コトの始まり。04
うわ! わ!
ブックマーク2件の壁を突破しました! 嬉しい!
ありがとうございます!
がんばります!
「……名前?」
「はい!」
「俺が付けるのか?」
「はい……っ!」
ヒルビナは、やはり即答。
目にも涙がかっていて、キラキラしている。
しかし困った。
俺は大の男に、ワンワンという名前を与えた男だぞ。
名前なんて、それこそギャグっぽく考えるのが精一杯だ。
ましてや、願いや想いを込めた素敵な名前だなんて、俺が思いつくわけがない。
「んー……」
悩んでいると、ヒルビナは肩を落としてこう尋ねてきた。
「ダメ……ですか……?」
「ダメじゃない」
そう、ダメじゃない。
だって、転生に関して出来る限り協力するって、心のなかで約束したからな。
ダメじゃない。
だけど、そんなにすぐ決められるわけでもない……。
よし、こうなったら転生先の種族から名前をもじるか。
ヒルビナが転生する種族は、クォーターだ。
正確に言えば、祖父と祖母は、たぬきの獣人と人間。
その子供であるハーフの母と、人間の父のあいだに生まれる子供、それがヒルビナだ。
決めた情報の中から、要素を挙げていく。
ヒルビナ・クォール
たぬき。
4分の1。
人間。
クォーター。
うーん……。
…………うーん……。
…………。
……。
……ダメだ。
なんも思い浮かばねえ。
英語にでも直せれば違ったんだろうが、なにせ俺はFラン大学生だ。
英語なんて、グーグル大先生に丸なげだったからなあ。
いっそのこと、「たぬきち」にでもしてえところだけど……。
ひねり出すしかねえか。
『クォーター』から、オ。
『ヒルビナ』から、ル。
『たぬき』から、ヌ。
『にんげん』から、ニ。
オルヌニ。
ねえな。
『ヒルビナ』から、ナ。
『よんぶん の いち』から、ノ。
『にんげん』から、ン。
で、ナノン。
どうだろうか。
ヒルビナはヒーローみたいな人物になりたいのだから、可愛らしすぎず、かといって女の子っぽさが残るような名前をイメージしてたんだが……。
いいんじゃないかな。これで。
妥協じゃなくて、もう俺の頭の限界だし。
「ナノンって名前は、どうだ?」
これで拒絶されたら、他にどんな名前にしようか……。
もう思いつく自信がねえぞ……。
そんな不安をよそに、ヒルビナはまばたきを2回した。
少しだけ固まってから、ヒルビナが震える。
「あ、ありがとうございます神様! 一生懸命に生きます!」
良かった。
あー。
まじで良かった……。
よし、じゃあ名残惜しいが、そろそろヒルビナともお別れだな。
与える祝福も決まった。
名前も決まった。
もう、俺が引き止められるコトはない。
―――――――――――――――
転生神の祝福前。
死者名:ヒルビナ・クォーター
区分:人間
性別:女性
善ポイント:162
悪ポイント:8
どっちつかずポイント:2
―――――――――――――――
から。
―――――――――――――――――――――ー――――――
転生神の祝福後
転生名:ナノン・ヴィルデット
転生開始時:胎児
区分:人間
性別:女性
善ポイント獲得スキル。
【確定済み】転生前の記憶保持
【確定済み】転生後の言語理解(聴覚)
【確定済み】転生後の言語理解(発声)
【確定済み】転生後の言語理解(書き)
【確定済み】転生後の言語理解(読み)
【確定済み】常人の3倍背丈が伸びる
【確定済み】絶世の顔の造形になる
【確定済み】剣豪の心得
【確定済み】剣の心
【確定済み】剣士の体
【確定済み】魔法使いの心得
【確定済み】補助魔法
悪ポイント獲得スキル。
【確定済み】本来の身長より10センチ縮む(重複不可)
【確定済み】方角を経度に見失いやすい
【確定済み】悪人に極経度に目を付けられやすい
どっちつかずポイント獲得スキル
――――なし。
―――――――――――――――――――――ー――――――
となった。
うん。
なかなかにチートなんじゃなかろうか。
俺はマニュアルを手に、立ち上がる。
そうして数歩ヒルビナに近づいて、マニュアルを読み上げる。
「死者ヒルビナよ。次に目を覚ますとき、そなたの名前はナノンとなっている。転生先はミドルディラル、剣と魔法の世界だ」
そこまで定型文を言って、俺はマニュアルから目を離した。
「君は獣人と人間のクォーターとして転生する。クォーターの平均身長は、およそ70センチだ。その中でもたぬきの獣人は背が小さい。だけど君は、比較にならないくらいに大きな存在になるだろう。奇異な視線を浴びるだろう、侮辱の言葉を言われるだろう。だけどナノン、君なら乗り越えられる。……活躍を期待している」
「はい。神様……」
重く、深く、受け取った。
そんな表情で深呼吸してから、ヒルビナが1歩、俺に近づいてきた。
赤い魔法陣がヒルビナの足元を照らす。
だけど、ヒルビナは止まらない。
2歩目3歩目……そうやって、俺に近づく。
それを追いかけるようにして、赤い魔法陣がいくつも構成されていく。
「へへへ……。さようなら、ですね……神様」
そう言って微笑んで、ヒルビナが俺の手を掴む。
「え?」
そんな一言を言うのがやっとの、ほんの少しの瞬間だった。
ヒルビナが俺の右手の甲にキスをした。
1歩下がって、ヒルビナがはにかむ。
「……また、会えるといいな」
「……お、おう!」
思わず、返事をする声に力がこもる。
知らずうちに、胸がドクドクと騒いでいた。
そのことに気づくと同時に、ナノンへの祝福画面がポップする。
―――――――――――――――――――――ー――――――
転生神の祝福後
転生名:ナノン・ヴィルデット
転生開始時:胎児
区分:人間
性別:女性
善ポイント獲得スキル。
【確定済み】転生前の記憶保持
【確定済み】転生後の言語理解(聴覚)
【確定済み】転生後の言語理解(発声)
【確定済み】転生後の言語理解(書き)
【確定済み】転生後の言語理解(読み)
【確定済み】常人の3倍背丈が伸びる
【確定済み】絶世の顔の造形になる
【確定済み】剣豪の心得
【確定済み】剣の心
【確定済み】剣士の体
【確定済み】魔法使いの心得
【確定済み】補助魔法
悪ポイント獲得スキル。
【確定済み】本来の身長より10センチ縮む(重複不可)
【確定済み】方角を経度に見失いやすい
【確定済み】悪人に極経度に目を付けられやすい
どっちつかずポイント獲得スキル
――――なし。
特殊スキル
【確約済み】転生神の眷属(上書き・消去不可)
【確約済み】転生神の祝福(上書き不可)
―――――――――――――――――――――ー――――――
そうして…………。
気が付けば、ヒルビナの姿がなくなっていた。
無事に転生できたのだろう。
別れ際を見れなかったのが残念だが、きっとまた会えるだろう。
モブータのときとは違って、俺はそう思えて仕方がなかった。
「転生神の祝福を」
小さく呟いて、俺はヒルビナが消えた場所に、視線を向けるのだった。
ドシュン!
俺の後ろで、そんな音が聞こえるまでは……。
「神様! なのんだよ!」




