こんな展開望まぬ
「凛子、一緒に帰りましょ?」
「凛子…お、俺、今日菓子作ってきたんだ。食べてくれ!」
「私も作ってきたのよ!凛子だけで食べて!」
以上の科白は、サンカクさんの施したものを解いた後のものである。
つまり、2人は ガ チ 百 合 な方達だったという訳だ。
そんなアホな。
凄いことに、2人の名前は天使さんに妖精さんである。
カタカナでエンジェルさんとフェアリーさん。
餌付けされているように見えているらしいが、失敬だぞ外野の君たちよ。
太るぞなんて乙女に言っちゃ駄目なんだぞ。
私だって一応気にするんだからな。
とまあ…それは置いといて…
上記の2人以外は襲撃してこなくなったので、とても安心出来る1日だった。
怖いのは…カケル君が人間である私に泣きつくようなナニカをしなきゃいけない事なんだが…きっと大丈夫だろう。
そう思ってた時期もありましたな。
「カケル!人間とだなんて馬鹿な真似は御良しなさい!私は認めません!」
「私と凛子様の仲を壊されるくらいなら、いっそうのこと人間に戻らせていただきます!」
「そんな…其処までその人間の事を…」
私を抜きにして、カケル君とカケル君のお婆さん(どう見てもマーマンに見えるけど気の所為?)による、熱い劇が繰り広げられていた。
そう、此奴の目的とは…
「仕方ないわね。そこの人間を××の婚約者として認めます。…今は」
お見合い話(神なのに俗過ぎる)を断る為の態の良い婚約者(仮)が欲しかったらしい。
見合わない。
すっごく見合わない。
無視していたら、2人が私をガン見してきた。
どうしたら良いんだ。
姑にいびられるのはご飯を美味しく食べれなくなる程に精神にくるらしいじゃないか。ドラマで言ってたぞ!
取りあえず私は半笑いで「宜しくお願いいたしますお婆さま」と言っておいた。
お婆さんが小さい声で「泥棒猫めが」と言ったのは私の気の所為にしておきたい。
猫呼ばわりされるほど、私可愛くないし。
でも言われっぱなしは腹立つので、あえてにこりと鼻で笑ってやった。
「マーマンって美味しいのかしら」
本音もポロリと出てしまい、更に食物を見るような目でもしてしまっていたのか、お婆さんは目を反らした。
あ、その反らし方…すごく血の繋がりを感じるわ。
「流石は凛子様…思考回路が人間という範疇から逸脱してもはや神級になっておりますね!」
それ誉め言葉じゃないだろ。
お婆さんは最後まで顔を青くして黙ったままだった。
何故。
「目が本気だったからでしょうね」
「いつもナチュラルに人の思考を覗かないでよ変態お兄さん。どうせなら近くに住むお姉さんの裸でも見てオナってろよ」
「…おなってなんで御座いますか?」
説明に困って黙ってると、それが面白いのかやたらと訊いてくる。
セクハラだ。
これは完璧にセクハラだ。
なんだか軽くパンツの上からケツ撫でてたらパンツの中からケツ撫でられたみたいな、そんな感じの気分になった。
「ねえ、なんのことで御座いますか?」
「貴方の相棒を握り締め、賢者になる作業のことだよお兄さん」
「まさか本当に答えるとは」
どん引きされた。解せぬ。
「とりあえずさ…婚約者ごっこは何時まで続けるつもりなの?」
ちょっとなんで顔をそっちにやるんだ。
本当に何時まで続けるつもりなんだ?
このままズルズルといって本当に結婚しました☆というオチは私絶対に望まないからね。
本当にやだからね。
「其処まで嫌がられると流石に傷つくのですが…」
「だって私、好き嫌いする人やだもの」
「り、理由はそれだけなんですか?」
「あたぼうよ」
それ以外になんかあんの?