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黒く燃ゆる炎の道

「……………」


無言で祠の中を歩くこと約二十七時間。


代わる代わる疲労困憊の王子をおざなりに持ち上げて運び続けて約三時間。


谷から出て此処まで来るのに、休み時間を抜いて合計三十時間くらいは歩いていた。


「リンコのおめめ、お魚さんみたい」


クオリ君が相も変わらずきらきらしいおめめをしてそう言った。


暗闇の中を二十時間以上も居るんだもの。こうなっても仕方ないんだよ。人間だもの。


「リンコ様…間もなく明るくなりますので俺を殴ってください」


どういう意味だリジェロお前。

明るくなったらお前を殴らなきゃいけない理由でもあるの?

もしくはお前を殴ると明るくなるの?

意味解んないんだけど。


無言でリジェロを見ていると、なにやら真っ赤になって「すみません思わず…兎も角明るい道に出ますので安心してください」と言った。


…私ってば関わった奴を誤った道に送ってばかりいる気がする。


いや、普通に対応してるのに目覚めるそっちが悪い。ワタシワルクナイ。


「…っ!!ありがとうございます!ありがとうございます!」


そ、そんな…いつの間にか私の右手ちゃんがリジェロの髪の毛を掴んでるなんて!


気付かずに歩いてたから引きずってしまったようだわ!


とりあえず投げ捨てておいた。


「ひゃんっ…」


「わー…きもちわるい声!」


にこやかに言う科白じゃないよクオリ君。


どうして君は見た目真っ白なのに、中身は真っ黒なんだい?


でも私には愛想が良いから許す!


流石に髪の毛掴んで引きずって打ち捨てたままなのは酷いと思ったので、魔術で身体と服の汚れを消してあげた。


何してもありがとうとしか言わないのがちょっと怖かった。


…頭に重大なエラーでも起きてるのかしら。





リジェロの言う通り、あれから少しして明るい道に出た。


真っ黒な炎が揺れる道に。


骸骨がぽつりぽつりと置かれていて、凄く不気味だった。


クオリが魔法でラムを遠くへぶん投げてから暫くして、カチリという何かが起動する音がした。


ラムが串刺しになっていくのを見て、回復魔法を使いながら「なるほど!」というクオリ君に恐怖した。


なるほど!じゃないですよ貴方…


さり気なく鬼畜過ぎる所行から目を逸らし、道を観察する。


黒い炎が道の両脇に灯っており、そのお陰で異様に明るかった。


しかし、不思議な事に熱くはない。


むしろ…寒い。


その黒い炎は普通の炎とは違うのか、少しでもその炎に手を近付けると凄い寒さがした。


「その黒い炎は近寄った者のHPとMPを吸収致します。お気を付け下いませ」


カケルはそう言うと、飴玉のような物を取り出した。


なんだろうか、その玉は。


「一時的に素早さがアップする秘薬を凝縮して固めたもので御座います。これで突っ切りましょう!」


そう曰うや、否やを言う隙も無く秘薬を口の中に入れられた。


他のメンバーも秘薬を口にして、みんなおてて繋いで一気に走る。


加速する風景に、私は一瞬あの祠で使いたかったと遠い目をした。


あれは…一歩進めば悟りを開けそうな苦行であった。


即身成仏出来そうだと思うくらいに。


ゆとり世代じゃなくてもきついぞあの祠は。


ちなみに後で聞いた話によれば、魔王城への正規の道は一年くらい掛かるらしい。


そんなに掛けるなんて冗談じゃないぞ。


で、魔王城に簡単に着けるとそれはそれでかなりの問題が起こると予想され、このように人間だと抜けれないような物を張り切って設置したらしい。


今走る道の上からギロチンが落ちてくるのも、下の床から急に針が出たり消えたりするのも、横から氷塊が高速で襲ってくるのも、全部張り切って設置したものだ。


張り切って設置した奴しばき倒したいと言うと、じゃあ魔王様をしばき倒さねばなりませんねとリジェロは言った。


魔王…テメェが設置したのか!


暫く走って行くと、とてつもなく広い道に出た。


「あちら側が魔王城で、此方にある道は正規の道です」


リジェロの説明に頷きながら、その正規の道を見る。


獣道でもなんでもない立派なその道は、現代日本の煉瓦が並べられた道のように綺麗だった。


魔王城の方の道を見ると、ぽつりぽつりと例の炎が灯っているのに気付いた。


無数の黒い炎で不気味に照らされているあれが魔王城か…


恐ろしい存在感に、ぶるりと身体が震えた。


そしてカチカチと指も足も震える。


あと、少しだ。


あと少しなんだ。


魔王もシカクもぶん殴れるのは!!

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