ガーラン・バードの脅威! 逆襲のキジムラ part.2
「なるほど、そういうことで僕の爆弾が必要なのか!よし、協力しよう――ただし以前のことは水に流してくれよ。その代わり、代金はタダでいい」
テルル依頼のガーラン・バード退治にはロックリバーの力が必要なだけに、ファウはその条件を飲んでやった。
「ガーラン・バードはペリカン属の魔鳥だ。主に魚類をエサとしている……つまり、魚型の爆弾、フィッシャーボムが有効だ」
「なんだお前。ガーラン・バードのことを知ってるのかよ」
「魔界中等学校の『魔界生物』の授業で出てくるだろう?知ってるだけなら小学生でも知ってるぞ」
「…………グゥ」
フィッシャーボム製作にはいくつかの材料が必要で、しかも大群を相手とするならばそれだけの量が必要である。
必要なものは大まかに3つある。
まずは魚である。
種類は問わないが、空を飛ばせるという特性上、小型の方が良い。
2つ目に発射台。
魚を飛ばすとはいえ、魚自体に飛行能力はないので空へ打ち上げるための発射台が必要だ。
3つ目に強化火薬粘土。
これは既にロックリバーが所有している。主に爆弾の材料であり、これを魚の身体に装着させることで爆発させることができる。
集めるべきは一つ目の魚と二つ目の発射台になる。
「魚は釣るわよ!オガー島で海釣りをしましょう!!」
ということで一同はオガー島へ向かった。青い空に浮かぶ太陽が眩しい。そして少し風が冷たかった。
「人間界には四季がありますから。今は冬になってますね」
「冬……」
魔界に住んでいるファウやロックリバーには四季は全く聞いたことがない言葉だった。
劫火が大地から吹き出る時期、極寒が吹き荒れる時期、雷の吼える時期、それらが前触れもなくやってくる。それが魔界なのだ。
「ホラ、釣竿持ってきたから、これで魚を釣るわよ。どっちが沢山釣れるか、勝負だからね!!」
「ハァ?なに言ってんだテメェ……こんなん張り合ってもしょうがねぇだろ」
「じゃあ僕は、発射台を作ってるから、魚を集めたら持って来てくれたまえ。待ってるよ」
ロックリバーは浜辺で発射台作りを始めていた。材料は木材を使うらしい。ファウが見たところでは、一体何をやっているのか、全く分からなかった。
「おーよしよし、釣れた釣れた!」
「あっ、僕も釣れましたよ!」
発射台の製作を眺めている間に、テルルとヌエールくんはイワシを釣り上げていた。
「運の良いヤツらだな。私にもなんかこねぇかな」
チッと舌打ちを漏らして、真剣になって水面のウキを見詰めているが、一向にウキは沈まない。
「わーやった2匹目!」
「テルル様、それを言うなら二尾ですよ。っと、僕も2尾目が釣れましたよ!!」
ヌエールくんはそう言ったが、魚の数え方は別に『匹』でもなんら問題はない。問題があるとすれば――
「…………むー」
水面を見詰めたまま唸っているファウである。
この後もテルルとヌエールくんは順調に魚を釣り上げていくのだが、ファウは1匹も釣れなかったのだ。
場所も少し距離を空けているとはいえ、大して変わりはないのに、である。流石に変だとファウも感じ始めていた。
「オイ、コレ釣竿か何かに細工がしてあるんじゃないだろうな。ここまで差が出るなんておかしいだろ、オイ」
「そんなことはありませんよ。ちょっと見てくださいよ」
さっとウキを手元に戻して確認してみるも、細工の後や特に変わった点は見受けられない。しかしファウはこれに納得できずに、私には分からない細工があるのだと主張した。それを見たテルルは笑いながら、
「こればっかりは実力でしょ?アタシ達は毎日釣りに勤しんでるけど、アンタは初めてじゃない?」
「グゥ……そうだけどさ」
「じゃあこうしましょう!テルル様とファウさんの釣竿を交換しましょう。それだったらお相子、不満はないでしょう?」
分かったよ。とファウはテルルと釣竿を交換した。釣竿に問題があるならば、これでテルルは釣れなくなるだろう。
ファウはそう思ったが、そんなファウの考えとは裏腹に交換した後もテルルは順調に魚を釣り上げていった。
テルルとヌエールくんで必要な数を集め、そろそろ引き上げようかといったところで、ようやくファウのウキが沈んだ。
「やった!やったぜ!!この野郎、俺の力を見せてやるぜ!!」
そのまま大きく後ろへと引き上げた。バカぢからには自信のあるファウである。こうなるとテクニックよりは腕力で全てを解決してしまう。
ザッと海面から何かが飛び上がった。ゴトン!と鈍い音を立てて、それは岩場に転がった。
「カメですね、コレ」
「カメかー」
ロックリバーが製作している発射台は魚専用である。魚の形状のものならサイズ差があっても発射できるが、カメのような魚の形をしていないものは発射することはできない。
「クソ!こンの役立たずが!!」
怒りに任せて、ファウはカメを海に投げ捨てようとしたが、
「ファウさん、落ち着いて!結構大きいですから、これは今晩のオカズにしましょう。釣った魚も余分にありますから」
ヌエールくんが慌ててなだめたお陰でカメは海に捨てられずに済んだ。
カメは逃げないように縄でギュウギュウに縛られ引きずられながら、オガー族の洞窟の中へと持って帰った。