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悪い奴は半殺し☆

美しい料理の数々が並ぶ大きなテーブルに、私とクオリは座っていた。


王やら貴族やら他の城の人間達の科白の数々から考えて、どうもクオリは勇者的な扱いをされているようだ。


何かくっちゃべっていたけれど、私は何も聞いていなかった。


頭の中はずっとディナーフルコースしかなかった。


あと王子の視線がうざい。


王が食べ始めたようなので、もう食べてもいいという事なんだろう。


ていうか王と王妃と王子に姫という王族と一緒に食事するとか意味解んない。


姫はクオリにめちゃくちゃ好意を抱き私を敵視しているし、王子は私の何が気に食わないのか敵視しているし、王と王妃はクオリにしか興味ないみたいだし。


どうでもいいが、意味なく敵視されるのはくそうざい。


無心に美味しい料理の数々を食べる。


誰かが話しかけてきている気がするけれど、ガン無視しておいた。


「何を無視していますの貴方。これだから庶民は卑しい――」


卑しいのは食事中に話すお前の頭だろ。


隣でクオリが少し震えて嗤っていた辺り、きっと同意したんだろう。


あ、バカ姫が王に止められた。止めるのおせーよ。





大体を食べ尽くし、後はデザートだった。


私はデザートはケーキ10号サイズを4ホールならペロリといける胃の持ち主である。


勿論、それは食後に食べれる量だが。


心なしか食べている量に引いた姫は、私に視線もくれなかった。


逆に王子はガン見してきていた。


どれ程食べるのか気になるのだろう。


使用人がケーキやらをテーブルに置いて行く最中、その悲劇は起こった。


天井が巨大なテーブルを破砕したのだ。


そして破砕された天井から1人の男が降り立った。


「あれは私が攻略キャラとして設定した者で御座いますね。今はどうだか知りませんが…」


小さな声で忠告してくるカケル。


私の開いたドレスの胸元に挟まっているその小動物は、分かり易い位にわくわくてかてかとしていた。


死ね。百万回くらい豆腐に埋もれ死ね。


サンカクさんに掘られちまえ。


クオリもカケルも非常に嫌そうな顔をした。


サンカクさんめっちゃ嫌われてやんの(笑)


そういえばとテーブルに目をやると、ケーキがとても無残な形になっていた。


無事だったケーキすら、降ってきた男により潰されていた。


そのケーキ…私が一番食べたかったやつだ…


「さあ王子よ、後は貴様の心臓さえ揃えば願いが叶うのだ。無限の魔力を魔王様へと捧げる事が出来る!」


更に踏みにじる事によって、無事だったケーキは次々と潰れていった。


そこで私の意識が途切れた。





「――くっ…私の御印しをその様なことに使う気なのか!」


ラファル王子がそう問うと、男は「そうだ。気付かなかったのか?」とにたにた嗤った。


僕は可哀想にと思いつつも、厨房に向かう事にした。


幸い、誰も僕の行方を気にしなかった。


まあ…非常時だもんね。


厨房には誰もいなかった。


もう仕事が終わったからだろう。


僕は勝手に材料を持ち出すと、比較的短い間に出来上がるものを選んで作った。


赤いソースの掛かったミルフィーユとティラミスだ。


20分は経過してしまっているし、そろそろ危ないだろうなぁと思ったので、僕は急いで凛子の元へと向かった。


見えたのは無残な部屋と呆けた王族。


そして白目を剥いてびくんびくんしながらも尚も凛子に叩かれている魔族の男だった。


多分、四天王の1人じゃないかな。この男。


ちょっと大きめのケーキ2つを持ったまま凛子に近寄ると、凛子は叩く手を止めて此方を見てきた。


餌を強請る猫さんみたいに可愛い…!


ちょこちょこ近寄ってきた凛子にケーキを差し出すと、警戒なんか全くせず美味しそうに食べ出した。


良かった…慣らした甲斐があった。


僕の血は美味しいかい、凛子。


途中で意識の戻ったらしい凛子は、ハッと僕を凝視した。


でもケーキを食べる手は止めない止まらない。


頭を撫でると無意識になのか、僕に身を寄せてきた。


可愛い。


胸元から弾き飛ばされたカケルが此方を睨んでいたけれど、無視しておいた。





――私は何をやっていたのだろうか?


気付けば土下座してぷるぷる震えている男と、怯えまくっている姫に、目を見開いている王子や、凝視している王と王妃がいた。


そして私はクオリが作ったらしいケーキを食べながら、頭を撫でられているというカオス。


部屋は半壊しているし、犯人はマジ泣きしているし、本当に何をした私。


「四天王の白炎のリジェロから王子を守れのクエストを、見事達成致してましたよ。おめでとう御座います」


「なんでカケル君ちょっと不機嫌なの?」


「気の所為で御座いますよ」


ぷいっと横を向くカケルを頭に乗せて、とりあえずどうしようか思案した。


けれどそれは直ぐに破られる。


「私は…私は貴方の強さに心底惚れたんだ…!」


ボロボロなのにきらきらしいスマイルでそう言った男――リジェロは、私に何処までも付いて行くと言った。


何処までも、何処までも、付いて行くと。


勘弁して欲しい。


でもジェレイドは城の入り口を知っているから自分は使えるぞと言ってるし…どうせゲームキャラなんだし、深く考えずに連れて行くか。





この時の私は、なんやかんやと城を出て行く時にまさか王子までついてくるとは思わなかった。

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