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流神  作者: 花咲詠香
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霊牙にて

霊牙の郷。

朝から賑わう市の中。

流雫は人混みに溶け込みながら、ゆったりと歩いていた。

ただ考えなしに人混みを徘徊しているわけではない。

このように人が雑多に往来したり溜まったりする場では『まさか誰も聞いていまい』という心理の元、思わぬ情報が飛び交っていることが多いのだ。


目立たぬよう、顔の右側の包帯を隠すように深く笠を被き、黙形術で人の記憶には 残りにくいようにして情報を集める。


この霊牙でとり行われる次の祭りの日取りは、七日後。

それまでは祭りの準備にかかるらしい。

元は五穀豊穣を願い、感謝する祭りだった様だが、今の世でそれがどのように認識されているかは疑問である。

少なくとも『神に感謝する』という意識などほぼ失われているだろう。


『おい、流雫』

「……なんだ、キク」


流雫の耳元で何処からともなく声がする。キクと呼ばれたそれは紛れもなくあの獣の声だったが、その姿はどこにも見えない。


『貴様の式が消えたようだ。警備兵が動き回っている』

「………やはり、式だけでは数時間が限度か」

『いいや、貴様が未熟なのだ。半日と持たぬとは』

「侵入出来れば良いのだからその場凌ぎで良いだろう」

『ふんっ、馬鹿め。阿呆め。戯けめ。貴様は『この場』にあと七日はいなければならんのだぞ!全く………この俺様が直々に教えてやった事であるというのに、情けな………』


べちっ


『ぐえっ………!』


無言のまま何もないように見える空中のそれをはたき落とし、流雫はそのままスタスタと先をゆく。


はたき落とされたと同時に姿を顕現させた獣は、この無礼者めっと毒づきながらもその後をふよふよと追った。

顕現させたとはいえ、獣の姿のままでは常人には見えない。力を持つものにのみ姿が映る程度である。


「俺様を叩き落とすとはいい度胸だな、俺が誰かと知っての無礼か?貴様」

「キクはキクだろう」

「俺は呼び名のことを言っているのではない!」

「じゃあ、お付きの式?」

「ちっがぁーう!」


黒い獣がぐわっと牙を向いて否定した。


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