過去編~お父様の戦略
よ、ようやく次でプロローグが終わる。
本編どうしよう(汗)
街の門は開いていると報告があり、すでに連合軍は街が見える距離まで来ていた。
「確かに開いているな。逃げだしたのか?」
この戦力差ではその可能性もあると考えたが、あの生意気な領主が逃げるとは考えづらかった。少し考えていると街の門から誰か出てきた。
「私はアルフォード・ミスレイン!この街の領主である!このまま去るならよし!ただしこの街へ入るのなら命を捨てよ!」
私の口上にアレク公爵は鼻で嗤った。
「クックック・・お前の方こそ現状をわかっているのか?お前こそ泣いて許しを乞えば楽に殺してやるぞ!」
戦力差を見ればどちらが優勢か誰でもわかる。つまりアルフォードは虚勢を張っているだけなのだ。ハッタリでこの場をしのごうとしているだけなのだ。他の貴族達や兵士達も嗤う。
「私の命を奪う前にお前の命を消してやるわ!者共、奴を殺した者には特別に褒美を取らせるぞ!アルフォードを殺せ!」
アレク公爵が命じると雄叫びを上げ兵士達が進軍する。アルフォードは一目散に街へ逃げていく。それを見たアレク公爵はまた嗤いながら進軍するのだった。
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敵の兵士達が我先にと街の門を越えた所で、家の屋根から弓隊が姿を表し一斉に矢の雨を降らせた。
「ぎゃっ!」「ぐぁっ!」
虚を突かれ、入口に群がった兵士達が倒れる。慌てた兵士が退こうにも入口に群がったせいで後ろに下がれずバタバタその場で倒れていく。
「ええいっ!小賢しい真似を!!!一旦引けーい!弓の届かぬ位置まで下がれ!」
アレク公爵はすぐさま兵を引かせ隊列を組ませた。盾を持つ兵を先頭にその後ろに弓隊を組織して再度、街へ進軍させた。その的確な指示は敵ながら流石であった。アレク公爵は野心家であったが無能ではない。実質的に王国の半分を支配し、次代の子供に王家と婚姻させ最終的に本当の王国の王となる事を夢見て生きてきた。そしてその夢は夢では無く、もうすぐ現実となる所まで来ているのである。今回の反乱鎮圧の実績と、この領地から産まれる利益で確実となるだろう。
「油断せずゆっくりと前進しろ!大隊とは別に小隊を家屋の上に行かせ、敵弓隊を抑えろ!」
味方の骸を越えながら怒りに満ちた顔で仲間を殺したアルフォードを殺してやる気で歩みを進める。
入口を越えても次は弓矢は飛んで来なかった。小隊が入口近い建物を捜索したが誰も居なかった。どうやら隊列を組んでいる間に撤退したようだ。
「このまま前進する!街の中央の広場まで行くぞ!斥候の小隊を先行させ敵が潜んで居ないか確認して進め!」
こうして、ゆっくりではあるが確実に街を制圧して進んでいくのだった。
その頃ー
「う~ん・・・マジかー、アレク公爵の奴やるな」
どこか気の抜けた言葉で呟く人物がいた。アルフォード本人である。弓隊で被害を受けると、すぐに引いて隊列を組直したのである。敵ながら認めるしかない。
「確かに無能では無い見たいですね。このまま弓隊をすぐに引かせ第二作戦へ移行します」
隣にいたグラン男爵が報告する。
「ああ、頼む!無理はするなよ?」
グラン男爵はニヤリと笑い敬礼した後、その場を後にする。
決戦の時は近い・・・
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連合軍はついに街の中央の広場までたどり着いた。だが連合軍の兵士達の顔色は悪い。それはここまで来るのにそれなりに少なくない被害を受けていたからだ。
まず斥候を放ち、待ち伏せが無いか調べさせた。ここまでは良い・・しかし誰も見つからなかったにも関わらず、敵の奇襲を受けたからだ。アレク公爵は斥候の無能差を怒ったがそれは無理のない事だった。人が1人がやっと通れる脇道に、建物と同じ色を塗ったベニア板で通路を隠し、少数で奇襲を掛けたのだ。先頭はシリカを筆頭に腕に覚えのある兵士が10人単位で、左右から攻撃を加えた。左右合わせて6つの通路から飛び出したのだ。それと同時にあらかじめ仕込んであった建物を壊して、道に倒れるように崩して敵を分断し、混乱している敵を圧倒的に強いシリカ達が出来る限り倒して撤退する戦法を採った。更にこの戦法をもう一度行いさらに敵の数を減らした。すると敵、連合軍はいつ建物が倒れて来るのか気が気では無く、奇襲にも気を使わないといけないので精神を擦り切らしていた。だからこそ、普段なら気が付く事に気付け無かった。
「皆の者!臆するな!!!」
アレク公爵は苛立ち混じりに吠える。
「既に街の中央たどり着いたのだ!ここなら建物が倒れてくる心配は無い!奇襲も防げる!まだまだこちらの方が人数は多いのだ!敵が現れたら皆殺しにしろ!」
その言葉に兵士達の気力が戻るが、そこへ拡声器での声が響いた。
「アレク公爵及び連合軍達に告げる!お前達は既に包囲されている!武器を捨てて投降しろ!」
アルフォードの声が響くがアレク公爵は鼻で笑い言い返す。
「ふざけるな!兵力はこちらが上、貴様らに多少被害を受けたとは言え、こちらを包囲する兵力が在るわけ無いだろう!見え透いたハッタリはよせ!」
連合軍もそうだと言わんばかりで罵る。そこ1000の兵士を連れたアルフォードが反対側の大通りから姿を表した。
「ふははは、その程度の数で4倍以上の我が兵士経ちとやり合うつもりか?」
相手の数を見て勝利を確信する。
ーが、その後に信じられない光景を見る。
広場に繋がる道という道にアルフォードの兵士が道を覆い尽くすように現れたのだ。明らかに万単位の人が広場を囲むように武器を構える。
「ば、バカな!こんな数の兵がいる訳が・・・」
アレク公爵は絶句する。
「降伏しろ!で無ければ皆殺しにする!これは脅しではない!私に謂われない罪を着せ反逆者にしたのだから。それ相応の覚悟をされたし」
「ふざけるな!どうやってこれだけの兵士を集めた!他国の兵でも引き入れたのだろう!お前は正真正銘の反逆者だ!」
今の現状を認めたく無いのか大声で反論するアレク公爵。
「アレク公爵、この兵士達は義勇軍ですよ。この街は昨今、繁栄を極め人口5万人を超えます。そこで女、子供を除いた成人男性を2万人動員したのです」
「なっ!?・・しかし録に訓練もしていない烏合の衆よ!我らの敵ではないわ!」
「本当にそう思いますか?私の正規兵1500と2万の武装した義勇兵を倒せると本当に思いますか!最後の通告だ!降伏しろ!」
正規兵の残り500は義勇軍に散らばらせて先頭に立たせている。敵と切り合っても直ぐには崩れないだろう。
「黙れ!貴様を殺せばそれで終わりよ!全軍で貴様に掛かり貴様の首を取ればこの戦いも終わる!」
交渉は決裂らしい
「全軍でアルフォードを殺せ!奴を殺せば周りの奴等も武器を下げて投降するだろう!やれっー!!」
敵兵が向かって来ると同時に、ドゴッーン!と大きな音がしてアルフォードの目の前の地面が1メートルほどの幅で陥落した。落とし穴とは少し違い、陥没した1メートルほどの穴は広場を囲むように広がっていった。敵兵も動けずにその場で留まっていると、広場を中心に田んぼの【田】の字で地面が綺麗に別れ、敵の戦力を4等分に分ける事となった。しかし1メートルぐらいの幅であれば飛び越える事が出来る。だが、その後に更なる一手が投じられた。
地面から炎が吹き上がったのだ。落とし穴に大量の油が入れられていたのだ。
「うぁーーーー!!!」「熱いーーー!!!」「助けてくれーー!!!」
辺りに阿鼻叫喚が響く。これだけ離れている自分らでも熱いのだ。真下にいる彼らは地獄だろう。余りの熱さに逃げようと焼死覚悟で炎を飛び越えてきた兵士を捕まえて縄で縛る。
暫くたち、兵士に炎を泥で埋めるよう指示する。
「これでみんなは救われたが、このような外道な行いをして本当に良かったのか・・・」
私は自分のしたことを目に焼き付けるようにこの光景をじっと見ていた。そんな私にシリカがそっと手を握る。
「戦争に正しいか何てないわ。そうしないと貴方が、街のみんなが死んでいたか知れない。私も貴方と一緒に罪を背負って行くわ」
シリカの言葉に救われた気持ちになった。
「みんな!私達の勝利だ!!!これからが大変だが、生き残れた事と戦の勝利を祝おう!」
辺りから歓声が聞こえた。
こうして、こちらの兵士達にほとんど被害がなく圧倒的な勝利を納めたのだった。
炎に焼かれた兵士達は煙と酸欠などで亡くなり、早目に火を消したにも関わらず1000人弱しか生き残ら無かった。アレク公爵も酸欠で既に死亡しており、軒並みの高位貴族が死んでいた。アルフォードは、死んだアレク公爵及び高位貴族の首を跳ねて腐敗しないように塩漬けした箱に詰めた。これらを国王に届けるつもりだ。
この後の事故処理を街の人達に頼み、一晩ゆっくりと休んだ後に1500人の全軍兵士を連れ王都を目指し出発した。
さぁ、ここからが本番だ。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
戦闘シーンは書いた事が無いのでかなり削りました。だってどうがんばっても安っぽくなるので
( ノД`)…