異世界アヴァロン
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
突然森に迷い込んでからもう数時間がたっているが今だ出口は見つからず、出口を目指して走り続けている。
・・・・・・・・?
なんで俺は数時間も走れている?
こんなに体力があるはずはないのに数時間走った今もあまり疲れていない。
どうもおかしい
この森に来てから体がやたらと軽い・・・
そしてなにより。
俺は腕を見ながら、「なんで俺、腕から煙が出ているんだ?」
俺の腕からは紫色の煙が立ち込めていた。
別に体に異常がないのであまり気にしていないが・・・
「しかしどこだよ出口は・・・数時間たったはずなのにまったく明るくならないし・・
どんだけ山奥なんだよ・・・」
この森に来てから数時間たった今もそれは黒く染まり、月夜が森を照らしている
そして月明かりしかないはずの森を俺は鮮明に見ている。
自分の体の違和感に気づきながらも早く森から抜け出そうと走り回る。
「おらぁ!」
遠くから男の叫び声が聞こえる
やっと人を見つけた!
声がした方をみると遠くに男が剣を振り回しながら狼数匹と戦っているのが見える
男が狼を一匹切り伏せた瞬間、周りにいる狼が男に襲いかかる
ヤバい・・せっかく見つけた人がこのままだと死んでしまう
そうなると一生森から出れない気がする
そう思い男の方に駆けていく
俺の脚は馬のように早く、数キロ先の男の場所に数秒で追いつく
異常な速さで迫ってくる俺に、狼たちが気づき、咆哮をする
「グゥアァァァァ!」
狼が俺に向かって叫ぶ
腹の底に響きそうな声を聞き、恐怖に支配されそうになるが、それを無視して狼たちに近寄り
その勢いのままドロップキックを目の前にいた狼に行う
バンッ!
おおよそ生き物に当たった音ではない音が聞こえ、狼の体が破裂する
あたりに狼の肉片が飛び散り、俺の顔に大量の狼の血が振りかかるがそれをぬぐいながら
男に話しかける
「大丈夫ですか!?」
狼たちは俺が狼を倒したことに驚いたのか
「キャンッ! キャンッ!」
と奇声を上げながらどこかへと走っていく
男は俺がしたことに驚いたようで口をパクパクさせながらこっちを見ている
俺は自分が狼を倒せたことに驚きながらも男に出口を聞くために話しかける
「あの・・すいません。俺迷子になったようなので出口を教えてもらえませんか?」
男は落ち着いたようで俺に話しかけてくる
「hakabdusbskao?]
・・・・は?
「hanashfaoi?]
どうやら言葉が通じないようだ
英語で話してるのかと思ったが英語でもないようで、ヨーロッパとかあたりの人なのかもしれない
会話できない・・・せっかく人に会えたのに会話できないと出口を教えてもらえない。
すると男は手から光を放ち俺に向かって手をかざす
男の手から放たれた光は俺の体に移り消えていく
「ありがとう。あんたが助けてくれなかったら俺はウルフファングに襲われて死んでいたよ」
男が日本語で俺に話しかけてくる
さっきのはいったい・・・
「あんたいったい何もんだ?
みたところそんな軽装備で明かりも持たずこんな高レベルな森に入るなんて
よっぽど高レベルな冒険者なのか?
ウルフファングを一撃で、しかも蹴りで倒すことができるなんて聞いたこともないぞ」
そういうと男はすこし怯えたような顔で俺を見てくる
「冒険者?レベル?・・・何の話ですか?
俺は気が付いたらこの森にいて、出口を探していたんですけど
どこにも見つからなくて困っていた時にあなたの声を聞いてやってきたのです。」
男は不思議そうな顔をし、
「気づいたら森にいた?
・・・召喚か?
いやでもこの森は魔素が薄く魔力消費が少ない魔法しか使えないはずなんだが」
男はなにかおかしなことを言っている
魔法や召喚など・・・まるでファンタジー小説のような話・・・
「あの・・・すいませんがこの森の出口を教えてもらえませんか?」
俺がそういうと男は顔を上げこちらをみながら
「わかった、こちらとあんたに命を救われた身だ。
それくらいお安い御用さ。
こっちに来てくれ
いつまでもこんなところにいたらウルフファングだけじゃなくオーガ達もきちまう」
さっきから気になっていたんだがウルフファングってなんだ?
あの狼のことか?
それにオーガって・・・まるっきりファンタジーに出てきそうじゃないか
「あのー、すいません。あなたの名前を教えてもらえますか?
俺の名前は相川 拓海です
拓海と呼んでください」
俺が自己紹介すると男が
「タクミさんか・・・
俺の名前はメアリス・イスラ・アスラエルっていうんだ
アスラって呼んでくれ
みんなそう呼ぶからよ」
なっが・・・名前なっがいな・・
しかも完全に日本人じゃないじゃん
良くみたらアスラさんの髪の色ピンク色だし
染めたような汚いピンクなんかじゃなく最初っからピンクだったといった感じの髪色だ・・・
「どうした?」
アスラさんは突然黙った俺を心配するように声をかけてくる
「いえ・・自分の置かれた状況を考えているんです・・・」
「よくわからないが・・とにかくこの森を出るならこっちだ
ついてきてくれ」
アスラさんは森の中を走り出し、俺はそのあとをついていく
アスラさんについていくこと十分ほどで森の外に出る
森の外は暗く夜になっていた
そしてそこは日本では決してありえない光景が広がっていた
黒々とした草原に馬のような生き物が歩いており、どこにも家がない・・・
「あの・・ここってどこですか?」
俺は疑問をアスラさんに問いかける
「ここか?・・ここはシリリカ王国の端にある草原
通称黒の草原・・まぁみたまんまだな
そしてさっき俺たちがいた森は常夜の森といい
ずっと夜の決して日の当たらない森だ」
日が当たらないのにあんなに木が育つものなのか?
・・・・わからないことが多すぎる
「タクミさんはこれからどうするんだい?」
「タクミでいいですよ」
「そうか・・・タクミはこれからどうするんだい?
冒険者じゃないんだろう?
冒険者になればあんたならかなり有名になれると思うんだ」
冒険者か・・・
元の場所に帰る方法も探したいしな・・・
冒険者になれば情報収集ができるかもしれないし
「そうですね・・・冒険者になるのもいいかもしれません。
冒険者になるにはどうすればいいんですか?」
「街に行って冒険者ギルドに行き俺からの推薦だといえばいい
おそらく試験は免除できるだろう」
そういいアスラさんは手を光らせそこから光の球を取り出す
これが魔法か・・・・
やはりここは地球ではなく・・・
「ここの世界ってなんて名前なんですか?」
俺がアスラさんに聞くとアスラさんはすこし呆れたように
「自分が住んでいる世界の名前を知らないのか?
もしかして記憶になにか問題が・・・
最初会った時もおかしな言語を使っていたからな
翻訳の魔法を使わなければ会話もできなかっただろう。
お前は不思議なことが多いな・・・・
まるで物語の中に出てくる異世界からの勇者のようだ。
そういえばこの世界の名前だったな。
この世界の名前はアヴァロンだ」
アヴァロン・・・
聞いたことのない名前だ
それに何て言った?
異世界からの勇者?
異世界・・・
ここが俺にとっての異世界というのならこちらにとっての異世界は地球になるんじゃないのか
・・・とゆうことは俺以外にもこっちに来た人間がいるのか
「では、俺は街に行くがタクミはどうする?
俺は報告があるから街までなら案内できるが・・・」
「お願いします!」
俺はアスラさんと一緒に街に行くことにした
街に行き冒険者になることにする
冒険者になればいつか元の世界に戻る方法が見つかるかもしれない
とりあえずまずはアスラさんが言っていた
異世界からの勇者ってやつを調べようと思う