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黒の沼地と巨龍共

高レベルのクオリを先頭にし、私は補助魔術をメインに戦った。


王子もクオリをサポートするように戦っているけれど、唯でさえ強いのに補助魔術受けて更に強まったクオリに引き気味になっていた。


ちなみにリジェロは私の背後を守っている。


疚しい気持ちはないと信じたい。


ピンヒール見てはぁはぁしているのは気の所為だと思いたい。


「無駄な努力で御座いますね。その努力は違うところに注いで下さいませ」


頭上で偉そうなこと言ってるカケルに対し、かなり苛ついた。


なので、ほっぺを両手で掴んでぐにぐに伸ばしてやった。


それを体を振って嫌がるカケル。


不意に頭の中にクオリの科白が浮かんだ。


『魔族は美味しいよ!』


「…………」


「り、凛子様…そこで無言はかなり恐ろしいので御座いますが…」


「…先っちょだけ…先っちょだけだから…」


「指に何をする気で御座いますかっ!?止めて下さいましぃぃぃ!!」





所々歯型を付けたカケルは、ぷるぷるしながらリジェロの頭上に逃げた。


リジェロはその不思議生命体を気にもせずに、戦闘で流れた汗や血を拭い清潔にしていた。


ちなみにクオリ君は爽やかエンジェルフェイスで全く出ていない汗を服の袖で拭っている。


返り血さえ付いてないとか、流石としか言えない。


王子の扱う武器は長い槍なので、返り血は付かないで済んだようだ。


リジェロの場合は両手に短剣という超接近戦だったからなぁ…しかも数が多いから気にする余裕が余りなかったし。


各々がしがしと拭った後は、お待ちかねのお昼ご飯である。


クオリ君が何処からか捕って来たお魚とお肉とお野菜を、クオリ君が超人的な技能で以て調理する。


某料理人を教育して食べようとする伯爵の出てくるような料理の仕方を、現実で見るのはクオリ君で初めてだった。


洗われた素材が空中で舞い、均等に刻まれて鍋に落ちていく。


まな板なんてないので殆どこんな作り方をしている。


野宿だろうと何だろうとクオリの料理は変わらず美味しかった。


もじもじして「ぼく、いつでも待ってる」ってちらちら見ているのが不思議でならない。


何を待ってるんだろうか?


直接そう訊いてもきゃー!って言うだけで答えてくれなかった。


可愛い物好きで家事上手くてお洒落に拘っててとか私より女子力高いのは何故なの?


何故なのクオリ君!


「リンコ好きだから!」


うう…汚れた私には眩しい笑みだ。


とまぁ雑談は置いといて、30分の休憩を挟んでから再出発した。


「そろそろ長い沼地を通る事になります。その沼地には龍族が大量に住んでいますので、気を付けて下さい」


リジェロの警告でうんざりとする。


長い沼地とかやだなぁ。


「おや…普通の女人のような事を仰いますね」


「何時の間に其処に」


気付けば胸元にカケルが入っていた。


今更だけど女の子の胸に挟まるのは男としてどうなの?気持ち良いのかな私の胸は…


「気持ちイイですよ。まあ…婚約者だから良いので御座います」


「まだそのネタを引きずるのか」


「ネタ扱い!?私の事はお遊びだったので御座いますか!?」


「おう」


「そんな…体だけが目当てだったなんて…」


「お前も気持ち良かったんだろ?ならイイじゃねぇかよ」


「よよよよ…」


コントを間近でガン見してるクオリがそこはかとなく怖かった。


だってカケルって割とノリが良いんだもの。


ちょっと楽しいんだもの。


「ぼくと遊んでぼくとだけ居てぼくだけ見れば良いのにどうして凛子あれと婚約した上に仲睦まじげなのぼくはそれでもまだ我慢しなきゃ駄目なのもう我慢限か――」


何言ってるかよく判然らないけど怖かったのでクオリの手を握り締めて一緒に歩いた。


寂しがり屋にも程があるだろクオリ君。





うだうだしてる内に、長い沼地へ辿り着いてしまった。


「うわぁ」


機嫌を直したクオリ君が、限りなく広がる沼地を見て一言漏らした。


まあ…大量の龍が此方を見ているんだもの仕方ないねその微妙な表情は。


鰻みたいな形状の龍達は、某トロールの谷の白いにょろっとした奴みたいに地面から生えていた。


それも限りなく広がる沼地に大量にだ。


気持ち悪いを通り越して悍ましいその光景に、ファンタジーのドラゴンってこんなんだっけと思いを馳せた。


他でバトったドラゴンはファンタジーって感じしてたのに…見た目どうしても黒いにょろにょろにしか見えないし。


クオリが沼地に足を踏み出すと、龍達が一瞬消えた。


そしてクオリの足元から口をガバァッと開けた龍が出てくる。


それを高速で後退する事で逃れた。


「うわ…なにあれすごい…」


ホラー以外の何物でもないなあの動きは。


どうやって渡るか悩んでいる内に、私はこれならいけるかも知れないと思った。


「龍って熱に強かったりする?」


「いえ、弱いのですが…かなり早く地面を潜りますので、そう上手く当てる事が出来ないのです」


リジェロに確認を取って、私は喜んだ。


そう、今こそ私の無駄に大量にある魔力を使う時なのだ!


「も、もしや凛子様…!」


カケルは気付いたようだが、もう遅い!


カナリストレスフルヨな状態なので、思いっきりいく所存だ!


「ファイアーウォール!!」





乾いた大地が続いていく。


大地からは煙りが出ていて、尚且つ熱かった。


けどそこはあれだ。


冷却の魔術をこまめに使っているので、そこまでだった。


超減った龍は恐るに足らず、弱っているので鈍かった。


「リンコ様流石です!鬼畜です!」


リジェロがさっきから凄まじく尊敬の眼差しで誉めてくる。


鬼畜言うな!喜ぶな!


王子は若干私を引き気味に見ている。


流石にやり過ぎたかな?


でも普通に戦いたくなかったので、自重なんざしない。


しかも私はかなりのレベルアップをしたので、余計に自重はしなかった。


今なら魔王も片手で倒せるんじゃないかな!


私はそう調子ぶっこいた。心の中で。

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