生きている
暗い、部屋だった。
いや、違う。
暗い、暗い、檻の中だった。
広さは身の丈ほど。高さは、正座をすると丁度頭が檻の天井に届くか届かないか。
立ち上がって伸びをすることさえ適わない、そんな箱の中に、入っていた。
少しでも動く度に、じゃらり、と鎖が擦れ合う音がする。
それだけが、今この場で聞こえてくる、自分以外の唯一の音だった。
気味が悪いほどに、他には何も聞こえない。
だから、いつも『はー、はー』と荒い呼吸をしていた。
そうしないと、生きているのか死んでいるのか、自分でも分からなくなるから。
ふと、手首のものに触れる。
やはりじゃらり、と音がして、指先には冷たくかたい感触。
両の手首にがっちりとはめられた手枷は、手の自由だけでなく、心の自由まで奪っているように思えた。
冷たく暗いこの場所に来て、果たして幾日たったのだろう。
日にちは数えたくても数えられない。
外の光など、皆無なのだ。
一ヶ月?一年?十年?
それとも、百年………?
いつもーーー
そこまで考えて、やめる。
この檻から出られる日が決まっているわけではない。
例え何百年経っても、出ることは、きっと出来ないのだ。
それを覚悟して、自らここへ来た。
暦などとは、もう二度と縁がない筈なのだから、意味が無い。
意味などーーーー
「はー………はー………はー………」
それでも、幾度となく『意味のないこと』を繰り返してしまう。
繰り返しては、意味が無いと悟り、それでもやはり、繰り返す。
生きているのだから。
まだ、身体は生きているのだから。
どうしたって、仕方が無いのだ。
心も、生きようと、足掻いてしまうのだ。