神田優の夢~プロローグ~
学校に行かなくなって、早1ヶ月。
退屈しのぎにいじったいた机の上のパソコンに、俺には考えられない事が起こっていた。
パソコン画面のメール受信欄に新着メールが一件。
何かの勧誘か迷惑メールか?
イヤそれなら拒否してある。
ならば友達?
それはあり得ないだろう。俺にわざわざメールしてくる友達など一人もいない。
…じゃあ誰だ?
俺はマウスを移動させ、受信欄をダブルクリックした。
差出人は不明。
メールの題名は「素敵な夢ご紹介します」
…?
なんだ?
内容が気になった俺は、なんのためらいもなく然とそのメールをクリックしてしまっていた。
「このメールを受け取った貴方は幸運です!
一緒に幸せな夢をみませんか?」
画面をスクロールする。
「この商品をお受け取りになると、いかのことが可能になります。」
ふたたび画面をスクロール。
「壱‥貴方が望んだ夢をみることができます。
弐‥貴方が望んだように夢物語が進行していきます。
参‥夢をみている間、貴方の嫌な記憶を一時的に忘れることができます。
肆‥貴方の望むままいつまでも夢をみることができます。
伍‥あくまでも夢ですので、現実とは一切関係ありません。
現実ではできないことが可能になります。
貴方も是非、この商品をお受け取りの上、お試ししてはいかがでしょうか?」
そうかかれてある横には小さくここをクリックの文字があった。
絶対あやしい…。
けど、見るくらいならいいよな…?
一度はあやしいと思った俺だったが、一部分だけ気になった事があったんだ。
嫌な記憶を忘れる…―。
本当にそんなことができるのか?
額には汗が滲み、マウスを掴む右手は震えていた。
不安興奮…
二つが入り交じったような気持ちだ。
俺は汗ばんだ手で握っていたマウスを動かしクリックした。
そこには自分の住所、名前など個人情報を書く欄と、簡単なアンケートが表示されていた。他には特に詳しい事は書いてなかった。
商品の形状も色も大きさも写真すらもない。
俺は明らかに少なすぎる説明に違和感をおぼえたが、気づいた時には個人情報を入力し、アンケートに答え、注文ボタンをクリックしていた…
マウスから浮かせた手はつい数分前とは比べ物にならないくらいびっしょり濡れていた。
今思えば、この時の手あせは俺にたいしてやめておけと言っているようなものだったのかも知れない。
俺だって別に嫌な記憶を一時的に忘れる何て事が本当にできるなんて思っていなかった。
ただ、どんな人だってあやしいと分かっていても、もしかして…って心のどこかで期待してしまうのだと俺は思う。
だが、そんな小さな期待から俺をあんな暗黒な世界へと引きずりこんでしまうなんてこと誰も考えたりしないだろう。
…この世にすべてがうまくいく話なんて存在しない。
いい話なんてものがあればそこには必ずひとつはペナルティが存在するんだ。
三日後、俺のもとにひとつの荷物が届く。
それが俺の夢…いや、夢だけじゃない。
人生を変えてしまうなんて、まだこの時の俺はその事を知るよしもない。