ガーラン・バードの脅威! 逆襲のキジムラ part.6 ~ 終
「こンのバカ娘が!あれだけ問題を起こすなと言ったろうが!!」
ファウの父、アズマの怒声が響いている。
「いってぇな。仕方なかったんだよ。こうでもしねェとオガー島が吹っ飛んでたんだぜ」
「お前が吹っ飛ばしたんだろう」
キジムラ大佐との最後の戦い。あの戦いの最後にキジムラ大佐を超高速で空中へ吹き飛ばし、更に高速のカメを魔方陣を使ってキジムラ大佐の真上に転移させた。
超高速の物体がぶつかりあった衝撃は、大気を大きく震わせ、強力な衝撃波を発生させた。
その衝撃波をオガー島は直に受けてしまったのだ。結果、木々はなぎ払われ、山はことごとく崩れ、鳥や獣は何処かへと飛ばされ、まるで荒涼と化してしまったのだった。
「…………」
この状況に一同は呆然と立ち尽くしていて間もなく、空からカメとキジムラ大佐が落ちてきた。
なんと双方、生きていた。
キジムラ大佐の不死身ぶりはここまでの戦闘能力、実力から推し量ることができるだろうが、このカメについては何の要素がもととなって一命を取り留めたのか不明である。
とりあえず、住処が荒廃の大地となってしまったオガー族は新天地を見つけるべく旅に出たのだった。
テルルやヌエールくんも一緒である。
「新天地を見つけたら、真っ先に招待するからね~!待っててね~!!」
と話していた。
「本当ならお前にオガー島の修復をさせてやりたいところなんだがな」
アズマが忌々しそうに呟いた。
ファウが壊したものを弁償、修復させるのは今までのお約束だが、今度の壊されたオガー島は今や誰かの所有物ではない。
――ということはこの場所をファウに修復させたりすれば、また勝手に城を建築したり、一大施設を建設しかねない。
アズマも魔界の統治で忙しい。人間界のことを見ている暇はないのだった。
「今回のことで人間界に派遣する『魔王』が決まってな。ソイツに修復してもらうことになった」
「やっりぃ!じゃあ今回は島の修理とかはナシだな!!」
「こンのバカ娘が!お仕置きナシで済むワケないだろが!」
「なんだよ。なんでも言ってみろ。島の修復以上の罰なんか出てこねぇだろ?」
「…………」
確かにそうである。作者もコレについては随分考えたものだった。
島流しに無給労働などあらゆる罰を思い浮かべたが、どれも島の修復以上の罰にはならないだろう。
今回の一件は元はといえばオガー族のテルルへの『人助け』であることだし、この度のことは涙を飲んで無罪放免とするべきではないか。
中にはそういう意見も出てきて、これで良いのではないか?と一時は決まりかけたものだった。
しかし小説の中、ファンタジーの世界において、そんな決定が下されて良いものだろうか?
少しばかり考えて欲しい。時間にして短くて1分、長くて5分くらいだ。
…………読者様が決められた時間は経過しただろうか?
経過したならば、この先を読み進めて欲しい。
元からファウへの処遇は決定している。
もちろんどこの世もそこまで甘いものではないのだった。
「人間界を支配する『魔王』になるのはソイツだが、ソイツの下でお前は島を修復するのだ」
「え”っ!?」
ファウは固まった。せっかく島の修復をしなくても済むと思って小躍りをしていたのに、まさか修復の役目が回ってこようとは考えもしなかったのだ。
しかしその一方で学校については、しばらく休んでも良いという話になっていた。
人間界での『魔王』の手伝い、一種の職業体験ということで出席と単位も出してくれるそうだ。
(まぁ、面倒な学校の授業に出なくてもいいんだったら、それはそれでオーケーか)
分かった分かったとファウは面倒そうにアズマへ手を振りながら部屋を出て行った。
今度のことは、早速週明けに始まるようだ。それまでに準備を済ませておかなければならないだろう。
必要なのは着替えくらいのものだろうか?
別に人間界に行ったきり魔界に帰ってこれないわけではないらしい。
必要なものがあれば取りに戻ったり届けてもらうことができるだろう。
そういう訳で『新魔王と職業体験編』が始まるのであった。