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打倒!おはらい戦隊 EXシスターズ part.2

 あわわ、イースト城下町は大変なことになっているぞ。

 イースト城下町は魔界の一つの区画でファウが住んでいる街である。ファウが通っているイースト高校もこの区画にある。

 


 そのイースト城下町におはらい戦隊の戦闘員がそこかしこに暴れまわっている。

 別に彼らはファウから奪った力を持っているわけではない。奪った力で暴れまわっているのは、

 

 悪魔祓い エクソーン

 お支払い キャシャーン

 陰陽師  オンミョーン

 つゆ払い ワイパーン

 

 おはらい戦隊EXシスターズの幹部4人である。奪った魔力は仲良く4等分しているので、ファウの持っていた力の4分の1だ。

 数字だけ見れば大したことなさそうだが、彼女等がもともと持っている実力のことを忘れてはならない。

 


 ――あっ、ちなみにEXシスターズは『シスターズ』という単語が入っているが、別に全員女性という訳ではない。

 

 落ちこぼれは男女平等、全世界共通なのだ。

 


「この魔力……ファウのヤツだな!!今度は一体どんなイタズラをしているんだ!?」

 

 イースト高校ファウの担任のゼンソク先生が騒ぎを聞きつけて校舎から現われた。

 見渡してみるにファウの姿はないが、代わりに天使を模した全身タイツの怪人が町行く人を襲撃しているではないか。

 

「――これはどういうことだ?」

 

 一瞬、状況が分からなかったゼンソク先生だったが、ある魔界新聞の記事のことを思い出した。

 

 『魔王アズマの娘ファウ、トーク城をスライムで襲撃する!!』


 といった見出しである。

 バカなだけでなく恥晒しだ。幸い、魔界ではこうしたことは犯罪にはならない。

 ある程度の秩序を必要だが、基本的に弱肉強食が通用する社会だからである。

 


 仮にトーク城が攻め落とされたとしても、それはトーク城の責任であり、攻め入った側には非がないのだった。

 それならば力あるものはいくらでも攻めることができることになるが、魔界にも秩序もあれば平和もある。

 


 人間界における自然界と同じであろう。強い力を持つ動物はいくらでも周囲の動物を殺戮し、支配圏を拡大することもできる。しかし、彼らはそれをせずに自分の生きる範囲で生きるだけの殺生を行うに過ぎない。

 


 今の魔界は必ずしもそれと同様という訳ではないが近い状況であるのかもしれない。

 ちなみに上記の記事は魔界では大層な『笑い話』となってしまった。魔王アズマもファウもしばらくは世間に顔向けできなかったのだった。


 

 ――さて、余計な話はそれくらいにしよう。


 

 ゼンソク先生はこの騒ぎをファウの仕業だと考えたのだった。

 この変な怪人もきっとファウがどこからか集めてきたモンスターなのだろう。

 


(しかし、目的はなんだ?)

 


いくらあのバカ娘でも、いきなり町を混乱に陥れるようなことをして何の得があるのだろうか。

 せいぜいストレス発散になるのだろうが、そんなことは本人がやらなければ意味がないだろう。ともすればこの様子をどこからか眺めているのだろうか。

 


どちらにしても全身タイツの怪人を大人しくさせなければならない。ゼンソク先生は暴れている全身タイツへ駆け寄ると、有無を言わさずに地面に叩き付けた。

 


「目的はなんだ?お前等はファウの手先か?」

「いってぇ!!いきなり何すんだよ、オッサン!!」

「お、おっさんだと!?」

 


ゼンソク先生は44歳の身空である。オッサンではあるが、いざオッサンと呼ばれるのはいくらなんでも心に傷が付くのだ。

 


「ファウのもとへ案内しなさい。そうすれば……一応は許してやる」

「ファッ……ファウ?誰だよソレ。俺達のボスはエクソーン様だぜ」

「うん?エクソーン?知らん名前だな」


どうやらファウは関係ないらしい。少し安心したゼンソク先生である。

 ではコイツらは一体何なのだろう?そう思ったところに――

 


「私の手下が世話になったようだな」

「仕返しや報復は代金0!それじゃボクの出番じゃなさそうだね」

「どーせーまんせー、私の術も通用しそうにないしー……私もパスっスね~」

「二人が戦わないなら、勝てるわけないのだわ。私も戦わなーい」

 


 おはらい戦隊EXシスターズの幹部4人が現われた。

 


「おいっ、戦うのは私だけか!?」

「そういうことになるね。今の話を纏めると」

「どうせー、殴り合いに発展したら勝ち目がないよ?」

「コイツきっとレスラーなのだわ。おはらいスキルでも暴力を封じることはできないのだわ」

 

(なるほど……)

 

 ゼンソク先生は教師である。教師である故に相手の話から、相手がどういったものかを理解することには長けていた。

 ――ついでに言えば、相手の知能レベルも計ることができる。

 

 コイツらの知能レベルはファウと同レベル程度だ!ということだ。

 つまり頭が悪い。バカなのだ……バカである以上、その言葉に飾り立てするものはない。

 彼らが肉弾戦や格闘戦に弱いことは事実のようだ。

 それなら話しは早い。問答は無用でさっさとお縄につけるべきだろう。

 判断すると動くの素早い。さっとキャシャーンとオンミョーン、ワイパーンの腹部に蹴りや拳を突き入れると、

 


 「ぐふっ……」

 


 泡を吹いて倒してしまった。

 残るエクソーンもその調子で一撃の名の下に失神させてやろうとしたものだったが……。

 


「私は他の3人とはワケが違うのだ」

「なにっ……!!」

 

 同じように拳を叩き込んだが反応がない。受け止めているのか?それとも効いていないのか?

 そう思ったところで顔面を叩き返された。ずしんと重みのある一撃だった。この感覚、ゼンソク先生には覚えがあった。

 

(この感覚、ファウのアホに殴られたときと同じだ……そう、あれは入学当初に誤って着替えを覗いてしまったときのことだった)

 

 バカでアホだが、あの時ばかりは一丁前に顔を赤くして顔面を殴ってきたものだった。

 アイツもあれで女の子なんだなぁ……と思ったものだったが、それ以降は箸にも棒にもかからないくらいに悪さを繰り返した。

 

 もしかしたら、あの時のことを根に持っているのかもしれないと思ったが、悪逆な言動はゼンソク先生以外の教師や生徒にも当たっている。

 アレのどこが気に入ったのか知らないが、ファウの許婚のシュウに至っては城を襲撃されている。

 暴れん坊で無茶が過ぎるのは着替えを覗いた結果ではなく元の性格なのだろう。

 

 

 しかし今はそんなことを考えている場合ではない。

 エクソーンに殴られた感覚はファウに殴られた時の感覚そのままであった。

 単に偶然なのか、いやしかし……この感覚で思い出したのはファウの顔であった。

 

「少し我々のことを舐めているようだな。この魔界征服の手始めにお前を倒そう」

 

 

 そうすれば魔界だけでなく天界の連中へ自分達の存在をアピールすることができるとエクソーンは言った。

 (天界だと?コイツらには天界が絡んでいるのか?)

 

 薄れる意識の中でゼンソク先生は驚いていた。

 天界が絡んでいるとなると、ただのバカなイタズラ集団では済まないことになる。

 

(アズマ様にお伝えしなければ……)


 そう思いながらも体は動かない。そうしているうちにエクソーンが歩み寄っていた。

 その手には剣が握られている。

 クソッ……もうダメだ!!とゼンソク先生が覚悟を決めた瞬間であった。

 


「見つけたぜクソやろうども!好き勝手やりやがって、ぜってぇ許さねぇからな!!」



 ゼンソク先生もハッとして意識が返ってきた。

 聞き覚えのある怒鳴り声である。

 その声のする方へ目だけを動かし、うかがってみると……

 そこには剣を構えたファウが居たのだった。

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