小太郎 先生と教育実習
小太郎 一年生三学期が始まる
「晶ちゃん おはよ!久しぶり!」
「太郎ちゃん おはよ 久しぶりって昨日も会ったでしょ」
「そうだっけ?」
「はい それでは 冬休みの宿題を提出してください」
「今日からみなさんと一緒に勉強をする 先生を紹介しま〜す」
「先生なのに勉強するのか?」
「先生と言っても 先生になる勉強をしているのです」
「先生じゃないのか?」
要は 教育実習生なのだ
「今日から 2週間皆さんよろしくお願いします」
「おぉ!よろしくされるぞ!」
その 先生 は この小学校の卒業生の 斎藤と言う女の人
「このクラスの委員長さんは?」
「太郎ちゃん 先生呼んでるよ」
「俺は 小太郎だぞ! いん長なんて名前じゃ…おぉ!俺だ!先生 俺がいん長だぞ!」
「ん〜と…小太郎くんだよね 2週間よろしくね」
「おぉ!任せろ!」
「斎藤先生 あのクラスは 小太郎くんを見てれば これから先 先生としてのいい勉強になると思いますよ」
「あの 委員長の?」
「そう やんちゃ盛りで まだまだ子供だけど…あの子には教わる事がたくさんあると思うんです」
「わかりました」
小太郎!多分…褒められてるぞ
「この問題わかる人!」
「はい!」「はい!」
「じゃあ!晶ちゃん」
「35です」
「はい 正解です」
「じゃあ 次はこの問題 わかる人!」
「はい!」「はい!」
「小太郎くんはわからないのかなぁ?」
「えぇ〜 先生 わかる人って言ったじゃん!俺 わかんないから手挙げてないんだぞ!」
「そっか…そうだよね…」
「あの〜 小太郎くん 勉強の方は…」
「小太郎くんに 勉強を求めちゃダメだよ」
「でも…委員長なら 少しは…」
「私もね 最初はそう思ったの…でもね あの子には それじゃない 何かが 他の子にはないものがあるの」
「そうなんですか…」
「先生〜!」
「小太郎くん あっ 晶ちゃんも」
「母ちゃん!この人 教育…の先生だぞ!」
わからないとこは言葉を濁す小太郎
「あぁ 教育実習 の先生ね」
さすが小太郎の母ちゃん
「あの〜 もしかして…」
「えっ?」
「私 覚えてます?」
「あ〜〜!覚えてる!」
「なんだ母ちゃん 先生の事知ってんのか?」
「先生!小太郎くんのお母さんだったんだ!」
「もう先生は辞めましたよ」
「先生 何言ってんだ?母ちゃんは先生じゃないぞ!」
「小太郎くん!小太郎くんのお母さんに先生は習ったんだよ」
「何習ったんだ?」
「太郎ちゃん!太郎ちゃんのお母さんって 先生だったんだよ」
「なんで 晶ちゃん そんな事わかるんだ?」
理解するまで しばらくかかる小太郎…
「えぇ〜!母ちゃんって先生だったの?」
「先生が小学生の頃に小太郎くんのお母さんに習ったんだよ」
「私にとって 貴女達が最後の卒業生だったなぁ…数年後 これ が産まれて辞めちゃったから」
「答辞!卒業生代表!斎藤…」
「…はい」
「答辞……」
泣いて 答辞を読めない卒業生代表
「斎藤さん!」
会場に響き渡る声
「先生…」
「泣かないで 笑うんだよ!笑えばちゃんと話せるから!ねっ!笑うんだよ」
「わかったよ…先生…」
先生は あの時 の事を思い出していた
(あの先生の子供なら 何か を持ってるっていうのもわかる気がする)
「先生も どんと祭 に行くのか?」
「そうだよ」
「んじゃ 一緒に行こう!俺の半分やるぞ!」
「半分?」
「これ!」
小太郎が持っていたのは さつまいも…
さつまいもを焼いて 無病息災を願うのか?
「今日はここに混ぜて貰おうかなぁ?」
「おぅ!いいぞ!」
給食は班ごとに食べるのだ
「先生!人参好きか?」
「先生はなんでも食べますよ」
「なら 俺の人参あげるぞ!」
「小太郎くん 自分で食べなさい!」
姑息な小太郎…
「はい この時間は 道徳 の時間です!今日は 僕 私の友達という題名です!」
「みなさん 仲の良い友達同士で集まってください!」
みんな仲の良いグループに分かれる
小太郎はもちろん晶ちゃんのところにいた
しかし…数名が1人で居るのに気付く先生
(しまった…)
そう先生が思った時
「おいで!俺達のとこに行こう!」
小太郎が1人でいる生徒1人1人に声をかけて歩いたのだ
(これが 先生が言ってた他の人にはない何かなんだ!)
「みんな集まれ!」
小太郎の号令でみんなが一箇所に集まる
「先生!みんな仲良しだぞ!」
小太郎に 教えられる教育実習生
「小太郎くん にも 先生教えられちゃった」
「何をだ?」
「皆さんと一緒に勉強してきた 斎藤先生は今日で 教育実習の期間が終わりです」
「えぇ〜!もう2週間経ったの?」
「今度は 先生 としてこの学校に戻って来てもらいましょうね」
「は〜い!」
「小太郎くん!委員長として クラス代表の挨拶してください」
「えぇ〜!めんどくせぇからいいよ!」
「はぁ…斎藤先生ごめんね…」
「いいえ…小太郎くんらしくていいじゃないですか」
「んじゃ 斎藤先生から一言いただきますんで 皆さん静かに聞いて下さい」
「皆さん…今日まで皆さんと…」
斎藤先生は泣いて話せない…
「あれ?…ごめんね…」
「先生!」
小太郎が立ち上がる
「先生!俺 楽しかったぞ!先生との勉強…焼き芋一緒に食った事 楽しかったぞ!だから笑え!」
「えっ?」
「笑えば話せるんだ!楽しかったんだから笑うんだぞ!」
斎藤先生は 涙が止まらなかった…
「皆さん ありがとうございました…」
それを言うのが精一杯だった…
「先生に言われた時は ちゃんと答辞言えたけど…小太郎くんに言われた時は あの時の分も 思い出しちゃって…」
「この子が そんな事を」
「さすが 先生の子供ですね」
「太郎ちゃん 私にも言ってくれたよ 年中さんの時」
「へぇ〜〜 そうなんだ!」
小太郎 晶ちゃん 小太郎の母ちゃんが 斎藤先生に街中でたまたま会ったのだ
「蛙の子は蛙ってやつなんですかね」
「どうなんだかねぇ…」
「母ちゃ〜ん!助けて〜!」
小太郎を見ると 柵に頭を挟めてもがいていた…
「はぁ…まだまだ子供には 変わりないわ…」