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流神  作者: 花咲詠香
1/11

前奏曲(プレリュード)

ぴぃん………と張り詰めた空気が、音を消す。


少年はここを通すまいとして、そのか弱い腕に龍神の宝刀を握り締め、獣はなんとしてでも通らんとして、その鋭い牙を剥いて少年を威嚇していた。


湖へと続く、ただ一つの道。

風さえも横切ることを許されないかのような、静寂。


聴こえるのは、互いの息遣いだけ。

そう錯覚するほどに、両者とも相手のみを見据えていた。


ふー、ふー、と息を荒げ、瞳孔を開いて威嚇し合う少年と獣を、獣の後ろに佇む男がまるで塵の一片を見るかのごとく蔑視し、ただ一言呟いた。


「邪魔だ」


その言葉が合図だった。

たちまち張り詰めた空気が裂ける。

耳をつんざくような咆哮が轟き、同時に凄まじい妖気が爆発した。

びりびりと肌を侵すその感覚に、少年はただ歯を食いしばって耐えている。


決して、目を閉じてはいけない。

どんなに甚大な気がぶつかってこようとも、その瞳でしっかりと、視なければ。


獣の足が地を蹴る。


刹那、少年は時が止まったのかと錯覚した。

ゆっくりと迫る、黒い獣の牙。

その瞳に映る、自身の顔。

四肢の動きを全て、はっきりと認識できているのにも関わらず、動かない身体。


眼前に迫る黒い塊に、持っている刀の重みだけが、心を繋いでくれていた。


ぐしゃり


表現に耐えない、嫌な音が、耳の奥で聞こえる。


そしてーーー激痛。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


護れなかった。

右目に走った痛みが、その耐え難い事実を物語っていた。




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