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SPって言わないの!?

全身黒づくめの失礼なSPは、私を犯罪者のような扱いをしてきた。

手を掴むならまだしも、私の腰のベルト(後ろの部分)に指を差しこんで早く歩けと言わんばかりにグイグイと押す!


「ちょっと、どこをを掴んでるんですか!」

「逃げられないように、だ」

「っていうか、なんで私こんな事になってるんですか!」

「・・・煩いやつだな」


通り過ぎる乗客が見てはいけないものを見たように、チラ見をしてはすぐに目を逸らす。

これじゃ完全に何かやらかした人じゃないっ!

連れて行かれた先は駅の事務所、ではなく【鉄道警察隊】の詰所だった。

※以下、鉄警隊てっけいたいと称す。



「はぁあ!なんで!」

「さっきからホント煩せぇ」


そのSPは「悪いけど、これ見てて」と私をポイと職員に引き渡して出て行った。

鉄警隊の人がやってきて、私の顔を見るなり。


「あれ?駅員さん!」

「はい、駅員ですけど。なんでこんな事になったんでしょうか・・・」

「すみません。取りあえずこちらに」


事務所の奥にある椅子に座ると、あのSPについて簡単に説明をしてくれた。

まず今日はとある場所で行われる集会にある県議員が出席するために、この駅を通過すると。そこで警護を頼まれた県警が出動した流れで、その中の一人が彼だと。


「鉄道警察隊のお仕事じゃないんですか?」

「今回は県警本部が主で、私たちは補佐。その議員さんは暴力団関係者に睨まれているので」

「おい!内容まで話すやつがあるか!!」

「っ、すみません!・・・あの、内密に」

「大丈夫です。言いません。で、そのSPさんはなんで私を・・・」


その理由は本人しか分からないと言われた。そりゃそうだろうけど・・・

因みにSPセキュリティポリスって言わないらしい!政府の要人や国賓の警護をする人たちはそう呼ばれているらしいけど、東京都以外の地方都市では警護要員って言われてるんだそうだ。


「取りあえず、その県議員が通過してしまうまで此方で待機していただけますか」

「ええー、駅事務所じゃだめなんですか?夜勤明けで辛いんですよ」

「すみません」


だめらしい・・・。

私はそこで、2時間も拘束された。


「あの、帰ってもいいですか?」

「ああ、すみません。ちょっと確認してきますので」

(あ、忘れていたな・・・あぁ、もうお昼になるじゃない。貴重な休日がぁぁ)


暫くすると、険しい顔の例の男がやって来た。

別に気にしていたわけでは無いが、つい左足を見てしまう。


「あんた、家は何処だ」

「はい?」

「送る」

「なんで!」


鉄警隊の皆さんに顔を向けたら、不自然に逸らされた。

この男、偉い立場の人間なの?それとも関わるとやっかいとか・・・?後者の臭いがする。


「行くぞ、俺はそんなに暇じゃないんだ」

「だったら送ってくれなくて結構です。電車に乗って二駅、徒歩2分ですから何も起きません」

「起こすかもしれないだろ」

「・・・!?」

(なんだこの人っ!!)


高圧的な態度で言ってくるこの男に無性に腹が立った。警察官でしょ?人様の税金で生活している公務員じゃないのかあんたは!!


「あんた、固執するタイプだな」

「っ!あなたに言われたくないです!その前に、名を名乗ってください!私は森川奏ですっ」


男は眉をピクンと一瞬動かしたかと思うと、すぐに獲物を捕らえるような目つきで睨み返してきた。

負けてなるものか!この失礼な男なんぞにっ。


「・・・伏見ふしみ

「え?」

「行くぞ」

「ちょっ、待って」


今回は腰のベルトではなく右手首を掴まれて、鉄道警察隊の詰所を後にした。

気のせいだろうか、敬礼する鉄警隊のみんさんが憐れんだ表情を私に向けた。


ゴトンゴトンと一定のリズムを刻み、乱れることなく電車は進む。

「・・・」無言。

意味不明な拘束と意味不明な護送?で、正直ぐったり。

あと一駅。

この区間が微妙に長く7分、踏切二つと信号三つ。窓を流れる景色を見るしかなかった。


窓越しにうっすらと見える警護要員こと伏見さん。堅いなぁ、表情が硬いよっ!

けっこうイケメンだと思うよ?なのに愛想の欠片もないのには驚いた。口は悪いし、性格も難ありだな。


「失礼なヤツだな」

「何ですか急に」

「あんたは読まれ易い。気を付けた方がいい」

「いったい何に気を付けるって・・・」

「着いたぞ」


いつの間にか最寄りの駅に着いていた。私は「どうもっ」と頭を下げ、足早に改札に向かった。


「おい!」

「まだ何かあるんですか!」

「頭、気をつけろ。じゃあな」


それだけ言うと伏見さんは再びホームへと戻って行った。

何あの人、頭気をつけろって・・・もしかして今朝の仕返し?


イライラしながら駅の構内を歩き、駅出口のドアを押して出ようとしたら。

ゴツッ――「っ、痛っ」

いつもは開いているはずのドアが施錠されていて、勢い余ってガラスにおでこをぶつけた。

さっきの『頭、気をつけろ』の言葉がよみがえる。


イラつくっ!

その通りになってしまった自分に腹が立った。


地方都市ではSPという言葉は使わず、警護要員と言う。

彼らは警護課、刑事課、生活安全課などの部署から選抜された人員で構成されている。SPと同じ仕事をする。

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