低カロリーな焼肉
「ただいま!食べて!」
「おかえるな!いやだ!」
白いのが帰ってきた、此処は君の家じゃないのにね。というかね、白い奴の同族の心臓的なもの(ルビーに似てる)が付いた指輪をしているのに、貴方ったらまるで気にしないのね。そう今更ながら思ったり。
「ぼく、いちきろぐらむ、たったななひゃくかろりー!すっごい、へるしー!」
なに!?
そんなにカロリー低いの!?
「脂肪、いっぱい!けどていかろりー!」
だけどあれは人肉!!あれは!!人肉だ!!食べたらいろんな意味で危険な肉なんだ!!
「ぼく食べて!ね?ね?」
きゃるんと可愛らしくお願いをする彼だが、内容は相変わらずであった。危ない…危うく誘惑に乗る所だった。誠に遺憾ではあるものの、この躯は太くならない素敵な躯をしている。前の自分だったら危なかった…かも。
「夕飯準備する、君食べる」
「ちなみにメニューは?」
「トマトスープ、ミートパスタ、赤いサラダ、苺のタルト、赤ワイン!」
「赤尽くしなのは何故…」
「血を、隠す、入れる!」
いや、ドヤ顔で言われても…困るというか…
「むしろ今日は私が作る」
そう言った途端、心底嬉しそうに「いいの!?」と叫ぶクオリ。なんか犬の耳と尻尾の幻覚が見える。もふもふと高速で喜びを表現している気がする。
「なにたべる?トラリコ(豚に似た魔物)?カルロ(牛に似た魔物)?ぼく(とってもヘルシー)?」
妖艶な表情で問い掛けてくるけれど、間違えてはいけない。たべるは食料としての食べるであって、その他の意味はないのだ。
「今日は…あー…焼き肉するから」
「わかった!」
クオリはにこにこしながらナイフを取り出し、自らの体の一部を切り取った。度肝を抜かれて固まっていると、妙に美味しそうな匂いをさせてその肉が焼かれていく。その間にクオリの欠損部分が修復されていき、赤く染まった筈の服まで元に戻った。
今更ながら逃げようとすると首もとを掴まれ、口に放りこまた。
無駄に香ばしい。
吐き出そうとしたら口に指を突っ込まれ、吐けない。思わず飲み込んでしまった。
ハジメテカニバッテシマッタ。
「ね、おいしーでしょ!」
松坂牛の霜降り肉の如き味わいの腕を持つ男は、何が楽しいのかへらへら笑っていた。
「えへへへー♪まだいっぱいある!たべて!」
「いやだ!」
私はその日、悔し涙で枕を濡らした。
まさかあんな…あんな無理矢理喰わせてくると思わなかったんです!
本当にめちゃくちゃ美味しかったのがこれまた…悲しかった…