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魔の領域の魔獣達

「リンコ、うさぎさんがいた!」


「うん、うさぎさんだねクオリ君。捨てて来なさい」


「やだ!ぼく買うの!あのね、ちゃんとお世話する!だから…あのね…」


「駄目。元あった場所に捨てて来なさい」


「リンコぉ…」


べそべそと泣く(但し表情は笑みのまま)クオリの手から、角と翼と竜の尻尾的なものが生えたうさぎさんをもぎ取った。


クオリは放っておくと魔獣を飼いたがり持ってくるので、放っておく事が出来なかった。


リジェロは(気持ち悪いが)私にしか興味ないのかクオリの事は気にしてないし、王子は風邪でも引いたのかボーっとしてるし、本当にこのメンバーで魔王城に押し掛けて大丈夫なのか心配である。


リジェロ君曰く魔王はイケメンのマゾヒスト垂涎の超サディストらしいので、颯爽とぶっ殺して終わりにしたいものだ。


「乙女としてそれは如何なものかと思われますが」


「ずっと胸元に挟まって楽してる珍妙なおチビちゃんに言われたくないかな」


「失敬な!私は珍妙では御座いませんよ!かわゆい妖精さんで御座います!」


自分でかわゆいとか言うカケル君まじ歪みないわ。


その妙に澄んだ瞳で言われると、私が間違っているような気さえしてくるから恐ろしい。


ぷりぷり怒るカケル君はそれでも私の胸元から出て行かなかった。


これだから男って奴は…





結構歩いた先に、黒い地面が見えてきた。


「この先からは魔の領域だ。恐ろしい魔の物が出るらしい事しか解っていなかったが――リジェロとやら。この先に魔王城が在ると言うのだな」


王子がそう問うと、リジェロは素直に頷いた。


そしてその後にやけに私をきらきらした瞳で見詰めてきたので、対処に困りつつも親指を立てておいた。


嬉しそうな顔したリジェロの頭部と臀部に犬の耳と尻尾の幻覚が見えた。


クオリがヤンデレわんこなら、リジェロはなんだろうか……マゾわんこ?


止めておこう。何故だか頭部に深刻なダメージを食らう気がしたし。


兎に角――魔王城が近いという事は、このお遊びの終わりも近いという事だ。


カケルの言う通りに出れるならばいいのだが、一つ困っている所がある。


このゲームのエンディングとは一体なんであるか。


カケル曰く恋愛ゲームらしいが…マルちゃんの言では戦争ゲームの様なものとの事だし…想像がつかなくて困る。


恋愛色の強いエンディングだったならば、とても困るのだが。


だって…恋愛ゲームのエンディングって誰かとくっ付いて終わりじゃないか。


まあ、誰ともくっ付かないエンディングは確かにあるけども。


この場合、攻略キャラはどうやらリジェロと王子達らしいし、今一番親しい(?)のはリジェロだから――うわああぁぁぁ!!


今一瞬女王様的な絵図しか思い浮かばなかった!!


流石にないわ…そんなの…


黒い地面を跨いで魔の領域に侵入。


私はその際に、邪念を押しやった。


…いや、まあ、うん。


魔獣が大量に地面から生えてきたんだもの。


ていうか…魔…獣?


獣かこれは?


「があ゛ー」


「う゛ぁー」


何故だろうか。ゾンビは最近リアルで見てきた気がするわ。


半分人っぽい犬のゾンビが大量に生えてきた。


倒せど倒せど終わりが見えず、更には剣も錆びていく始末。


余りにも湧きすぎるものだから、無視して突っ走る事にした。


「あのね、あれはね、犬さんに対する冒涜だと思うの」


不意にそう漏らしたクオリ君に、私は思わず彼をガン見してしまった。


私ったら可哀想な事に形状し難い壮絶な笑みを見てしまったのだわよ。


なんかもうあれは悪の宰相スマイルだった。


クオリ君はまだ何も悪い事してない筈なのに犯人はお前だと言いたくなる様なスマイルだった。


そして私は背後を一切振り返る事なく走り去った。


大量のわんわんと吠える声と如何ともし難い果実の潰れるような音など私は聞こえていないのです。


トリガーハッピーかなんかになってるんじゃないかと言う様な銃声も知らんのです。


あら、どうして王子は青ざめているのかしら?


なんだか動きがカクカクしてて危なっかしいから片手で持ち上げた。


リジェロは意味もなく恍惚とした表情をしてて気持ち悪かったので、殴って気絶させてもう片手で持ち上げた。


右脇に王子、左脇にリジェロ、胸元にカケルを詰め込んだまま驀進。


やがて戦闘音が止み、辺りは静寂に満ちた林の中になっていた。


しかし…地面も木も黒ずんでいて不気味だ。


水音が聴こえたので、其方に進む。


しかし其処には人影があった。


背が高く、潤いのある艶やかな白肌と紅くつり上がった大きな目を包む煌びやかな白髪に、その美貌を白き衣と毛皮に包んだ人物――クオリが居た。


「あのね、ご飯が出来たよ!」


どうやって先回りしたんだとかその肉片はなんだいとか戦ったりした筈なのに驚くほど真っ白ですねとか突っ込んではいけない。だってクオリだもの。


「とりあえずその…毛が…マフラーはなに?」


もふもふしたマフラーを指差すと、クオリは嬉しそうに笑った。


「戦利品!寒かったからちょーどいいの!」


そしてカケルは言った。


「四天王の疾風のセトで御座いますね。残る強敵はは四天王1人と魔王だけで御座いますよ凛子様!」


四天王をマフラー扱いってお前…


「…元あった場所に置いてきなさい」


「やだ!ぼくこの狐さん飼うの!」


「…狐鍋にして食べるわよ?」


「別にいいよ?」


ちょ、クオリお前…もしや生きてようが生きてまいがどうでもいいというのか?


なんという恐ろしい子!


結局、私が折れて狐のセトを連れて(?)行く事にした。

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