表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/42

周りから固められた?

そして!やっと、仕事復帰ですっ!


「あんま無理すんなよ」

「うん、ありがと。で、何処まで話がいってるのかな?」

「話ってなんだ」

「だから、私の会社の人たちは私達の関係を」

「ああ」


伏見さんは右の頬だけをクイッと上げて、意味深に微笑んだ。

何故かとても妖艶に見えるのは、もう何かのフィルターが発動してしまっているのでしょうか。


「何よ、怖いんですけど」

「ふん。行ったら分かるさ。俺、今夜は帰れないから鍵しっかりかけて寝ろよ」

「子供じゃないしっ」

「そうだよな。30のオバ」

「言わせないからね!このクソ(・・)ガキっ!」


ニヤニヤしながら、あっという間に駐車場に消えて行った。身のこなし早いな。

よし!私も行くかっ!




「おはようございます!」

「森川さん!お帰りっ」

「森川っ!心配したぞー」

「みなさん、ご心配とご迷惑をお掛けしました。これからも宜しくお願いしますっ。これ、ほんの気持ちです。休憩室に置いておくので食べてください」


私の心配を他所に、みんな以前と変わりなく接してくれた。

朝礼後は改札に立ち、切符販売を手伝い昼食。その後、駅構内を掃除道具を持って巡回に出た。


「駅員さん!ご苦労様ですっ!」


若い鉄警さんが敬礼をしながら声をかけてくれた。見慣れないけど、新人さんかな? ※鉄警=鉄道警察隊


「お疲れ様です」と私も挨拶をした。するとその鉄警さんは何故か顔を赤らめてニカッと笑い「警部の奥さんになる人は優しいなぁ」と言っていた。


(ん?誰の事?警部の奥さんって・・・?)


後ろを振り向いてみたけど、行き交う人で特にこの人と思わしき人物は居なかった。


(変なの)


シャカシャカとゴミをはきながらぐるりと一周した。

前から警乗が終った別の鉄警さんがやって来て、「あ!警部のっ」と言って時が止まったように固まった。

※警乗=警備のため乗車し、巡察すること。


「あの?」

「あーいや、ご苦労様です。元気に成られて何よりです」

「やだ、皆さんにまで知られて。恥ずかしいてすね」

「今後も働かれるんですか?」

「え?ええ。働かないと食べていけませんから」

「またまたぁ。警部はけっこう稼いでいると思いますけど?まあ家に籠るよりは働いた方がいいですよね」

「へ?」

「では、失礼します」


いつもよりピシャリと敬礼を決めて、戻って行った。

だから警部って誰。その人が稼いでいようが私には関係ないんだけど、何なんだ鉄警隊!


モヤモヤしながら休憩に入った。

後輩の結城ちゃん(田畑さん)も休憩で、彼女の言葉に驚愕した。


「森川さんっ!教えて下さいよ。どうやってあんなイケメン彼氏を捕まえたんですか?しかも、いつの間にか婚約までして」


今、なんて言った!?


「え、結城ちゃん。ごめん意味が分からない」

「えー、あの刑事さんですよ!森川さんが倒れた時、彼が救急車呼んだんですよ?凄くかっこよかったんですぅ。抱きかかえて、『救急車!』って」


「だ、だ、抱きかかえて?」

「はい。とっても軽々と。もう緊急事態なのに萌えました♡」

「いやいや、婚約者って誰から聞いたの」

「皆知ってますよ。隠しても無駄です。結婚式呼んで下さいね?私も警察官とお知り合いになりたいなぁ。いいなぁ、森川さん」


結城ちゃんが遠くを見ている・・・。

皆知ってるって言った!


そして、退院後初の日勤が何事もなく終った。耳鳴りも予兆もなかった。

ただ帰り際に、


「森川!やっぱりおまえ彼奴(あいつ)とデキてたんじゃねーか!」

「か、河上さん。これには深〜い訳がありまして」

「訳もクソもあるかっ。俺は嬉しいんだよ、幸せになれよ」


ちょ、ちょ、泣かないでぇ。


(もう帰ったら尋問だ!尋問っ!伏見亮太ぁぁ!!)

今朝のニヤリと怪しげに笑った彼の顔が浮かび上がる。私は意気盛んに帰宅した。



あ・・・今夜は帰らないんだった。しょんぼり。

でも、なんでそこまで演じる必要があるんだろう。

私の事、そんなに好きなのかな。ブッ、バカだ私。


彼氏ご無沙汰だと思考がおかしくなるんだね。

どうしたらいいの?このよく分からない胸のトキメキは。

胸のトキメキ・・・?私トキメキいてんの!?


「ーーーっ。」

だ、ダメだ。あいつ(伏見)の顔がまともに見れなくなるじゃん。


「あぁ、もうっ」


夕飯を食べるのを忘れて、一人悶絶しながら眠った。

やっぱり眠れるところが我ながら感心するところである。


* * *


目覚ましの電子音で目が覚めた、時刻は6時半。

すっかり慣れた自宅ではない私の部屋で着替えを済ませ、顔を洗うために部屋を出た。

洗面所で顔を洗い、メイク開始。とはいっても、15分もあれば出来上がり。

最近は睫すら上げなくなってしまった。マスカラって面倒くさい。口紅は歯磨き後に塗る。


「ふぅ。・・・ダメだ考えるのはよそう」


キッチンへ向かおうと、鏡から顔を逸らしたら伏見さんが立っていた。

思わず振り向いたら、なんと!は・だ・か!


「・・・っ!?」


驚きすぎて声が出なかった。目の前には上半身裸の彼がいて、下半身は見てないけど多分タオル巻いてあるはず。だって私が居たことは分かっていたはずだ。

胸板厚っ!この人、着やせするタイプなんだぁ・・・(す、素敵過ぎる!)


「なぁ、いつまで見てるつもり?」


私は「いつまで見てるつもり」の言葉に反射的に背を向けた。


「ごめん!ってか、なんで居るの!」

(なんで私、気付かなかったんだぁ)

「さっき帰って来たからシャワー浴びただけだ。一晩中、追いかけっこしてたからな。朝飯、適当に買ってきたんだ。作ってないなら、一緒に食おう」

「・・・はい」


なんとも頼りない声しか出なかった。

男の裸ぐらいでフリーズするなんて恥ずかしいわ。見た事あるし、そういうこともシた事あるし。

ってか朝からなんだ、やめよう。


「集中、集中っ」


私はコーヒーメーカーから出る湯気をじぃっと見ていた。

(はぁ、もう。なんでこんなに振り回されてるんだろ私の心。ううっ)


「コーヒーメーカーで保湿するのやめてくんない」

「えっ!保湿・・・あ、ああ」

「おい、顔」

「顔?」


伏見さんはじいっと私の顔を覗き込んで来て「真っ赤だぞ」と言って離れて行った。

コーヒーを淹れるのに集中したつもりが、どうも彼の事を集中して考えていたみたいで、私は赤面していた。

その後、それに触れることなくモーニングセットを食べ私は出勤する為に玄関に向かった。


「あ、忘れる所だった!あのっ、伏見さん」

「なに。なんか忘れ物?」

「か、帰ったら!取り調べするから、逃げずに居てくださいねっ!じゃぁ」


玄関のドアを勢いよく開け、駅に向かった。



「は?取り調べ?俺が、されるの?あいつに?・・・くくっ。面白いヤツ


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ