深淵の祠の中にて
今、暗く狭い中に私達はいる。
正規の道ではなく、ショートカットの為の道らしいので、整備らしい整備は特にされていないそうだ。
ああそうそう。
ショタの名前はラムで、ギャルゲーをしてたらいつの間にかこの良く解らない所に迷いこんだとか。
つまりはその…現実世界の住人だった。
「魂虫になったのはなんでだろうか?」
「恐らくは不審アクセスと判断され中途半端に遮断されでもして、エラーを起こしたのではありませんかね。そして偶々居合わせた攻略対象と融合した…と」
□□様は仕事が大雑把で御座いますからね。とカケルは言う。
きっとお前に言われたくはないと思うぞ。
ていうか神々自体がいつも大雑把な感じな気がする。
ぴちょんぴちょんと水が滴り落ちてくる。
暗く長い祠。
暗く狭いこの祠の中には、申し訳程度の細い道が続いていた。
進む度に血の臭いがきつくなり、更にカケルのにやにや笑いも強くなっていった。
本当に良い性格してやがるよ此奴。
クオリは寒いのにがてーと言いながら私にベタッと張り付き、リジェロは頭上から滴り落ちてきている雫を服で夢中になって受け止めていた。
おかげで私とくっ付いているクオリにカケルは濡れていない。
しかし半裸のリジェロと王子は濡れてしまっていて、水も滴るいい男な状態になってしまっていた。
恐らくは現代日本の女子達垂涎ものだろう肢体を見ている事は出来ず、私には些なからずとも女心が残っていると知れて驚愕した。
だってあの上腕二頭筋の盛り上がり具合とか魅惑的過ぎなんだもの…良いお肉を捕ってきてくれそゴホンゴホン。
それだとなんだか獣のような理由で好意を抱いている事になっちゃうじゃないか。
一気に女心とは程遠い気がした。
そんなどうでもいい事を考えてもう三時間。
流石の私もこの閉鎖的な空間に嫌気が差してきた。
なんだかジメジメしているし、狭苦しいし、なのにすぐ側には男3人と2匹が固まってるから暑苦しいし。
女の子の友達が欲しいなと、本気で思ってきた。
「あのね、リンコにはもう、女友達居るでしょ?あの死んだ方が良いんじゃないかなというくらい気持ち悪いのを友達と呼べるなら、居るでしょ?もっと増やすの?やだ!ぼく、リンコと遊ぶ時間減るのやだ!」
あ、あれ?
今クオリがなんだか物凄い暴言を吐いた気がするが…まあ良いか。
(幻覚の)尻尾振って可愛いなこの野郎!
大型犬をもふもふわしわしする心積もりでクオリを撫でていたら、リジェロの羨ましいなという変態的視線が刺さってきた。
あのね、リジェロ。
確かにクオリはちょっとぶっ飛んでる所あるけど、基本的に性格が天使なのよ。体躯もそんなにごつくないから余計に可愛く見えるの。ちょっと細っこいし。
それに比べてリジェロの体躯というと…結構良い筋肉をお持ちなのだ。
でたらめ人間の万国びっくりショーの一員の素敵髭の少佐並みの筋肉ではないが、結構ごついのだ。
考えてもみてほしい。
そんな結構ごつい美青年がドが付くマゾで椅子になりたがっているのを。
同じ扱いは流石に出来ない。
私そんな性癖持ってないの。
ラムは羨望の眼差しで見てくるわエロくげすい言葉を言うわそもそも触れると孕む意味不明な危険なショタなので論外だ。
王子?
今も私の隣で嘔吐いているよ。
障気を感じないので判然らないのだが、此処の障気の濃度はヤバいくらいあるらしい。
クオリもリジェロもカケルもラムも毒素全然大丈夫な人外だから、王子以外は本当に大丈夫なのだ。
私が大丈夫な理由は多分カケルが何か弄ったからだろう。
素で大丈夫な訳ないと思うんだ。
「いえ、そこは弄ってないので素で毒が効かない体質なのだと思いますが」
くそっ…!
腐りかけだろうが腐ってようが食べてたからか!?妙な体質付いたのか!?まあ良いか。
それにしても…祠の道はまだまだ続いて行くようだ。
三時間過ぎてもまだ先が見えないし、勿論風景なんて全く代わり映えしない。
ずっとボコボコした壁と微妙な色した苔しか見えない。
この鬱になるような長さに気持ち悪さ…私がこの名も無き祠に深淵の祠と名付けてやろう。
……ダメだ。
やっぱり意識は直ぐにこの祠に戻ってしまう。
何時まで続くんだこの祠は!
「…リンコ様、この祠の出口が見えました」
リジェロの言葉に、私は素早く反応した。
下を向いていた為に見えなかったが…あれは光か!!
ダッシュで行く私に、後ろからリジェロの声が聞こえてきた。
「次の祠は地獄の祠です!とてつもなく長いので、一旦、この魔光石の近くで休みましょう!」
やや広めの場に沢山生える光石達にがっかりし、相変わらずの一本道を辿って見れば次の地獄の祠とやらが見えた。
何処までも…深い闇です。
orz