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裏山の生け贄たち

「一気に片付ける方法、私思い付いたわ」


お昼ご飯を食べてる時に、ヴァーデが呟いた。


「だから裏山に行きましょう?直ぐ行きましょう。今行きましょう」


「え?いま?」


「そう、今よ」





で、着きました裏山。


わあ、何する気なんだろう。


クオリとヴァーデが手を翳して何やら魔法陣を作成しているのが解った。


「それは何?」


「掃除機よ。その瓶を嵌めたら完成するわ」


ヴァーデに貸してと言われたので、丁寧に持たせた。


ヴァーデはその瓶を思い切り魔法陣に向けてぶん投げた。


や、止めたげて。


壊れちゃうから。


らめー!!


魔法陣の中心に向けて地面に刺した瓶が、ごうごうと光る。


そしてどこからともなく例のもやもやを吐き出す物が飛んできて、瓶の中に入っていった。


それはとんでもないスピードで、思わず何かにしがみつきたくなる程の悍ましいナニカを放っていた。


どうしようか迷っているとクオリがおいでおいでをしてきたので、思いっきり飛び込む。


ああ…子供体温だし温くていいな…。


ひゅるんという音がした後、瓶が輝いた。


凄まじい光量だ。


そして瓶が一層煌めいた後、人影が立っていた。


「お久しぶりで御座います、皆様方!」


「カケル君…キラッミ☆までマスターしてるなんて本当に神様なの?」


某アイドルの如くキラッミ☆をしてるカケル君が瓶のあった場所に居た。


「不測の事態があったにも関わらず、よくぞ私の暇つぶ…試練をクリアなさいました!」


今暇潰しと言いかけた気がするのだけどそこの所どうなんだろうか。


ジト目で見ていると、全力全身で嘗てない程に目を反らされた。


「ですがこれで全てでは御座いません」


同じくカケル君をジト目で見ているヴァーデが「ボスが倒せてないからよね」と言うと、カケル君は「はい、ラスボスで御座います」とにこやか(但し顔は無表情)で返した。


そのグッと親指を上向きに立てるの、止めてくれないかな。


流石に神様を倒すとか出来ないとは思うけど、毎回ご飯が蛆虫に見える呪いくらいなら掛けれる気がするから掛けちゃうかもだゾ☆


おえっ…自分気持ち悪い…


精神的ダメージを散々食らった後なので、全員のカケル君を見る目は冷ややかだった。


「今頃スルメイカしゃぶりながら眺めている女神の分まで罪を背負うつもりは御座いません。私は、これを作っておりましたから」


そう言いながらカケル君が取り出したのは、黒く滑らかな外装のディスクだった。


それはなんだ。


「それは何にどう使い、どう作用するの?ぼくそれパソコンのディスクにしか見えない」


感情の見えないスマイルでジッとカケルを見詰めるクオリ。


あれ?なんだか君から黒いもやもやが…


「リンコ、飴あげるからヴィヴァルディの所にいてね」


わーい!飴だ!飴だ!


早速飴玉の袋を開け、ひたすら舐める。


難しい話はそっちでしてくれ。


私はずっと舐めてるから。





暫くしてから、カケルが私を呼んできた。


なんの用だろうか?


なんだか嫌な予感が…


「このディスクは端的に言いますとコンピューターウィルスのワクチンに似たような作用をする物で御座います。これを使いますと、ただでは済まされない凄い事が使用した方に起きてしまう可能性が御座います。…そして…これは凛子様にしか使えません」


「死ねと」


「言っておりませんよ!?」


「カケル君は使えないの?」


「使えますが……良いのですか?私があの様なストーカー状態になっても」


「…めちゃくちゃ嫌です」


「でしょう!?ですから、貴方様が使って下さいまし」


「解った」


笑顔でカケルを見たら、何故か真っ青な顔をされた。

本当に何故だ。こんなぷりてぃな人工美少女の微笑を真っ青な顔して受け止めるなんて。

自分の顔面を工事したくなってきた。ドリルとかチェーンソーとかで。


さて…解ったと言いつつ、使い方が解らないぞ。


どうすれば良いんだろうか。


私らしく食せばいいのかな。


「食すの駄目だよリンコ!空間にディスクが入っていくイメージしながら差し込めば良いの!」


仕方ない。


流石に私もこんな固そうで味も何もない無機物を食すのにはちょっと抵抗があったもの。せめてマヨネーズがなくちゃ。


空間にディスクが猛烈に入り、更にラスボスが現れるイメージをしてみた。


そのままディスクを思いっきり振りかざす。


「我を召還するとはう、グアァっ!!」


ティオが釣れた。


だが、なんとティオの尻にディスクがぶっささった。


そしてディスクは消えた。


いや、空間に消えたというのは解ってるんだけど。

このタイミングだとティオの中に消えていったように見えて複雑だった。


「ふっ…勝利とはなんと虚しいものだ(バリトンで)」


「凛子様…貴方様ときたらこんな…破廉恥で御座いますよ…」


かっこつけている私に向けて、何ともいえない顔をしたカケル君。


だって一石二鳥かなって思ったんだよ。


「こんな終わり方嫌なのである…」


「私もちょっとこれは流石に…」


其処の外野五月蠅いわ。


ほら、私だって複雑なんだよ。


え?ホラーサスペンス風から急にギャグに戻った?なんでだよ!そんな感じなんだから。


「いや、まだ終わってないよ?わすれたの、リンコ。アレの言ったこと」


…あ…忘れてた…


「ぐ…我が倒れるという事は即ち…彼奴の…理性…が…消え…」


そう言ってティオは完全に気絶した。


おい、不吉な事を言うな!


起きろ!


私の為に起きるんだ!


「ファーストキス分くらい働けよ!!」


びしりと背後から音がした。


「ファースト…キス?やっぱり…してたのね…気の所為じゃなくて…」


ヴァーデが般若のような顔でそう言った。


クオリはぶつぶつとノンブレスで何か呟き、シザリオンは遠い目で空を見ていた。


えと、そうだ。


「裏山に集まった子供は何処にいるんだろう?探してきてくれると嬉しいな」


「「探してくる!」」


クオリとヴァーデが私の言葉を聞いた途端に風のように去った。


ごめんよ…生け贄たち…

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