初めての転生神 02
「ボクは、チーレムが欲しいんだ!」
そんなモノは俺も欲しい。
そういったツッコミをする間もなく、死者は歯をむき出しにして、俺に猛ダッシュしてきた。
慌てて転生神のスキル「ラン・ラン・ディレイ」を発動させる。
走れば走るほど、対象者の動きが遅くなるっていう効果だ。
効果は劇的だった。
死者は最初の1歩目で、ほとんど動けなくなった。
この速度は見たことがある。
カタツムリの速度だな。
1歩目でここまで減速するとは……。
本当にチーレムが欲しかったんだろう。
情熱の深さが伺える。
だけど、思慮の浅さも伺えるな。
Fラン大学生の底辺な俺が言うんだから、間違いない。
それにしても、コイツは歯だけで俺を殺そうとしたのだろうか。
犬かな?
とにかく、コイツは俺を殺そうとした。
あと、俺にツバ吐きやがった。
つまり危険分子だ。
えーっと、マニュアルマニュアル。
【危険分子の対処法は、基本的に何をしても良いです。
日頃のうっぷんを晴らしましょう!】
お、楽しそうだ。
とりあえず、おデコに「ボクはワンワンです」とでも書いておこう。
ふふふ。
これは神のマジックペン(レインボー)だからな。
転生した先でも一生残るぞ。
さて、ここからが転生神の醍醐味、特典プレゼントタイムだ。
転生神のスキル、「バレテーラ」で、個人情報をすっぽ抜く。
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死者名:モブータ・ペニテット
区分:人間
性別:男性
善ポイント:23
悪ポイント:23
どっちつかずポイント:99
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ふーん。
23と23、それと99ポイントね。
善ポイント、悪ポイントは、生前に行った善行、あるいは悪行を数値化したもの。
どっちつかずポイントはその名の通り、善にも悪にも属さない、けれど自分のために行ったわけじゃない行動を数値化したものらしい。
マニュアルにはそう書いてあった。
さーて。
どんな風に改造してやろうかな?
俺はワクワクしながら、能力獲得リストを見てみる。
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善ポイント獲得一覧。
使用不可
使用不可
使用不可
使用不可
使用不可
転生前の記憶保持…………5ポイント
転生後の言語理解(聴覚)…………5ポイント
転生後の言語理解(発声)…………5ポイント
転生後の言語理解(書き)…………10ポイント
転生後の言語理解(読み)…………8ポイント
……
……
……
―――――――――――――――――――――――――――
ダメだ。
なんか制限されてる。
本当なら、この善ポイントで初期ステータス……チートとかが手に入るんだけどなあ。
残念だなあ。
善ポイントは使えないってよ、モブータ・ペニテット!
どんまい!
ポイント的には、取れるスキルもあるけど……。
俺を殺そうとした罰で、善ポイントは使わないでおこうかな。
ツバ吐かれたし。
まじドンマ!
さーってと、次はお待ちかねの悪ポイントの割り振りだ。
善ポイントと違って、こっちは全部消費しないといけないからな。
大変だ。
よっしゃこい!
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悪ポイント獲得一覧。
使用不可
使用不可
使用不可
使用不可
死ぬまでハゲ…………5ポイント
使用不可
使用不可
……
……
……
――――――――――――――――――――――――
それにしても、見にくい。
お、ソート機能あんじゃん。
えーっと、獲得できるスキルのみ表示っと。
っと、いうわけで……以下の通りになった。
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悪ポイント獲得一覧。(ソート:獲得可能スキル)
【確定済み】死ぬまでハゲ…………5ポイント
【確定済み】頭装備不可…………6ポイント
【確定済み】異性からの好感度10%ダウン(重複可)…………3ポイント
【確定済み】異性からの好感度15%ダウン(重複可)…………9ポイント
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ぴったり23ポイントだ。
マジどんまい!
さて、次はどっちつかずポイント、99の割り振りだ。
こっちは育つ環境をいじれるポイントだ。
家庭環境や、ある程度の未来を変えることができる。
転生神も楽じゃないね!
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どっちつかずポイントの獲得一覧。(ソート:獲得可能スキル)
【確定済み】7歳時まで裕福な家庭…………39ポイント
【確定済み】7歳時から崩れる家庭…………3ポイント
【確定済み】9歳時に現れる秀逸な師匠…………51ポイント
【確定済み】片手で握れるほどの小さな幸運……6ポイント
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俺も鬼じゃない。
転生者としてのスキルも記憶もないけど、それでも、これで十分な仕送りにはなるだろう。
転生神の祝福前。
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死者名:モブータ・ペニテット
区分:人間
性別:男性
善ポイント:23
悪ポイント:23
どっちつかずポイント:99
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から
転生神の祝福後
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転生名:ワンワン・イヌポッポ
転生開始時:胎児
区分:人間
性別:男性
善ポイント獲得スキル
……なし。
悪ポイント獲得スキル
……死ぬまでハゲ
……頭装備不可
……異性からの好感度25%ダウン
どっちつかずポイント獲得スキル
……7歳時まで裕福な家庭
……7歳時から崩れる家庭
……9歳時に現れる秀逸な師匠
……片手で握れるほどの小さな幸運
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となった。
どちらかというと祝福よりも呪詛よりだけど、まあ神を殺そうとした罰だ。
当然だな。
ツバで汚れたし。
それでも、息を吹き返すチャンスを与えてるんだ。
むしろ感謝されてもいいかもしれない。
転生先はオルテイ。
剣の世界だ。
……じゃあな、ワンワン。
0からのスタートだ、1で止まるも100になるも、アンタしだいだ。
「まあ頑張ってくれよ、ワンワン」
未だ歯をむき出しにしてノロノロと移動している死者に向かって、俺はそう微笑むのだった。
「転生神の祝福を」
それを合図に、モブータの足元に赤い魔法陣が浮かび上がる。
そうしてそのまま、デコに「ボクはワンワンです」と虹色のインクで書かれたモブータは、オルテイへと旅立った。




