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自業自得だと思う

「…そう、こんやくしゃ」


その声と共に、凄い音を立ててステンレス製のカップが砕けた。

クオリの仕業である。


い、いつも通りの笑顔が怖い。


「仮が付きますが、そうで御座います」


カケルがなんでもない事のように言うと、クオリの何とも言えない覇気が消えた。


分かり易く言うと、獰猛で人を喰う虎から可愛らしい仔猫的な雰囲気に変わった。


うるうると此方を見てクオリは問う。


「カケルなんかと、結婚しないよね?するなら、ぼくと、だよね?」


「カケルなんかと結婚しないわよ。まあするなら好き嫌いない奴ね」


「じゃあ、カケルとシザリオンは、範囲外?」


「全く以て」


その会話を聞いていたカケルが「というか私にも好みが御座いますから。安心して下さいませ」と言った所で、クオリは不満そうにしながらも話を夕飯の事に変えた。


やれやれ…学校で天使さんと妖精さんに絡まれ、それが終わると直ぐに向かった神界でマーマンに絡まれ、帰宅したらクオリに絡まれ…やけにハードな1日だった。


なんだか字面だけ見るとすっごくファンタジーだ。


「ハンバーグなんかが良いと思いますよ!特に中身は牛の挽き肉が良いですね!」


夕飯の話に真っ先に食い付いたカケル君は、几帳面そうな言葉遣いとピシッとした外見に反して、わりとファーストフード的な物が大好物である。


ハンバーグは確かに美味しいけどね。


だが、私は心を鬼にする。


「違うだろ、カケルさんよぉ…………今日はピーマンの姿焼きだ」


「リンコ、わかった!ぼくはほうれん草食べたいな!」


「そ、そんな!?ピーマンもほうれん草も嫌いで御座いますぅ!!」


この世の終わりみたいなカケルを見て、溜飲が下がった。


お野菜の美味しさを思い知るが良い!


最終的には牧草ですらご馳走に見えるようにしてやろう!


「牧草なんて本当にただの草では御座いませんか!嫌で御座います!私お野菜嫌いです!」


「だから人の心を読むなよ変態!」


「ぼく…変態?」


「クオリはいいの」


「わーい!」


「私にだけ酷いです!あんまりで御座います!」


五月蝿いカケル君を蹴飛ばして、お買い物に出かける。


今日はシザリオンとヴァーデが一緒に来てくれるようで、クオリは張り切ってお料理の準備をしていた。


カケル君は蹴飛ばされた姿勢のままさめざめと泣いていた。


ピーマンがそんなに嫌いか!


夕飯に出されたピーマンの姿焼きを見てカケル君は硬直している。


因みに私達のはほうれん草のシチューだ。


恨めしそうな目で此方を見るも、みんなそんなカケル君と目を合わせないようにして黙々と食べている。


嫌そうな顔をしながらカケル君がピーマンを丸呑みした。


よく丸呑み出来たな…流石は人外…


「流石に此奴ピーマンだけでは物足りないので御座いますが…」


「はい!」


クオリ君がカケル君に渡したのはほうれん草のお浸しである。


カケル君がとうとう目に涙を溜め始めたので、仕方なくシチューを渡してやった。


「ほうれん草と人参は抜いてやったから残さず食べな」


「凛子様…」


嬉しそうな顔でシチューを受け取るカケル。


うんうん。男の泣き顔って見てて気持ち良くないもんね。笑顔の方が良いさね。


「惚れてしまいそうな程にかっこいいで御座いますっ!」


「え…勘弁だわ…」


ついポロリと本音を零してしまった。


ああもうっ!しくしく泣くなよ鬱陶しい!


「所で…どうしてそんなにも野菜が嫌いなのよ」


綺麗に食べ終えたヴァーデが、呆れた目でカケルを見る。


カケルは遠い目をしてぼやいた。


「…私…昔は嫌いではなかったようですが…一回だけロッカーに野菜を放り込んだまま忘れていた事が御座いまして…それを中に蛆虫が湧いてると気付いてなかった母がロッカーに野菜があったからと…」


段々と顔を青くしていってるし、内容がどう考えても気持ち良くないものなので、ストップをかける。


自業自得だとは思うが…母気付けよ!


「天然で御座いますから」


天然どころじゃないと思う。

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