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泡沫と夢
彼女は言った。
______少しでもいい、彼に会いたかったの。
そんな彼女に気付かずに無様な男は言う。
____君が僕を助けてくれたのかい?
すべてを知りながら、あの女は言った。
____そうです。私があの嵐の夜に溺れたあなたを
助けました。
と。
女の思惑に気付きながらも、伝えるすべのない彼女はただ歯がゆい想いで見つめていた。
そんな彼女を愛しく思うヒト成らざるモノに気付かず。
一方的な想いは最悪のカタチで終わることとなった。
彼女は、人魚姫は。
泡となって消えてしまった。