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神秘の泉に立つ人

今回はクオリ視点です。

つまらなさで死んでしまいそうな毎日だった。


魔族というのは誰もが身勝手な連中で、揃って脳筋だ。少しばかり考える事の出来るぼくは仕方なしに宰相になったけれど、本当はそんな面倒な仕事なんてしたくなかった。

兄を支える健気な弟?なにそれ気持ち悪い。


「ねぇアロンソ、暇だから遊べ」


「クオリよ、一体何なんだ急に…」


兄の名前はアロンソ。純粋に魔族の血統であるぼくと違い、半分は人間の血を引く。脳筋の筆頭だ。ぼくを一番悩ませるこの脳筋は、だけど一番イイ悲鳴を上げてくれるから嫌いじゃない。今も悲鳴を上げそうな顔をしていた。


「首が取れたらぼくの勝ちね」


「いやいやいやいや!首が取れたら死んじゃうだろ!」


「大丈夫、ぼくが勝つから」


「いやーー!」


満足をしたので、アロンソを弄る事を止める。死んだら困るしね。そしてまた、暇になる。

積み上がる書類にうんざりし、そしてその書類はまだまだ増えるだろう事に吐き気を覚えた。本当に魔族の脳筋ぶりは気分悪い。女ですらそうなのだから。


気分転換には、矢張り何も考えずに泳ぐ事が良い。

澄んだセイレーンの泉は、ぼくの故郷。ぼくは此処から産まれた。

実は魔族は別に悪しき存在という訳じゃない。ただ、莫迦で阿呆で迷惑な戦闘狂が多いだけ。ぼくも兄も聖霊の一種で、四天王達は妖精の一種。崇めるのは神と聖霊達で憎むのも聖霊達とは、人間というのは本当に自分の都合の良い存在を好む。人間はこの神秘的な泉ですら汚す癖にね。


暫く泳いでいると、妙に良質な魔力が流れてきた。酔いそうな程に濃厚な魔力は甘く、繊細な菓子のように綺麗だった。

ぼくはその魔力の持ち主に興味が湧いた。どんな人間だろうかとか、どんな味だろうかとか、ただの興味本位で見たのだ。


――それは儚い風貌の人間の娘だった。

桜色の唇と頬は食べちゃいたいくらいに愛らしく、瞳は大好きな泉のように透き通っていて、春色の髪の毛はさらさらストンと長く、可愛らしい顔立ちに似合わないくらい大きな胸は、けれどそのアンバランスさが妖艶な雰囲気を生み出していた。

(魚を釣るために)静かに佇む娘は春の女神の化身だと、ぼくは思った。

嗚呼、彼女にぼくを捧げたい。この身を食してもらいたい。あわよくば彼女を構成する一部になりたい。


溢れ出る思いがいっぱいになり、頭が真っ白になる。普段のぼくはもっと格好良く喋れる筈なのになぁ…


「――」


何かをぼそりと言った彼女は転移魔法を使用してしまい、姿が見えなくなる。

……そうか、きっと彼女は関わるのが怖いのかもしれない。あんなに美しい彼女だもの。早く追ってあげないと、彼女が消えてしまう。


けれど仕事が忙しく、新しい問題というのは急いでる時に限って生まれるから厄介だ。

人間が勇者とやらを召喚したらしい。

どうでもいい塵が埃を呼んだ所で、何も変わらないのにね。苛々する。


「クオリ。部下がお前が怖いと言っているのだが…ひっ!?な、なんでもないぞ、うむ」


「ねぇアロンソぼくははやく彼女に会いたいんだ会って彼女にぼくをたべてもらって彼女といっしょにずっとずっとくらすんだしあわせじゃまするはこわしてかのじょはぼくのになってあはははははははははは」


「ひぃっ!!クオリが違う感じに怖っ、怖いんだがファイロン!!」


「ぴぎー」


ぷよぷよとしたファイロンがぼくの頭に乗っかった。折角幸せな気分になっていたのに。けれどスライムに罪はない。悪いのは仕事を押し付けるアロンソだ。


「仕方ないからアロンソを解ぼ「特別に休みを与えよう」ぼくお兄ちゃん大好き!」


なんて良いお兄ちゃん!

クオリ:実はかわいこぶりっこな宰相 天然ボケがすごい


アロンソ:危ない匂いを察知する事に長けた脳筋魔王 筋肉がすごい


スライム:魔族の一般的なペット ぬめりけがすごい

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