コトの始まり。 02
慌てて『厳粛』と『荘厳』を発動する。
次いで、『パーランス』でマニュアルを隠す。
こちとら神歴15時間だからな。
遠慮なくカンニングさせてもらうぞ。
「ここは神のヤシロ。俺は転生神だ。死者よ、君を転生させよう」
さーってと、業務業務。
マニュアルによれば、俺の仕事ぶりは監視されているらしいからな。
サボったり女神さまの肩書きを汚すことは、死と直結するって書いてあった。
女神さま!
俺は頑張ってますよ!
だから殺さないでね!
「転生? ってことは、私は死んだんだね?」
よし、ここまではマニュアル通り。
変な気を起こすなよ?
「その通り。だが安心するが良い。俺が新たな生を授けてやる」
「それって一体、どんな転生をしてくれるの?」
えっと、質疑応答は……あ、このマニュアルじゃない。
「しばし待たれよ」
あれー?
どこやったっけなー?
マニュアルだけで50冊は超えてるからな。
マニュアルの補足を含めたら200冊はいきそうだ。
今度ちゃんと整理しねーと。
「あの……神様?」
「ん?」
「なにを……しているんですか……?」
「準備運動だ」
床に膝まづいて探すこと、体感4分。
俺はマニュアルの質疑応答編を『パーランス』させ、「どっこらしょ」の掛け声と共に、ソファーにふんぞり返る。
えーっと。
あった、あった。
「なるべく死者の希望を叶えることができるぞ。既存の世界、既存のスキルを与え、好みの容姿を与えることができる」
らしいよ。
んで、確かこっちのマニュアルだよな。
あっ、違う。
こっちか。
「そのため、いくつかの質問に答えてもらう。もちろん、質問に答えなくとも良い。ランダム、または現在の容姿のまま、転移することも可能だ」
「転生で! 転生がいいです!」
「承知した」
―――
「要約すると……背が高くて、格好良くて、剣術と魔法が得意で、そんな自分になってから、剣と魔法の異世界に行きたい。そういうことで良いか?」
「はい!」
なかなか欲が強いなあ。
これ全部叶えるの、すっごい善ポイント使いそうだけど……できるだけ叶える
って話だし、まあいいだろう。
っていうか、さっきから俺をみる女の子の目がスゴイ。
めっちゃ輝いている。
ときめいている。
とかの表現のほうが近いかな?
よし頑張ろう。
さっそく『バレテーラ』を使い、女の子の情報を目視する。
―――――――――――――――――――――――――
死者名:ヒルビナ・クォール
区分:人間
性別:女性
善ポイント:162
悪ポイント:8
どっちつかずポイント:2
―――――――――――――――――――――――――
うわっ。
これすごいな。
どんな人生をおくれば、善ポイントだけ、こうも高くなるんだよ……。
いや、でも、これは彼女の功績だな。
それだけ、人のために頑張ってきたんだろう。
「ヒルビナよ。そなたの善行、俺はずっと見てきた。次はそなたが報われる番だ」
と、言ってみる。
するとヒルビナはぶわっと涙を浮かべて、コクコクと何度も頷いた。
「う……うぅ……う。頑張り……ました……! お母さんに、ひっく、死んじゃったお母さんに、顔向けできるように、わたし、頑張りました……っ!」
「う、うむ。そなたの母も、喜んでいる。誇って良いぞ。そなたは立派だった」
その言葉を聞いて感極まったのか、今度は声をあげて泣き出してしまった。
ごめんよヒルビナ。
ごめん、ずっと見てきたとか言ったけど、見たのは数字だけなんだ。
本当ごめん。
もっと好感度を上げたらどうなるかなって、ちょっとした出来心だったんだ。
……ああ……。
俺をみる彼女の目が痛い。
感謝とか、そういうのをきっと超越してる。
俺をみる彼女の目が痛い。
ごめんよ。
ウソを付いた謝罪は、転生後の生活として返させてもらいます。
俺にできるのはそれくらいだ。
……きっと、これができるのも俺くらいだからな。
よし。
それじゃあ、いっちょ頑張りますか。




