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城の謁見室と王子

「リンコ可愛い!」


追い掛け回すも最終的にクオリに負けた私は、緋緋色金のドレスを身に纏っていた。


もう一度可愛いと仰るクオリを見て、溜め息を吐く。


私達はもう、沢山の馬に乗った人間と一緒に別の所に向かっていた。





これは些し前の事になるけれど、四天王と戦って暫くしてから、騎士団とやらが来たんだ。


王都から来たらしい騎士団の野郎共は、私達を賊だと疑っていた。

かなり罵倒されて頭にクる。


しかもチャライ騎士団の兄ちゃんがやけに鼻の下伸ばしてるなと思ってたら、クオリが小さい声で「検問と称して弄る気」と言った。


ああ、だからこの姿ってやなんだよな。


そう思っていると、騎士団により保護されたのか、子供と大人がわんさかと遠くで群れていた。


顔付きが羊やら牛っぽいので、草食動物の群れのように見える。


その中から見覚えのある少女が此方をマッハで走って来ていた。


例の女の子に猫まっしぐらに抱きつかれた私は、光速で思考した。


「お姉ちゃん!ありがとう!」


「うん、どう致しまして」


やり取りにクエスチョンを浮かべる騎士団を見て、内心嗤う。


セクハラはさせんぞ。


「お姉ちゃんどうしたの?とても悲しそう…」


「私…悪い人だと疑われてるみたいで…」


しょんぼりと言ってやると、女の子が騎士団に向けて怒りつつ説明した。


「そんなに強そうには見えないけどなぁ?」


にやにやにたにた笑うチャラ男は尚もそう言って私のおっぱいを見ていた。


デカいからね、さぞかし揉みたくて揉みたくて仕方ないんだろうね。


尋問と称して…とか何処のエロ同人誌だよって感じ。


クオリがにこにこ微笑みながらも、チャラ男の横の岩を粉砕した。それも片手で振りかぶるモーションもなく明らかに硬質な岩を。


青い顔をするチャラ男を見ながら、クオリは言った。


「あのね、見掛けで判断するのは三流だと、ぼく思う」


生身の掌で粉砕したのが分かるように、ひらひらと手を振るクオリ君。


その気になったら簡単に人間滅ぼせそうだなと思いつつ、頭上で伏せのポーズしたカケルを掴んで抱き締めた。


とても癪だが小さいカケルは可愛らしいので、すごく癒される。


マスコット的体型なので、幼児に見えるのがこれまた可愛らしい。


とても癪に障るけれど。


カケルで遊んでいたら、クオリが話をつけたのだろうか、拘束される雰囲気は無くなっていた。


何故かクオリが崇められているのがとても気になったけど、聞けなかった。


王様に報告せねばだとかなんだとか言う騎士団団長に連れられて、何故か私達も王都に行く事になった。


褒美はもう貰ったから、放って置いてほしいかな。


そう思ってはいても、私では止められなかった。


まあ、思っただけだしね!





先ずは団長が王様に報告するという事で、私とクオリは呼ばれるまで騎士団団員と多分近衛兵かな?それの近くに待機した。


うわ…視線がめっちゃくる。


団長が説明前も説明中も説明後もずっとずっとガン見してくる金髪の男がいる。


表情は…なんだろう…何故女なんかが此処に居るのだって感じ。


女嫌いの男が女を見た時を絵に書いたような表情だった。


まあ、どうでも良いが。


男99%の謁見室は実に男臭くて仕方ない。


鎧を着込んだ集団からフローラルな匂いがしたらそれはそれでキモイが、血脂の匂いくらいもっと拭おうよ。


血腥い謁見室で待って暫く、私とクオリが呼ばれた。


こういうのはクオリに任せて、私は適当にぼんやりしていた。


この城の金目の物はうまし棒何本くらいの価値があるんだろうか。


腹いっぱい食べれる事は間違いない。


寧ろ一生分はあると思うんだ。


素敵!


そういえば王子の似顔絵はお野菜ばかりでびっくりしたけれど、あの女嫌い王子はお野菜みたいな顔じゃないし、全部の王子がお野菜やら茸やらじゃないんだとちょっとがっかりに思った。


もう此処まできたら食べ物系がくるとばかり。


中途半端にしないで欲しかった。


何故あの王子は美形なんだよ。


まだトマトとか海老とかあるじゃんか。


普通の美形とか要らないよ。


「――して、褒美は何を欲する」


その言葉に私は、反射的に応えていた。


「ディナーフルコース!」


「…ほ…本当にそれで良いのか?」


ああ、王様がちょっと引いてる。


王子はぽかんとした間抜け面を晒していて、それだけ意外な要求だったんだろう。


でもどの道それ以外要らないしな私。


「連れの望む通りでお願い致します」


礼儀正しく尚且つ上品なクオリ君を見て、佇まいを直す。


流石は宰相様。


普段は子供っぽいのに、とても様になっている。

上品過ぎるクオリ君を眺めつつ、謁見室を退却した。


なんとも言えない顔した女嫌い王子がずっと私を見ていたのが気になるが、まあ別に深い付き合いなぞしないだろうしどうでもいいか。


そう思っていたら、背中にくっ付き虫になっていたカケルが呟いたのが聞こえてきてしまった。


「あれがどうやら七人の内の最後の王子のようで御座いますね。捕らわれていなかったとは」


……え?


そこで思い返してみる。


そういえば絵は6枚しかなかったような気がする。


でもあれ普通に人間なんだけど本当にそうなの?


「それ、他の王子に失礼で御座いますね」


爆笑しているカケルも大概だと思った。

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