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王子様の似顔絵?

「あれがゴブリンかな」


轟々と燃える炎の傍らで、何匹か緑色の変なのが立っていた。


恐らく見張りのつもりなんだろう。


まあ…酒かっくらって寝てるけども。


汚水に付けて乾かしたティッシュみたいな色の布を着ているので、出来れば触れたくないものだ。


見た目だけならゴキブリといい勝負が出来そうな程の嫌悪感が湧く。文字もちょっと似てるし。


クオリがバシュッと禍々しい魔力の塊を放つと、ゴブリンが悶え苦しみながら死んだ。


洗剤を掛けられたゴキブリのような死に方だった。ひっくり返って腹を見せている。


「どこまで現実を再現してるのか、カケル、わからないの?」



私の頭部に居座るカケルをむんずと掴んだクオリが、にっこにこ可愛らしく笑いながら訊いた。


ミシミシという音がするけど…何の音かしら。


「お止めなさい!頭蓋骨が割れてしまいますよ!」


「もともと割る気だから、大丈夫!」


「大丈夫じゃありません!割れたら復活するのが面倒なので御座いますっ!」


面倒ってお前…


にこにこした顔のまま「つかえない」と言ったクオリ。


段々とカケルの扱いが酷くなっているような…まあいいか!


びゅーんと私の頭上に戻ってきたカケルになんとも言えない気分になりつつ、炎がくすぶる街の中へと突入した。





生きている人の気配はおろか、ゴブリンの気配もない。


どうやらゴブリンは街の門に居たので終わりのようで、がらんどうな中を歩いていった。


勿論モンスターを探すだけではなく、水の魔術を使って消火運動もしていた。


炎は徐々に消えて一層煙を吐き出す。


煙に咽せつつ、リアル過ぎる感覚にゾッとした。


「カケル…」


「作り込んだ記憶は御座いません。恐らくは…悪質な悪戯の好きな□□様の仕業でしょう」


また神の仕業かよ!


本当にろくでもない神ばっかだな!


断トツでろくでもない神であるカケルは「□□様は本当にろくでもないですからねぇ」とぼやいていた。


自分を棚上げしやがって…


戯れていると、空が急に暗くなった。


月が雲に隠れでもしたのかな。


目を細めて静かに見上げるクオリに倣い、私も見上げる。



「な、なにあの目玉!なにあの目玉!」


「リンコ落ち着いて!」


クオリの背後にべたっと張り付き、油断なく睨みつける。


形はバッ〇ベアード様のような感じで、それに血走った目玉がぎょろぎょろと付いている。


それが不意に此方を見詰めた。


隠れている訳でもなかったし、見つかってしまったみたいだ。


あんな不気味なモンスターにジロジロと見られても動じないクオリに、内心好感度を上げた。


流石は宰相…見慣れてるって訳だね!


「あれ、魔界卵に似てる!あのね、魔界卵はね、マグロと卵が混ざったみたいな味なの!」


な…なんだ…と…


「り、凛子様?その涎はなんで御座いましょうか?凛子様?り…凛子ぉぉぉぉ!!正気に戻って下さいましぃぃぃぃ!!」





どうやら私の意識がとんでいたようだ。


気付けばマジ泣きしている目玉野郎を片手に、私は佇んでいた。


「れべるあっぷ、おめでとうリンコ!900になったね!」


妙に嬉しそうなクオリの言う通り、レベルが900になっていた。


それでも精々クオリの鼻糞程度のレベルではあるけれど。


目玉野郎の頭部に噛みつき跡に似たものが有るのを見て、首を傾げる。


はて…何だろうかこれは。


ぷるぷると道の端で震えていたカケルを掴んで頭に乗せ、ゴブリンの探索を続ける。


王子様の似顔絵が手に入ってないって事は、クリアしてないって事だろう。


暫く歩いていると、急に開けた場所に出た。


広場…かな?


サーカスのテントっぽいのを見掛けて、鳥肌が立った。


私、ピエロとか苦手なのよね…


やけに綺麗なテントだったので、中の物もきっと無事だろう。


という事でクオリを盾にして中に入る。


レベル8000オーバーの盾とか最強過ぎるな。


テントの中は…何もなかった。


檻が些しと大きな球体と絵が貼ってあるだけだった。


「おや?これが王子様の似顔絵のようで御座いますね」


これが…王子様…


「茸と竹の子と胡瓜に茄子に馬鈴薯に若芽だ…」


「確かに似ておりますね」


「ていうか、化身と言われても、可笑しくないね!」


これと恋愛させる気…?


いやいや、システムが変わったんだしそんな筈は…


「相手が□□様で御座いますからねぇ…」


いやぁぁぁぁぁ!!


せめて美形が良い!!

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