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悪魔の目覚まし時計

 悪魔の目覚まし時計



 「主」よ。この世の中には奇跡が存在するのだ。

 奇跡というと、特殊というのか、非日常的現象というのか……そんな事を「主」は、思い浮かべるであろう。しかし、あえて我『悪魔公爵メルルフェリウム』は「否!」と言いたい。

 我は思う。「主」が存在すること自体、この世があること自体が奇跡なのだ。

 朝日が昇る事も、雨が降ることも、霧が立ちこめる事も、雲が流れる事も、全てが「奇跡」。当たり前に考えている事、それこそが「奇跡」なのだ。

 ただ、殆どの人間が気付かない。「主」もだ。悲しい事だが、仕方がないといえよう。

 我は無の中を漂っていた。どれだけの時を過ごした事だろう。そこには自由も不自由もなかった。只々何も無い世界であった。

 しかし、あるとき突然この世界が誕生した。無から生じたのだから、理由も原因も根元もない。突然この世界は誕生したのだ。

 この不思議!奇跡!神秘!希有!

 おお!素晴らしい!なんと素晴らしい世界!

 「主」よ!寝ている場合ではありますまい!

 ご機嫌よう!この世界!素晴らしい朝日よありがとう!

 早朝から新聞屋さん!ご苦労様です!

 今日も配達ありがとう!

 さあ「主」よ!素晴らしい朝が来−−


「うっつつつつさぁぁぁぁぁあああいいいい!!!!」


 閃光一線、少女の右フックが悪魔公爵メルルフェリウムの顎を捕らえる。

 メルルフェリウムは凄まじい回転数で上昇し天井を突き破り、天高く飛んでいった。

 キラッと空が輝いた気がする。

 現在時計の針はAM3:20。桐山家恒例「桐山アリア」の絶叫。こうして桐山アリアの一日が始まる。

 天高く飛んでいった悪魔公爵メルルフェリウムは、絶叫の主、桐山アリアの命により、この時間に起こすよう指示されただけなのだが……非常に気の毒な事である。しかし、彼は懲りず、めげずに任務に忠実であった。彼は悪魔なのに。


 人類史上最悪の寝起きの悪い高校一年生「桐山アリア」は、ある日の偶然により悪魔公爵メルルフェリウムを使役することになる。現在、悪魔公爵メルルフェリウムは桐山アリアの目覚まし時計兼パシリ役をこなす平和な日々を送っている。そう、とても平和な日々を。

しかし二人?はいずれ幾多の強敵と闘う事になるのだが、それはまた、別のお話。


 ちなみに、悪魔の目覚まし時計のお陰で、新聞配達のバイトを辞めるまでの三年間、遅刻した事は一度もない。



おしまい

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