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オガー島、再興・魔王と勇者が出会うとき part.3

 翌日からは地ならしが続いていた。

 カメとキジムラ大佐の衝突により発生した衝撃波で地表には大きなクレーターができてしまっていた。

 

 まずはこれを埋めなければならない。

 埋めるためには土が必要である。しかしオガー島は名前の通り、周囲を海に囲まれた島なのだ。

 土を用意するには島の外から運び込むしかない。

 

「力仕事ならゴーレムくんでできるんだけどな」

 

 ゴーレムくんは土は運べても海を渡ることができない。

 海を渡るには運搬用の船を用意するか、空を飛ぶか……。

 ともかく方法が限られてくる。一同はその方法を考えていた。


 

「キョウティの水魔法で海を割るとかできないのかい?」

「どうせの奇跡だね。出来なくはないけど、長時間は無理だよ。いっそのこと海の水を全部吹き飛ばすとかだったらできるんだけどね」

 


 大魔王アズマの娘だけに一度に大量かつ強力な魔力を放つことには長けているキョウティである。

 


「へっ、そのくらいなら私だってできるぜ」


 同じアズマの娘であるファウも同様だ。

 


「シュウくんはどうだい?何かできないのかい?」

「うーん。そうだなぁ」


 シュウは治療系の魔法を得意としているので、その魔法をどう応用しても今回の事態に対応できそうにはなかった。


「じゃあしょうがないから、船を作って少しずつこっちに運んでくるしか――」



 ディアスがそういいかけたとき、遥か高く青い青い大空から颯爽と現われた影が一つあった。

 その影は空中をハヤブサのように舞い、そして地上へと華麗に着地した。


「…………!!!!」


 誰もがその正体を察することができない。そもそもこの場で彼を知っている者はファウしかいなかった。



「てっ、テメェは……!?」

「お困りのようじゃのう。話は聞かせてもらった。その悩み、このキジムラ大佐が解決してやろう」

 

まさしくキジムラ大佐であった。登場するや否や、ファウに抱きつくあたりもまさしく彼である。

 

「このヤロウ!また大気圏までふっ飛ばしてやろうか!?」

「ファウ、ちょっと待った!!」

 

 キジムラ大佐の大気圏発射を止めたのはディアスであった。

 


「この人は悩みを解決してくれると言っていたよ。とりあえず話を聞いてみようよ」

「ディアス……さん、このクソ……いや、コイツはですね」

「僕に逆らったらアズマさんに、このことを色をつけて報告しておくよ」

「分かりまし、た」



 鳥のような着ぐるみにマスカレードマスクを付けているような怪人の話など、1ミリも聞くべきではない。しかもそれがオガー島をこんなにした一因を担っている相手なのだから尚更のことだろう。

 しかしディアスが話を聞きたいというのだから仕方がない。ファウはキジムラ大佐の発射を諦めた。



「とりあえず、私から離れろよ。このタコスケ!!」

「おお、なんと麗しい人よ!このキジムラ、貴方のご厚意、決して忘れませんぞ!!」


 キジムラ大佐が感謝の意を表している。それだけ見ると彼を悪い怪人だと思えない。


「ファウ、この人は一体何者なんだい?キミに抱きつくなんて、羨ましいんだけど」

「さらっと羨ましいとか言うなよ」

「キョウティも知りたいな。ファウくん、この人とどんな関わり合いを持ってるの?」

「なんか誤解を招くような言い方だな。そうだな……」


 こんな変態と知り合いで関係者だと思われるのも嫌なので、ファウはしっかりとキジムラ大佐との因縁を説明した。

 それによりシュウは喜び、キョウティは笑いを得た。ディアスも興味深そうにやはり笑っていた。


 (チッ、こんなことなら説明なんかしなきゃ良かったぜ)


 と思ったが、しなかったらしなかったで誤解は解けないのでしょうがない。



「ワシは鳥族の大佐じゃい。鳥族ならなんでも言うことを聞かせることができるぞ」


 一度目は軍隊キジを、そして二度目はガーラン・バードを率いていたキジムラ大佐である。

 なるほど、キジムラ大佐の話すことは嘘ではないようだ。


「それだったら、鳥を使って土を運んでくれるんだね!」

「お安い御用じゃ」

「というか、オガー島がこんなになったのはコイツのせいだぜ。コイツに任せるのがスジだろ」

「ファウくん……」


 ディアスがファウを睨んでいる。一応は協力者であるのに、ぞんざいに扱うことを嫌に思ったようだ。

 

「ごっ、ごめんなさい」

「分かればいいよ」


 ディアスが笑った。その顔はまるで少女のように可愛らしい。

 

「では早速、土塊を運ぶんだったら『バリキダック』が良いな」



 バリキダックは別名マッスルダックと呼ばれていて、海のゴリラとも言われている。

 筋肉質な身体のせいで空を飛ぶことは難しくなったが、水上を重量物を引っ張りながら移動することができる。


 クジラと戦い、打ち倒した末にクジラの尾を引っ張りながら水平線へ消えて行くバリキダックの目撃例は多い。

 また非常にストイックな気質をしており、特に用事がなくともタイヤ引きのように重量物を身体に括りつけて泳いでいる。


「――というのがバリキダックの特徴だね」


 一同の中では一番学校の成績が良いシュウが得意そうに説明した。

 とりあえずゴーレムくんに土塊を運ぶための船を作らせた。そして、それにゴーレムくんを載せて、呼び出したバリキダックに近くの陸地へ運ばせ、そこで土塊の収集を始めただった。



「いやー、よく働くね。何かご褒美でも出さないと悪いかな?」

「そうじゃな。ワシ、ファウちゃんと一緒に添い寝がしたいのう」

「お前にじゃねぇよ。勘違いすんな」


 バリキダックには魔界のプロテインが送られた。

 これでクレーターは埋まったのだった。

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