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言い逃げすんなよ

ティオの黒い靴がガツンと硬質的な音を立てて、クオリの腹を狙った。

それを迅速に抜刀した獲物で弾き、その勢いを利用し後ろに跳躍。

ティオはそれに追い討ちは掛けずに何かを床に流し、ゆっくりと部屋の右側に移動。

その移動に合わせてじりじりと間合いを詰めるクオリは、思念を全員に送った。


《おそらく罠を仕掛けてる!きをつけて!》


わ、罠…ちょっと駄目だよそんな所まで被ったらゴホンゴホン。

いや、まあ、多数に打ち勝つにはそれがベストなんだろう。


ティオはニヤリと笑って罠を発動させた。


――ように見せかけた。


「我は阿呆ではないからな」


甲高い音が響くと共に、赤色に染まるシザリオンの姿が見えた。


背後の暗闇に何者かが居る。


シザリオンが震えながら自身に刺さる凶器を握り締め、そして抜いた。


そんな事をしたら血が!!


眉間に皺を寄せたシザリオンは、犬歯を見せて笑った。


「…問題ない、ゆくぞ」


問題なくない深い傷にも関わらず筋肉でぎゅっと血を止めたシザリオンは、案外人外に近いかもしれない。


ヴァーデが「卑怯者!!」と叫ぶも、ティオは鼻で嘲笑い「貴様達の方が卑怯者だろう。何せ三人掛かりで我に挑んでいるのだぞ?三人掛かりは我も骨が折れる。それ故、我も協力者を呼んだ、それだけだ」と言った。


た、確かに卑怯者と言えないかもしれない。


だがしかし…それを言ったら我等がヒーローは大体5人掛かりで怪人1匹をぼこってますがね。


「それに…我は早く番いと共になりたいからな」


そうティオが言った途端に、膨大な殺気で建物がびしびしといった。


殺気の持ち主はいつも可愛いにこにこ笑顔だったクオリ君だ。

今はカケル君並みの真顔をしている。

こ、怖い。


それを見て笑みを深められるティオの神経が信じられない。


「心地良い殺気をしているな」


心地良い!?

貴方建物が壊れそうな程のこの殺気を心地良いと!?


「殺す」


真顔から急に禍々しい笑顔に変わったクオリ君を、直視する事が出来なかった。


ついティオの方を見てしまった。


だが、後悔した。


光の差さない暗い瞳を狂気的な笑みに変えて、心底愉しんでいるという顔だった。


ま、魔王が2人も居る。


「さあ、愉しもうではないか」


くいっと指を立てて挑発するティオに、クオリはグレネード弾を浴びせる事で返した。


うわぁぁぁぁ…ティオの腕が 飛 ん で き た !


赤色の軌跡を残して飛んできたその腕を、クオリは踏み潰した。


ニィィッと笑みを深めたクオリに、無数の鉄針が突き刺さった。


勢いが良かったからか、クオリの脚が吹き飛んでいく。


ティオはその脚を串刺しにした後に、真っ直ぐクオリの元へ走っていった。


クオリは高速で振り下ろされた剣を弾き、ほんの些しの硬直時にもう片方の腕を切り裂いた。


しかしただで済まさないティオは、振り抜き隙の開いたクオリの腹を切り裂いた。


クオリはぶらりとだらしなく垂れ下がる腑を手で引きちぎった後に、魔法で体を回復した。


ティオは薄皮一枚で繋がっていた腕をぶち切ると、それを喰らった。そして変わりが生えてきた。


人外過ぎるその戦いに、私は唖然とするしかなかった。


ふと部屋の端を見ると、ヴァーデは無傷であるがかたかたと震えながら縮こまっている。


当たり前だ。


だって、些し前までは心身共に普通の女の子だったんだから。


もう1人の敵はシザリオンが戦っていた。


此方も…傷だらけだ。


ヴァーデはかたかたと震えつつも支援魔術を展開しているらしく、金色の光がヴァーデからシザリオンへと降り注いでいた。


どうにも劣勢な気がしてならない。


どうやって倒せるんだこれは。


…ていうか、私、事の成り行きを見守るだけしかしていないな。


でも、多分、距離を結構置いているから落ち着けるだけで、いざ自分が戦うとなるとヴァーデと同じようになるだろう。


私だって争い事とは無縁だった女なんだから。


壁が床が柱が赤く染まっていく。


べちべちと赤い破片がこびり付いていく。


も、もう駄目だよ!!これは視界への暴力だよ!!


気分が悪くなっていった所為か、胸が痛い。


「凛子!!」


眩しすぎて何も見えない。


切羽詰まったクオリの声は聞こえたけど、姿は見えない。


なにこの光。


「ぐっ…なんだこの光は!!我の、我の体が!!まだ完全ではなかったか…」


藻掻き苦しむティオの声が遠くに聞こえた。


どうやら謎の発光に苦しんでいるらしい。


「凛子!!その光を止めないと君も危ないよ!!」


は?


この光…私が放っているの?


クオリの気が反れた隙をついてか、ティオが言った。


「我の肉体が完成するまで、あの狂人に捕まってはいけないぞ、凛子よ。彼奴は狂気に染まりきっている故に、愛しき者ですら手掛けかねん奴だからな。…ではな」


そんな謎の言葉を残して消えたティオ。


ちょ、ちょっと待てよ…ティオに狂人と言わせる程の奴って何!?


ボスは1人じゃないの!?


そこんとこどうなのよ!!


去るなーー!!

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