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勘違いと気付かず

逃げる様に城から出て行った私達と新しく仲間入りしてしまったリジェロ君とで、横路から逸れた場所にテントを張る事にした。


リジェロ君まじ怖い。


だって恍惚とした表情で私の椅子に成ろうとするんだもん。


もしやそういう趣味なのだろうか?


ちなみに何故かお尻が赤く腫れているらしく、魔術で治そうとしたら嫌がられた。


ホントウニ、イミワカラナイ。


で、それは良いんだよ。


とても嫌だけど良いんだよ、リジェロはね。


利用価値あるし、かなり…いやちょっとマゾヒストの疑いはあるけどお菓子くれる良い奴だし。


女嫌いの王子がなんでついて来てんのか知りたい。

本名未だに知らんし、知りたくないし、私は気にもしてないのに一方的に敵視してくるし、なのについて来るし。


本当になんなの暇人なの王子。


リジェロ曰く王子は最後の王子だから餌にはうってつけらしいし、仕方ないから王子の分の餌ゲフンゲフンご飯の用意をしてやる。


そのご飯を直接渡したリジェロに礼も言わずに私を白眼みつける王子に、内心なにこいつ見んなよ目玉抉るぞと思ったけど、クオリにくっ付いて視線から逃れておいた。


リジェロもクオリも背が高いから盾に丁度良いし、無害なので安心して側に居れるのよ。


カケルは胸元が気に入っているのかずっと挟まっているし、クオリは不愉快なもの(王子の視線)を遮断してくれるし、リジェロは放って置くと直ぐ椅子とか机になるし、まるで私が男を侍らす女王のようだなと他人事に思った。


某探偵の皮を被った探偵物の家具を愛し女も家具扱いする変態じゃあるまいし、家具は要らないのよリジェロ君。なんで鼻息荒いの怖いよ。いや、放置プレイじゃないから喜ばないで欲しい。


テントに入った後はもっと悲惨だった。


だって三人用なんだものこのテント。


しかも華奢とはいえデカイ男三人組と一緒に入って寝るとしたら、凄まじく密着しなきゃ私の寝る場所がない。


という訳で、私の下にクオリで左右に王子とリジェロという嫌な配置になった。


ちなみにテントには強力な防御の魔法が掛かっているので、見張りは要らないらしい。


面白い事が大好きなカケル君の言葉は信用ならないけど、面倒だし考えたくなかったので信じといてあげた。


しかし…皆さんの腹筋の逞しいこと逞しいこと。


クオリはまあ逞しいことは散々弄ったから解っているけども、リジェロも王子も結構鍛えているのか逞しい体つきをしていた。


「リンコのえっち」


耳元で囁かないでくれクオリ君!


唇!唇が耳に当たってるから!


はむな!耳をはむな!





異様に暑苦しい朝を迎えた。


憎らしい程に清々しい朝だなと、クオリ君の体の上でそう思った。


私の向きがうつ伏せではなくて仰向けで良かったと、本当の本当にそう思う。


匂い立つ甘い香りに子供体温のクオリ君。


彼の手は寝る前と変わらずにがっちりと私を掴んでいた。


なんと足もがっちりと私を掴んでいる。


お前はパンダさんか!


タイヤの如く扱われている私だが、一応人間である為、ずっと姿勢を変えないで居るのには酷く疲れた。


体が痛いとかそういったものが無いのは、どんなにリアルだろうとゲームの中だからなのか私の体が異常だからなのか判然らない。


それにしてはリジェロの性癖は物凄くディープな気がするけれど。


王子がもぞもぞと起き出し、そして私と目が合った。


見下した目…というより、何かを言いたそうな目をしている。


ジィッと見ていると、頬を赤らませもじもじとしだした。


新手の嫌がらせだろうか。


もしくは手洗いに行きたいけど怖いから1人じゃ行けないというのだろうか。


残念ながら私は立ちションは出来ないのだよ。構造が君とは違うからね。


なので連れションは却下。リジェロを連れて行きたまえ。


ハッ!


もしかして…漏らした…とか?


王子を無遠慮に見回してから、ほう綺麗に処分したなと王子に微笑んだ。


我ながら優しい微笑みだったと思う。


王子は更に頬を赤らませて瞳を潤ませていたので、ほぼ間違いないだろう。


王子が催してしまったのだという事は。


暫く見つめ合っていると、王子が顔を両手で隠して座り込んでしまった。


恥じらわなくてもいい。


生理現象なのだし、仕方ない事さ。


そこはかとなく王子に親近感が湧いたところで、今日は私が朝飯を作ろうと思った。


その前に…クオリを起こさなくては、私が動けない。


とりあえず可愛らしい寝息を立てるクオリを起こす事にした。





――リンコと言ったか?


彼女はまるで物語の王子のように勇ましく、そしてかっこよかっ……違う!野蛮だった!


幾ら睨もうが此方をチラリと見るだけで、興味を微塵も抱いては貰えなかった。


……いや、それだと俺がリンコに興味を抱いて欲しいみたいだから無しだ!


付いて行って程なくして、野営の準備を始めた。


よくもまあ敵だった奴を信用出来るな。


まあ…クオリは強いし、認めたくはないがリンコもちょっと強いから驚異にも感じていないのかもしれないけど。


組み立てるテントを見て、俺は言葉を無くした。


……狭い。


見るからに狭いテントだ。


こんなんじゃみみ、み、密着するじゃないか!


案の定全員で密着して寝る事になった。


俺は端の一番入り口から遠い場所で、隣にはクオリとリンコが居た。


仲睦まじげな様子に何故か胸がちくちくと痛む。


見ろよ。こっちを見ろよ。


けれど此方をろくに見る事もなく、夜が明けた。


早くに起きてしまったのでリンコを観察してみようとしたら、途端に目が合った。


なんだ?何故そんなに見てくるんだ?


ジッと見てくるリンコ。その目はとても円らで、ちょっと可愛かっ…いや、目が可笑しくなっているようだな!


何故か目が離せなくてジッと見ていると、リンコは慈悲深き女神のような微笑みを浮かべた。


まるで全てを解ってくれているかのような、慈しみの深い笑みを……


きっと俺の心の傷も想いも理解していて、尚も許してくれようとしているのだろう。


途端に、リンコの事を他の貴族の女と同じ尻軽だと思っていた事を後悔した。

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