神バトル肉弾戦 02
『神の尖兵は、鍛えなければ弱い』
マニュアルに書いてあった言葉が脳裏に浮かぶ。
最も、なのんは決して弱くはないだろう。
だがそれは、あくまで初期値の強さだ。
実践の経験もなければ、鍛錬の経験さえない。
力の強い赤ん坊と同じだ。
「『正剣ダブリ・ソード』」
なのんから右腕を離し、ダブリが唱える。
おそらくは召喚系の魔法だろう。
それにしても名前がダサい。
そこは聖剣じゃないんだ?
「『偽剣ダブリ・ソード』」
おっと二刀流?
それはカッコイイ。
なにせ配色は黒と白だ。
厨二心がくすぐられる。
刃の幅は、それぞれが25センチもある。
デカイ。
刃の長さなんて1メートル半だ。
超デカイ。
なのんがダブリから離れる。
後方にジャンプし、6メートルほど距離を開ける。
やっぱり、スピードはなのんが圧倒的だな。
ダブリは追いつけていない。
逃げに徹すれば、おそらく致命傷は避けられるだろう。
しかし、それでは勝てない。
近づかなければ、……攻撃しなければ勝てない。
だが、近づいたところでダブリには攻撃が通用しない。
対するに、だ。
ダブリには長く太い巨躯がある。
その上、もともと長かったリーチに長剣の刃長が加わった。
攻撃範囲は倍。
攻撃力はそれ以上。
さらに言うならば、双剣によって防御も高くなっている。
これは…………詰んだか?
「無理はするなよ! 勝てないと思ったら、素直に降参しろ!」
幼女のスプラッタとか吐き気がする!
ていうかダブリのヤツ、攻撃絶対に手加減とかしてねーだろ。
あれ殺しにきてるよ。
俺が忠告を入れようと1歩前に出たところで、なのんが叫んだ。
「神さま、開始早々で少し恥ずかしいのでれすが――!」
ダブリの斬撃を2連で躱しながら、再び叫ぶ。
「承認をお願いしれります!」
その瞬間、俺の目の前に画面がポップした。
―――――――――――――――――――――――
特殊スキル・『転生神の眷属』の初期波動を感知。
―――――――――――――――――――――――
許可しますか?
YES/NO
―――――――――――――――――――――――
転生神の眷属ってなんだっけ?
俺の素朴な疑問は、必死な叫びにかき消される。
「承認をっ!」
見れば、なのんが追い込まれていた。
部屋の角隅に追いやられ、逃げ場は前方にしかない。
だが、その前方にはダブリがいた。
ダブリは両手の剣を、自分の頭上よりも高い位置に振り上げていた。
あれを振り下げられたらヤバイ。
勉強ができない俺でも、それだけは分かった。
だけど、『転生神の眷属』ってどういうスキルだった?
危険なデメリットはないだろうか……。
ああああもうわかんねえ! くそ!
ええい!
ろくに考えて幼女スプラッタになるより百倍もましだ!
瞬時に判断し、ろくに考えないまま承認を「許可」する。
ダブリが双剣を振り下ろしたのは、……それから1秒後だった。
なのんが後方に跳躍する。
どうやら『転生神の眷属』は、まだ発動していない。
魔力が動いていない。
なのんはカベを蹴り、1段、2段と跳躍する。
そうして何とかダブリの猛攻を回避し、そうして――消えた。
なのんが消えた。
その場に決闘者はダブリしかおらず、他には観戦者しかいない。
「消えたのではない。超光速移動だ」とか言ってなのんが出てきたら面白いんだけどな。
こねーか。
まあ、来るわけねーな。
「臆したか……? っ!? いや、これは……!」
「神さま、なのんはどこ?」
ダブリは感づき、レオルが訊く。
答えはその2秒後。
「神さま! 許可していただき、ありがとうございます」
「お久しぶりです神様! ナノン・ヴィルデット、ここに参上致しました!」
転生神の尖兵・なのん。
そして……。
剣と魔法の世界「ミドルディラル」に転生させた少女、ナノン・ヴィルデットがいた。
2人は俺の足元で片膝をつき、頭を垂れる。
そうしてナノンはふと頭を上げ、振り返り、ダブリを見据えた。
「まずは、神様の敵を蹴散らしましょう」
ちなみに、ダブリの長剣は『正剣』が黒で、『偽剣』は白です。
『正剣』は刃がついており、『偽剣』は付いていません。
けど『偽剣』でも、ダブリの怪力で叩きつけられたら骨が折れて致命傷です。




