第1話 入婿の経緯
吉川元春(以下元春):「はじめまして、毛利元就が次男にして吉川家の養子に出されました吉川元春にございます。」
小早川隆景(以下隆景):「皆様のお住まいの地域は今。朝でしょうか?昼でしょうか?それとも夜でしょうか?同じく毛利元就の三男にして小早川家の養子となりました小早川隆景にございます。」
元春:「今回我々が呼ばれた理由なのでありますが……。」
隆景:「なんでも【入婿】をテーマに毛利家を語れ。……だそうであります。」
元春:「お前が養子に出されたのは幾つの時だっけ?」
隆景:「数えにして8つの時でありましたね……。」
元春:「8つなら記憶はあるな。」
隆景:「これが2つ3つの時でしたら。親から離され、泣き叫ぶ中。保育士さんに手を引っ張られ引きずり込まれる総合こども園初日の風景になっていたのかもしれませんが。さすがにそれは無かったですね……。ただ……。」
元春:「ただ……?」
隆景:「『海を見せてやる。』と連れてかれて、そのままずっと……になるとは思いませんでしたね……。」
元春:「でもお前はまだ恵まれてるよ。竹原の小早川の家から求められたことに加え、父・元就の主人にあたる大内義隆からのお墨付きを得。更にはその義隆から偏諱を賜ると言ったきちんとしたレールが敷かれての養子縁組であったのだから。それに対して俺はと言ったら……。」
隆景:「吉川家の重臣のかたがたからの推薦はあったんですよね……。」
元春:「……のちのちまで家が残ったからそのように書かれているけどな(苦笑い)。でも実際のところは、義理の父となった興経の命を保障した上。興経の息子が私の養子となり、成人した暁には家督を譲らなければならない。明治維新の礎になった。誇らしい立場となった毛利の一族。歴史など幾らでも書き換えることの出来る立場であっても、本来であれば消すべき汚点を記さざるを得なかった……。そもそもが吉川のほうが毛利より格は上だからな……。」
隆景:「でも毛利と吉川は、小早川同様。親戚にあたりますよね。」
元春:「……あの辺り全員親戚だよ……。」
隆景:「そうでしたね……。」
元春:「で。興経は当時40歳の働き盛り。まだ『続投する。』と言い張っている中、無理からに引きずり降ろしたマウンドの上に登らされる俺の気持ちわかるか?」
隆景:「でも観衆(重臣)からは温かい拍手で迎えられたのでしょう。」
元春:「……その辺りは、……(歴史を)書き換えることが出来たのかな……。」