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宗教軍団への怒り

「なんでこれ、ぼうを貫通させて、じょうげに揺らしてるの?」


「子供が喜ぶからだよ」


メリーゴーランドを指差したまま乗りたいと騒ぎ出したクオリ君を羽交い締めにする。

乗り放題のパスも何もないのに乗れないのよクオリ君。


「乗りほーだい?あんなのに許可いるの?」


こてりと首を傾げる姿は子供のようだけど、目がどことなく荒んでいた。

拗ねないでおくれよクオリ君。


「ぼく、拗ねてないもん!」


腰の物を触りつつ、ぷいっと横を向くクオリ。


凄まじく恐ろしいので、それ以上何も言わない事にした。





楽しそうにアイスを食べる帰り道を探す気のないクオリを見ながら、ケータイを弄くる。


宗教軍団は着々と武装化をしていっている様で、その上に政治家が何人か入信してしまったらしく、益々混沌としていっているらしい。


超能力持ちはとある街を中心として広まったのだと、警察のコメントがネットの記事に書かれていた。


否が応でも騒がしくなるだろうな…


黄昏ていると、アイスを食べ終わったクオリが「つぎはね、イルカさんを見にいこーね」と私の手を持った。


繋いだとは言わない。

だってギュッと握り締めてそのままだもの。


ぐいぐい引っ張られて向かうのは、ラットランドにある小さめの水族館。


イルカのぬいぐるみが置かれたカウンターを見て「ほら、リンコ!イルカさん!イルカさんが、こっちみてる!」とはしゃぐクオリ。良かったね。


丁度やっていたイルカのショーを見ながら、またケータイを見る。


宗教軍団は新しい秩序を齎そうとしているらしく、反対をする者を惨い方法で処分している…らしい。


これ、私が戦って大丈夫なのか?


無視していたけれど、周りから壊していくやり方を見て失敗しちゃったかなと思った。


流石にね、私の体がめちゃくちゃ強化されているからといって、軍人とかそういう経験豊富な人の方が強いと思うのよ。


それに相手は戦闘経験なんてないだろう超能力を使うだけの者達だ。


だからね。


テレビ局をジャックされてニュースが飛び飛びになり、見ると暫く操られる洗脳映像が流れる。


発電所を乗っ取り、手を出すと仕掛けた爆弾を作動させると脅迫する。


ダムというダムに超能力者が集まり、否定的な者達に見せ付けるように、否定される度に一つ破壊していく。


水道局に混じっている超能力者も、意見を通さないというなら毒薬を混ぜ込むと主張する。


という…まさかこんなに足並み揃えてくると思わなかったのよ。


…うん、めちゃくちゃ絶体絶命な感じ。


だけども逆らったりしない限りは何もしないというので、誰もかもが迂闊に動けないし動かない。

正義感が強かろうとも、大量殺人をされてしまうかもしれないというプレッシャーは常人には耐えれないだろう。


動けるのは、正義感が強すぎる異常者か、もしくは私くらいかな。


だってほら、私以外はまさか神様が全て無かった事に出来るよって事を知らないからさ、私以外の奴が動いたらキチガイって事になるのさ。


なんだか嫌な役回りだわ。





イルカのショーも終わりに近付き、疎らな拍手が響く。


観客たちは心なしか元気がなく、ぐったりとしていた。


それを見ながら水族館から出ようとすると、ピエロ衣装を着た男に呼び止められる。


「君はカオス神様を信じているかい?信じているよね?そうに決まっているのさ。そんなカオス神様から御告げなのさ。今すぐ君を生け贄に捧げろっていう名誉さ!!」


ギラギラとした目で大きめのナイフを取り出したピエロ男は、そのナイフを…超能力かな?超能力で熱して私に振りかざした。


咄嗟にクオリを見ると、細く長い日本刀の様な剣を振り抜いた後だったらしく、血塗れの剣を仕舞う所だった。


何も考えずについピエロ男の方を見ようとすると、クオリの大きな掌が私の目と鼻を塞いだ。


「あのね、ショーでみたイルカさん居るでしょ?あれ思い浮かべてて。口で息して。すぐだから」


言われた通りにすると、耳にすぽっと何かを埋められた。


耳栓か?


特別な力でも投与してある耳栓なのか、音が全然聞こえなかった。


いや、かちかちという音がする。


ひょいと片手で私を抱き上げたのか、体が動いた。

まだかちかちという音がすると思えば、それは私の歯が震える音だったようだ。

私は人並みに恐怖を抱いているらしい。


粘つくような空気だと、口で息してても解る。


悲鳴も怖いものも全然聞こえないし見えないけれど、早く終わって欲しいと願う。


面倒なのは嫌いなんだ。


だから今とても怖いと思っている自分が嫌いだ。


ああ、私、怖いのと面倒なのをごっちゃにしてたのかな。


あの黒いもやもやに対して、存外抱いているらしい恐怖心。


それを目の前にいるクオリにしがみついて誤魔化した。


うん、大丈夫かな。


クオリと一緒なら大丈夫な気がする。


…ようやく落ち着いてきたし。


落ち着いてきたら沸々と湧いてきた。


今度こそ、これこそ、憤怒というものだろう。


そっちがその気なら、やってやる。


ぶち殺してやる!

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