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嘆きの谷の街にて

「そろそろ嘆きの谷へ着きますよ、ポルポル様」


「ぶっ殺しちゃうわよお兄ちゃん」


「止めて下さいませっ!もみあげ…もみあげだけはっ!!」


カケルの長めのもみあげを掴んで持ち上げると、思いの外嫌がられた。


もみあげがなんだと言うのだろうか。


「やめてくださいましーもみあげにちがのぼりますー」


「なにそのもみあげ怖い」


ポルポル様扱いをちょいちょいしてくるカケルを成敗した後、クオリさんの素敵な野外お料理を食べる。


今日はチェーン店のレストランに出て来るオムライスより遥かに美味しそうなオムライスだ。


とろとろしたオムレツが乗ったオムライスは、切り込みを入れるとデミグラスソースと一緒にとろりと広がった。それにアクセントに生クリームとパセリを少量かけた。


もう感動せざるを得ない…これは芸術の域をいった料理だと思う!


対抗心を燃やしたカケル君は、卵スープを作った。


ふわふわの卵に数種類の魚介類や擦った野菜の出汁が凄く美味しかった。


卵に片栗粉を少量入れていたので、そのお陰でふわふわなのかな。


後で自分で作ってみよう。


リジェロはサラダを作ってくれた。


ハーブや調味料をちょちょいと使用して作られたドレッシングは、サラダによく合っていて美味しかった。


ていうか、空中で材料切るの流行ってるのかな?


みんな空中で材料を切りやがる。


ラファル王子は…果物を切っていた。


それはとても歪なリンゴの兎さんを作り上げ、それがお皿に繁殖した。


そして極めつけは誉めて誉めてと言わんばかりの視線と雰囲気。


あれ?お前、私の事嫌いじゃなかったっけ?


ああそうか!おねしょ事件(誤解は未だ解けてません)と邪神事件のお陰で懐いたのか!


「美味しそうだね、一つ食べても良い?」


「た、食べてもいいぞっ!いっぱい!」


ぷいっと横を向いてしまった。


なんか顔が赤い…ような…まあ気の所為か。


オムライスもサラダもスープも平らげ、更にデザートのうさリンゴを食べた後は、私の大好きな昼寝タイムだ。


嘆きの谷にもう着くらしいが知ったこっちゃない。


私は、これから、半刻程寝るんだ!





目覚めて直ぐに、私は変な顔をした。


嘆きの谷の…宿屋…なのか?でも違う気がするな。


廃屋のような家の中、私はひとりきりだった。


横には謎の大きめの植物が繁殖している。


そしてその植物が深く浸るくらいの川?がちょろちょろと流れていた。


家内なのに不思議だ。


ふわふわと光が迸り、とても幻想的だった。


そしてその幻想的な川からにゅるにゅると、カケルがバタフライで泳いできた。


雰囲気が台無しである。


「妖精なら妖精らしくふよふよ浮いて現れろよこの野郎」


「妖精でもアクロバティックに泳ぎたい時も御座いますよ!」


水着に帽子にゴーグルという本気の格好をしているカケルに、私は心底脱力した。


ちょっとあった不安なぞ何処かへ行ってしまった。


こんなんでも有ると無いじゃ大違いなのね。


「物扱いで御座いますか!婚約者を物扱いで御座いますか!生きたバイブ扱いする気なので御座いますか!?この変態!私をヤる気なので御座いましょう!?エロ同人誌みたいに!エロ同人誌みたいに!」


「ちょっと黙れ」


騒ぐカケルの首をキュッと絞めた事により、静かになった。


本当に私を苛々させる天才だね、カケルは。


取りあえずクオリを探す事にした。


クオリは……居た。


クオリはリジェロとの2人で、谷の下の森っぽい所から跳んで来た。


どうも王子はこの廃屋の中に居るようで、近くに気配が一つだけある。


「この廃れた町はなんなの?」


「前は風の谷と呼ばれておりましたが…どこぞの馬鹿により魂虫と呼ばれる虫の怒りに触れ、そのまま滅ぼされてしまったので御座います。それ以来、此処は嘆きの谷と呼ばれております」


なんだろう。何処かで似たような設定を見たことある気がする。


「こんきの漢字は魂を喰う虫と書いて魂虫で御座いますからね」


「それ読み方こんちゅうで良かったじゃない」


「捻りなくて嫌で御座います」


我が儘だな!





戻って来たクオリ曰わく、此処は異様に空気が澄んでいるらしい。


逆に森の奥地の剥げた大地は淀んだ空気だったので、もしかしたら森にある何かが綺麗にしているのかもしれないとクオリは言う。


これやっぱりアレなんじゃ…


「この植物のお陰で御座いますよ」


やっぱり風の谷のアレじゃないか!止めろよギリなパロディは!


むしろギリギリアウトだろ!


そう睨んでいたら逃げられてしまった。


逃げ足だけは早いんだからカケルは。


「あのね、リンコ。此処から先の魔王城はね、強い障気があるみたいなの。だからね、リンコ、王子の為に、浄化魔術を、ずっと使っててあげて!」


や、優しい子だ…


そんなにこにこと優しい言葉を掛けるなんて…素晴らしく良い子だなクオリは!


クオリの頭をわしゃわしゃ撫でてあげてから、それにしても魔王城が害のある気に包まれてるとしたら他の王子は危ないんじゃと思った。


でもまあ、別にいっか。


「所で…魔王城は何処にあるの?」


リジェロは谷の底を指差した。


谷の底…恐らくは魂虫の住処を。


「いっぱい変な虫いた!気をひきしめなきゃ、危ないよ!」


や、やだ!


虫はやだーー!!

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