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紅い軌跡を描く彼

「もういーよ!」


すぽっと耳栓を外されて、そう声を掛けられた。


あ、我が家。


眼前にあるのは明らかに我が家であり、心配そうに窓からちらちら見ているのはヴィヴァルディさんだった。

あのね、茶色の長い髪が全て垂れ下がっているのが凄く怖いんだけど。


よもや此処まで血塗れで走って来たのではとドキドキしながらクオリ君を確認してみたら、鼻セレブの様に真っ白なままだった。

そしてよく見たらクオリのコートの裾からイルカさんがはみ出ていた。


「あのね、ずっとこっち見てるから、もって帰ってきたの」


あの受付のイルカさんを誘拐して来たのかこの子は!!

まあ…迷惑料として貰っても良いかもだけども…


そういえば手を出しちゃったから何かされ「ないよ」


「クオリ…君はエスパータイプなのか?私の思考回路駄々漏れじゃないか恥ずかしい!!えっち!!」


「え?これ、えっちな事なの?もー!これでえっちな事なんじゃあ、せいこーなんて、できないよ?」


は?クオリ君いまなんて!?いま凄い事言わなかったか!?


「あのね、イルカさんを、おへやに飾っていい?」


小さいイルカさんを大きい両手でキュッと持ち、こてりと首を傾げるクオリ。


「煮るなり焼くなり好きにすればいいわよ」


「焼いたら、イルカさん、かわいそうだよ!」


キュッキュッとイルカさんから音がした。

ああ、鳴るタイプのぬいぐるみなんだね。


ってイルカさんはどうでも良いんだよ!


「でも、イルカさん、かわいいよ?…凛子の恥じらう顔の方が可愛いけどね、性的な意味で」


「そうだね、イルカさん可愛…いま最後なんか言ったかいクオリ君!?聞き捨てならない事を言われた気がするんだけど!!」


「んー?早く、おうちに、入ろうよっ」


イルカさんを片手に持ったクオリに誘導され(ていうか引っ張られ)、家に入る。


すると弾丸のような速さで抱き締めあげてくるシザリオンが居た。


「あー!!シザリオン、リンコ離して!リンコは今からぼくと夕ごはん作るんだから!」


ああ、クオリ君ったら良い子ね。

ヤクザキックをしてシザリオンを追い払ったように見えたけど、きっと気のせいだろう。

確かにクオリ君は腹黒天使なわんこだけど、暴力的じゃないもの。


「我が輩だってリンコと一緒にでぃとしたいのである!!したいのであるー!!」


「うわぁ」


クオリが地団駄を踏むシザリオンにどん引きした。

でもねクオリ君…シザリオンは確かに三十路的な渋さがあるけどね、16歳なんだよ。

それに対してクオリ君は一体何歳なのさ。

絶対に16歳じゃないでしょ。

見た目は童顔だからちょっと18歳辺りに見えるけど。


「ぼく、2640歳だよ?人間でいうと、26歳?」


「に…26!?」


イルカさんを持って可愛らしく頬を膨らます26歳の男性…か。

美形って本当にそういう所は狡いなって思った。





「で、なんで宗教軍団に喧嘩売ったのに大丈夫なのか教えてくれる?」


目を離そうとすると直ぐに自分の腕を切り落とそうとしたりするので、お手伝い&監視をしながら訊いてみた。

するとにこにこと微笑みながら、教えてくれた。


「のーみそ弄くって、ぞんびにしたの!あのね、ぞんびはね、ぼくに敵視するような者を、くうき感染させるぞんびなの。でも、見た目は、ふつーの人間なの。だからね、目撃者はぜんめつするから、安全なの!」


あの中に居た敵は死に絶えたと思うよ!と、包丁で魚を捌きながら言った。


魚の内臓から出てきた血でまな板と包丁を真っ赤にしながら、ぼくは容赦しないの!と微笑むクオリ君がぶっちゃけ怖いと思うのだがどうしよう。


「でも、監視カメラ…」


「ぼくが、見落とすと、そうおもうの?」


「愚問であったか」


クオリ君ったらマジ頼もしい。


ねぇ、今回のって、私が頑張る意味あるの?

天然チート(クオリ)に任せたら3日で終わりそうなんだけど!





入ってきた情報に、人の良さそうな笑みを浮かべた少年が呟いた。


「彼女達が動いたのですかね?だけど…それにしては手抜かりがないですね」


監視カメラにも、人の記憶にも、何も残っていない。


ただ、ラットランドに居た己の手駒のみが内側から爆破されたらしいという、そんな情報だった。


約2000もの手駒を躊躇無く惨殺した相手は、記録は勿論のこと、指紋の痕跡も靴の痕跡すらも残さずに消えてしまったらしい。


常人なら目を背けてしまいそうなそのやり口からして、恐らく超能力者だろうと話が上がる。


「彼女達は確かに頭がよいかもしれませんが、特に超能力を持っている訳ではないみたいですし…まさか隠し持ってる?いや、そうだとするなら、もっと上手く止めたりしますです」


「超能力者特有の異常性と同じ様なものがあるとは、ぜんぜん思えませんですし」


そう言いながら少年が見たのは、真っ白なコートを羽織った男の写真だった。


少年には子供のような笑顔をしている無邪気な男という印象しかないので、中身をそれ程知らなかった。


「荻原凛子。何故に彼女を欲するのですかね?教えてくれないなんてあんまりなのですー」


つんつんと写真の白い男とツーショットで映っている凛子をつつき、少年は溜め息を着いた。


「どうやったら凛子を動かせるのです…もっとこう、気分の悪い事でもやったらいいですかねー」


「ああ…きっと温すぎたんですね」

クオリの言動は、半分は作ってますが、半分は素です。

イルカさんの下りは完全に素です。

ピュアなのか腹黒なのか判然らない感じになっていますが、多分私の書く子の中ではピュアな方です。

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