ!!」



 大きなバッグを抱えたまま、その人影はファウを突き飛ばそうと身体を投げ出してきたではないか。

 あまりにもいきなりのことでファウは構えることなく、その体当たりをまともに受けてしまった!!


 ドッ!と鈍い音が響いた。しかし、ファウの身体は倒れてはいない。


「おいおい、挨拶くらいしろよ。まぁ、私もしねぇけどさ……」

「なっ!?」

「あーいって、こりゃ痛てぇな。これじゃやられちまうな。反撃オッケー!!だな」

 


 言い終わるや否や、黒いローブで身を包んだ泥棒の全身を叩きのめしていた。

 後ろに倒れるまでの間に脚から頭まで満遍なく拳を打ち込み、最後には渾身の蹴りをお見舞いしてやった。

 


 泥棒が商店のレンガに打ち付けられ。手から離れたバッグがファウの手へと落ちてくる。


「一丁あがりィッ!!」

 


 ファウはニッと笑ってガッツポーズを見せた。

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