セクハラは止めて
「つがい?私と貴方が?」
ドン引きしてる事に気付かない皇帝(仮)は、重々しく「そうだ、番いだ」と頷いた。
そうか…此奴が嫌がらせをしたストーカー野郎か。
此奴が、此奴がヴァーデを、その他大勢の皆様を、此奴がやったのか!!
「死に曝せ!」
皇帝(仮)は思い切り振った掌を僅かに捻るだけで回避し、更にその空振りした掌を握り締めた。
痛くはない。
痛くはないが、握られたままその手を振り解けない。
ぐいっと引っ張られて、皇帝(仮)さんのお顔がドアップになる。
やっぱりあの独特な断末魔で有名な皇帝に超似てるな。
皇帝(仮)の妙に赤い薄い唇が開き、微かに二酸化炭素を排出した。
生暖かい風が頬を撫でる。
「そう照れずに我の名を、ティオと呼んでくれぬか?」
頬をしっとりと赤く染めた皇帝(仮)…ティオは、マジでキスする五秒前な近さでそう懇願してきた。
な、なんだこの性的な男は!!ていうか近すぎ!
「ティオ…」
「っ!!リンコっ!!」
彼の何かを刺激してしまったらしく、ガバッと抱き締められる。
いや、締め上げられる。
ギリギリと締め上げられる。
それと同時に、硬くて熱い何かが腹に当たる。
ああ、身長大きいな。
この腹に当たる物を握り潰せば、私の勝ちになるだろうか。
でもこうも締め上げられると、満足に攻撃も出来ない。
しつこいと足を踏もうとすると、またもやティオのお顔がドアップになった。
だから近いんだって!
叫ぼうとする前に唇を吸われ、言葉に成らず掠れた音が漏れ出る。
おまけにペロリと唇を舐められ顔を顰めると、思いっ切りぐいっとされた。
「やめ…っ!?」
舌を、突っ込まれた。
口内の上側をなぞられ、力が抜ける。
ティオは私の何かを啜り取り、飲み込んだ。
何をなのかなんて考えたくもない。
散々舌を舐り満足したのか、やっと私を離した。
いや、完全には離されていない。
まだ手を握られてるもの。
この手を切り取ってクオリを探せば或いは…
考えている事が解る訳でもあるまいに、ティオは「邪魔者を一掃しに出向くか。その後に我と番い合うのだぞ」と意識を刈り取ってきた。
私の視界がブラックアウトしていく。
これだけ。
これだけは言わせて欲しい。
「セクハラは…止めて…」
何処か遠くで「その声ソソるな」と言った気がした。
止めろこの性的野郎!