まさかの朝チュン!?
〜*〜*〜*〜
「じっとしてろって」
「んー。やだっ!」
「おいっ、ちっ!あんた誘ってるのか」
「苦しっ・・・」
「おまっ…知らねぇぞ。泣くんじゃねー」
〜*〜*〜*〜
ほわほわとした温もりに包まれて、なんだかホッとする。いい匂い、我が家じゃないみたい。
・・・我が家じゃない、みたい?
目を開けるとまだ薄暗く、夜が明けていないようだ。
ああ、アロマの匂いか。ローズ系かな、私無意識にアロマオイル入れたんだ。
ゴロッと寝返りをうち時間を確認しようとして、固まった。
(待って!うちの時計じゃない。え?カーテンが・・・ブルー。うちのはオレンジ)
ガバッと起きたさ!
「うっ、頭、痛い」
仕事が終わって一人居酒屋して、そしたら伏見警部が邪魔しに来て。
伏見警部っ!? あれ、その後どうしたっけ。
此処は、何処。ぐるりと頭を一周させてみた。分かったことは我が家ではないと言う事。
(まさか、まさか、人様のお宅なんじゃ?その人様って、やだ違って欲しい)
「起きたのか?」
「ふひゃっ!!」
すっと開いたドアの向こうから顔を出したのは、伏見警部!
違って欲しかったぁ。
私は思わず片手で額を抑え、項垂れてしまった。
「大丈夫か?なんか。おかしな所とかないか?」
「へ?ーーっ!」
布団を捲って確かめる!い、い、致してない。
よかったぁ、は、ははっ。
「あんたはバカか」
「バカって、どう言う意味ですかっ!っ、痛い」
「飲めないのに調子に乗って飲むからだ。ほら、薬」
お水と頭痛薬を持ってきてくれていました。
なんで分かったんだろう。
「すみません。イタダキマス」とカチコチな動作で手にとった。
ふと自分の手元を見て思ったんですが、シャツ着てる。
「効いてくるまで大人しく寝てろ」
そう言うと伏見警部は部屋から出ていった。
シャツ・・・私のじゃない!恐る恐るベッドから下りて確かめた。
シャツワンピなんて持ってないから、これは私のではない。
で?シャツの下はノーブラっ!?
捲って見るとショーツは履いていたぁ。
何これ!『彼氏のシャツ借りちゃった、えへっ』な格好してる。
「いやー!」
私は頭を抱えてその場にしゃがみ込んでいた。
「おい!どーした」
「わっ!ご、ご、ごれどーいうごどぉ?」
「・・・は?」
私は酔っ払って、ついに年下男子に手を出してしまったのかぁ。
4年、たった4年彼氏いなかっただけでこんな事なる?
そう言えば変な夢も見たよね?『俺の女になれよ』的な・・・。
恐るべし30歳、彼氏なし4年!
「あの、ごめんなさい!!」
「いや、そんなに謝る事でもないだろ」
「でも、でも、私最低です。恥じらいもなく、そのっ」
「まあな。アレは無いわ」
「ですよね。忘れて下さい!お願いします」
恐らく人生で初の土下座をした。
ああ!この人、警察官だったよ。どうしよう、前科つく?
なんの罪?【強姦罪】ってやつ・・・終わったぁ。
「あんたさ」
「はいっ」
「酒飲むのやめろ」
「はい」
「あんなんじゃ、襲われても文句は言えない」
「仰る通りです。すみません」
「ったく、あんたの家知らねえし。まさか、カバン漁るわけにも行かねえし。ま、職業柄何てことはないんだが・・・」
「本当に申し訳ありません」
「久しぶりに人をおぶって歩いたよ」
何と自力で歩いていなかった。
「仕方なく俺の家に連れてきた。そしたらあんた、苦しいって服を脱ぎだすから」
「キャー、それ以上は言わないで。私が悪いのはよく分かっています。いくら伏見さんが年下でイケメンだからって、節操もなくその、手を出してしまって・・・。反省しています!だから、警察沙汰にはしないでください」
なんか、泣けてきた。自分の始末も出来ないなんて終わってる。
能力以前の問題だよ。
「泣くなよ。ってかさ、あんたっマジで、はははっ!」
笑ってる!お腹抱えて笑ってる。
「警察官に向かって、警察沙汰しないでくれって…ぶはははっ!」
「あ、そっか。伏見さん、警察官だった」
「どうする。あんた俺に手、出したんだろ?」
「どうするって、もう謝る以外に」
「責任、取ってくれるの?」
「せ、責任!?」
男の人に責任取ってと言われるなんて、なんて女だ。
「私にできることなら、お金は無いですけど」
「じゃあなに、躰で払うって?」
そう言って伏見さんは私の顎に指をかけ、顔を上向ける。
わ、格好いい・・・じゃなくって!
彼の焦げ茶の瞳の奥は私しか映っていない。
私はこの人に、今から・・・?
「決めた、あんたを当面俺の監視下に置く。その間、他の男との接触は禁止する」
「え」
「仕事以外でだ。それともあんた、彼氏がいるのか」
「彼氏は、いませんけど」
「ならいい。取り敢えず、寝ろ」
そう言って伏見さんは出ていった。しかも、去り際にほんの少しだけ、ほんの少しだけだけど笑ったのよ!
あの嫌味な笑顔じゃなくってだよ。
ああ、警察官恐るべし。
そんなことを考えていたら、強烈な睡魔に襲われた。
あの頭痛薬、効くぅ・・・