初めての転生神
衝動書きしました。
よろしくお願いします。
結論から言おう。
俺は異世界に転移した。
信じられないとは思う。俺だって信じられない。
だけど事実だ。
あれは蒸し暑い夜のことだった。
アイスでも買おうと玄関を出たところで、急に足元が光りだした。
新しく設置したセンサー式ライトか?
それともスマホでも落としたか?
そう思って地面を見たけど、そこにあったのは変なラクガキだった。
今にして思えば、あれが異世界転移の魔法陣だったんだろうな。
黄色い魔法陣、青い魔法陣、そんで最後に赤い魔法陣。
その順番で、俺の足元は3色の魔法陣でいっぱいになった。
そうしたらすぐに目の前が真っ暗になって……
目が覚めたら異世界だったんだ。
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転生してから15時間が経った。
「ここはどこだ……?」
俺は戸惑う男を前に、ひどく偉そうにふんぞり返っていた。
このソファーは良い。ふっかふかだ。
思わず目を瞑りたくなるが、俺は業務の最中だ。
眠りたくはなるが、さすがに職務中に睡眠なんてモノは許されない。
「ようこそ死者よ。俺は転生神、お前に新たなる生を授けよう」
だから俺はなるべく低い声で、長すぎる定型文を省略して告げる。
渡されたマニュアルに書いてあった定型文をそのまま読んでいたら、日が暮れるどころか1年だって過ぎてしまいそうだ。
だからこその省略。
つまり省略は、俺なりの歓迎の仕方だ。
職務怠慢じゃない。
死んだヤツに贈るせめてもの慈悲ってやつなんだ、うん。
情報の隠匿とか、そういうのじゃない。
「転生……死者……?」
おし、意思疎通は問題ナシっと。
えーっとマニュアルマニュアル。
俺は転生神のスキル、『パーランス』を発動させる。
ついでに、同じく転生神のスキルである『厳粛』と『荘厳』を使う。
『厳粛』は、俺が絶対的な支配者であると、相手が勝手に、そう思い込むスキルだ。
『荘厳』も似たようなものかな。
俺が本来対面することができない神秘的な存在である……と、相手が勝手に思うスキルだ。
要するに、強さとカリスマ。
その2つを、俺は雰囲気として身に付けることができるってスキルだ。
雰囲気だから、実際に強くなったりだとか、賢くなっただとか、そんな風にはならないけどな。
まあ、神々しい雰囲気を身にまとう。
これだけで、Fラン大学生だった俺も、立派な神様みたいなモンだ。
そこに『パーランス』の効果、「見られたくないモノを相手に見せないようにする」というスキルで、カンペを凝視していてもバレることはない。
『厳粛』と『荘厳』の効果で、相手が勝手に息を飲んでいる間にマニュアルを用意する。
もちろん「パーランス」の対象は、このマニュアルだ。
マニュアルを凝視する神様だなんて姿は、相手には見えていない。
神の威厳は守られたままだ。
えーっと、目次、目次。
あった。
転生者との初めての対話は……7ページ目か。
どれどれ?
【転生者の多くは、自分が死んだことを理解していません。
よって転生者の第一声は、多くの場合「ここはどこだ?」や「お前は誰だ?」となります。
その場合は、別冊に用意した『転生神の心構え』の1918182899040985899ページ目を見てください】
ここじゃないな。
つぎのページか。
【次に転生者が言うことも、大抵は決まっています。何万回も聞いてきました。
「俺は死んだのか」コレです。コレにつきます。
大抵はションボリしているので、元気付けてあげましょう】
本当かぁー?
「……やっぱり。ボクは死んだんだな……」
本当だった。
なるほど、元気つけてあげれば良いのか。
それにしてもこの転生者、見事にマニュアル通りだな。
初めての職務で不安だったけど、相手がマニュアル男で良かった。
んで、元気付ける言葉だったか?
死人にかける言葉なんて習ってねーんだけどなあ。
ギャグでも言えばいいんだろうか。
転生神が言いそうなギャグって何だろう。
下ネタでいいかな?
「ふ」
ん?
「ふっふふふふ! はーはっはっははは!」
えっ。
なんで笑ってんの?
俺まだ下ネタ言ってないよ?
「そういう! そういうことか……! ああ神よ、感謝します!」
えっ。
なんだろう。
怖い。
と思ってたら、死者は俺をまっすぐと睨みつけてきた。
視線を向けてきたとか、見てきたとか、そういうんじゃなくて、睨みつけてきた。
「転生神よ」
「え、あ、はい」
あ。
思わず素で返しちゃった。
言い直さないとダメだ。
マニュアルにも、ナメられたら負けって書いてあるしな。
とりあえず、低い声でも出しておくか。
「ごほっ、ごほんん、んん……。死者よ、どうした?」
「ボクは生きているとき、様々な転生物のマンガや小説を読んできた」
「うむん」
それは俺もだ。
なんか親近感でてくるなあ。
「その中に、神を名乗るヤツを殺してスキルを奪い、チーレムを創り上げるという作品がある」
睨みつけてくる死者の目に、輝きが灯る。
俺の足元にツバを吐いて、コイツは言った。
「ボクは、チーレムがほしいんだ!」




