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目玉は体に良い!

「ふふふ~」


私はパンを貰いご機嫌だった。





あれから私は、木を隠すには森私を隠すなら人里と思い、眼鏡とカツラを被って暮らしていた。メイクアップしてよくいる可愛らしい子程度にまでレベルを落とし、結構愛想良く暮らしていた。

お陰で私の対人スキルはメキメキと上がり、こうして残り物を貰うにまで至ったのだ。


しかし、この町は人当たりがいいものの、一つだけ欠点がある。


魚が高い。


海も川も遠いこの町には、そもそも鮮魚がないのだ。鮮魚ばかり食べていた私には、鮮度の落ちた冷凍魚なんて食べれない食べたくない。けれど普通の娘でいる為には、魔術を無闇矢鱈と使う訳にはいかないだろう。


ずっと魔法だと思っていたのだけど、私達人間の扱えれるものは魔術だけらしい。魔法は魔族の使えるもので、魔族の魔力に変換する器官(ルビーに似てる)を使う事でようやく魔術を発動出来るのだとか。ちょい聞きしただけだからよく解らない事だらけだけれど、とりあえず魔族ありがとうございますって事で置いとく。

ちなみに魔族は非常に美味しい肉をしていて、人間に近しい姿の魔族以外は食料扱いだった。どの道人間に近しい魔族は強いから仕留められないらしいが、仕留められたらどうする気なのか…

昔の貴族は食べたらしいけれど、出来れば此処の人は食べたがらないで欲しいな。何せ私にはその高級食材扱いの魔族の、更に高級な食材が集ってくるからね。来ない事を祈っているけれど、こうやってふと思い出した時に現れるからね。あの白い人は。


我が家である小屋に着いたので、申し訳程度の厚さのドアを開ける。


そして閉める。


気の所為だと頭を振り、ドアを開ける。


そして閉める。


疲れているようだと溜め息を吐き、開く。


そして閉めて項垂れる。


何故居る。


いや、確かにそろそろ出て来そうだとは思ったけれども!


ドアが開き、問題の物がにこやかに現れる。


「おかえり!ぼくと、ごはん、どっちたべる?どっちも、たべる?」


「食べるか訊くのは魔族特有の挨拶なの?」


「ぼくの挨拶?」


いや、問われても。


白い彼の手の中にはパイがあり、妙に美味しそうな匂いをしていた。


サーチの魔法を使い、隅々まで見てみる。材料的にホワイトシチューらしく、怪しい物(クオリの一部)は入っていなかった。


「食べて?君のために、ぼく、70時間煮込んだ!」


きゅるんと目を瞬かせて、嬉しそうに微笑んだ。不覚にも可愛らしいと思うような、天使スマイルだった。喋る内容はいつもちょっと邪悪なのに。

何も異物がないようなので、椅子に座ってシチューパイを食した。にこにこ見詰めているのが少し可愛らしくも怖い。何せ『お腹が空いたのならぼくをたべるといいよ!』と、某パンのヒーローのように身を捧げてくるのだから。


…料理上手い。無駄に料理上手いなこの人。料理出来なさそうなのに。ちょっとドジっぽいのに。なんて美味しいんだろう!


「凄く美味しい!こういう普通のご飯なら、毎日食べたいくらいだよ」


「えへへ~」


ふわふわと照れ笑う姿は、まさかカニバを勧めてくる男とは思えなかった。なんだ普通に料理出来るんじゃないか!いや、料理出来るのはわかっていたけどね、ほら食材が…ね。


「あのね、デザートも、あるの」


もじもじとしながらそういうクオリに、何故か危険な匂いを感じた。けれど言い返さないのは私の流儀に反する。厭々ながら返す。


「デザート?」


「うん、これ」


゜ ゜ ( д )

め、目玉の入ったゼリーきたーーー!!


「君、目が飛んだ!!今飛んだ!!どうなってるの!!」


「…………」


「填めた!?」


「失礼ながらお客様、お断り致します」


「丁寧に断られた!!」


ワープして逃げる寸前の顔が、妙にショックを受けていた感じだったのが印象的だった。


とりあえず引っ越しはしないつもりだが、また来たりするのだろうか?

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