表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/109

又怪しい宗教団体

「――そろそろロックバレーという谷にある小さな街に着きます」


迷路となっている霧の森も、リジェロの案内ですいすいと進んで気持ちが良い。


やんややんやと遊んでいたカケルも飽きてきたのか…神聖魔法とかいうのを使って戦いだした。


長い沼地が全部抉れる程の威力であるにも関わらず、今のはメラゾーマではないメラだ的に全然本気の攻撃ではないらしい。


危ないので普通に物理攻撃で戦ってもらったけれど、その凄まじい戦い振りに私ですら引いた。


あの小さな体にあんなパワーを秘めてるとは…流石は腐っても神か…


「腐っているのは△△様で御座いますよ。私は香しい花のままで御座います」


「自分で言って恥ずかしくなって頬染めるなよ…確かにサンカクさんはもう駄目だ腐ってやがる遅すぎたんだ」


くっだらない話して幾ばくかすると、絶壁に沿って立てられた街が見えて来た。


ここがロックバレー…か。


岩肌が剥き出しのその街には、人間は全然いなかった。


居ても奴隷だったり貧民だったりと、不遇な扱いだった。


私達をじろじろ見る住民に不愉快になりつつ、宿屋を探して歩いて行く。


幸いにも、大金を持ち歩いてるお財布さん…いや王子が居るので金の心配はない。


リジェロの知り合いが居るらしい宿屋へ案内されて直ぐ、野次がとんだ。


「よう、リロイ!お前とうとう奴隷買ったのか?」


そんな失礼な事を、宿屋のカウンターらしき場所に居る爺が言ったのだ。


リジェロはとんでもないと高速に首を横に振ると、知り合いらしき爺に紹介してくれた。


「素晴らしく美しく優しくも鬼畜な理想の女王さゴホン…お嬢様はリンコ様。この白い美形さんは俺の尊敬する人で名前はクオリさん。この金髪碧眼はラファルさんです」


ちょ…王子の説明だけちょっと酷い。


「そうか!宜しくな!」


深い事は気にしない性格なのか、爺はガハガハ笑ってそう言った。


まあ別に良いけどもさ…ちょっとはリジェロ君の可笑しい所を突っ込もうぜ。


一泊分の金を払うと、友人だからと夕飯と朝飯をただでご馳走してくれると爺が言った。


この宿屋には食堂があり、朝昼晩と解放されているのだが…宿泊代と飯代は別料金らしい。


ただ宿泊代にちょっとの追加料金で朝昼晩と貰えるので、かなりの激安のようだ。味がちょっと心配だなぁ…


「大丈夫ですよリンコ様。わりと美味しいですから」


「流石にクオリさんの料理には負けますが」と言うリジェロの言葉を信じ、私は夕飯が待ち遠しくて仕方なくなった。


お腹いっぱい食べてやるのよ。





――で、風呂入りーの服着替えーのしてうだうだしてる内に夕方。


夕飯の時間である。


この宿屋&食堂は二階建てになっていて、二階が宿屋で一階が食堂になっている。


二階から降りて食堂へ行くと、店内はかなりの賑わいを見せていた。


…ていうか…客人がみんな黒頭巾なのはなんなの?


「…あと少しで…邪神様はお目覚めになるのだ…」


「…おお…我等が邪神様よ…」


「…生け贄は…まだなのか…」


「…しくじって居るのだろう…あのくずは…」


以上の科白が卍と目のマークが描かれた頭巾をしている集団の口から漏れていた。


「邪神いるの?」


密かにカケルに訊いてみたら、なんとも言えない顔して答えた。


「居りますよ。…邪神ポルポルが」


ポルポル…なにそのネーミングセンス…


「まあ…徹夜明けのテンションでしたので」


崇めてしまっている人達が不憫でならない。


例えデータの存在だとしても、なんだかいたたまれない。


そっと、見なかった事にしておいた。


頼んで出てきたご飯を夢中で食している最中に、店内が騒がしくなった。


気になって見てみると、邪教徒?が王子を生け贄に決めたと叫んで取り囲んだ所だった。


王子が迷惑そうな顔でそれでもご飯を食べていた。


結構図太い奴だよな…王子。


クオリは完璧に傍観を決めていて、カケルに至っては賭けをしていた。


カケルお前…


「我等が神ポルポル様の為に貴様の命貰い受けた!」


明らかに60歳の爺の声で真面目にそう言うものだから、私の口から水が吹き出そうになった。


まじでひっどいネーミングセンスだ。


カケルは我関せずという顔をしているが、作り出したお前がそもそもの責任だろと睨むと高速で逃げられた。


なんて野郎だ!


その間にも王子が狙われていて、余りにも可哀想だった。


ていうかなんだか両方が可哀想だった。


なので私は、暴力で以て争い事を鎮圧したのであった。


「リンコ…た、助かったと言ってやる」


姫抱きで助けてやった王子がそう言って照れていた。


「気にするな」


「リンコ……ありがとう…」


私の言葉に感動したらしい王子が、頬を赤くして小さな声でお礼を言った


初やつめ。


…あれ?なんか普通逆じゃない?普通私が助けられてポッとなる所じゃない?


考えたら深みに嵌る気がしたので、何も考えない事にした。


その後――目覚めた邪教徒からポルポル様扱いされた私は本気でキレた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ