嗤う黒い超能力者
「…また殺人事件か」
新聞にドドンと載るのは、この街で現れた謎の宗教軍団による殺人事件だ。
許さん…私の心の平和を破る奴なんか許さん!
まあ、どうせ女神が何とかするだろうと放置した。
え?チート能力を持っちゃった私が倒せって?
冗談言わんといて欲しい。
楽して幸せに生きるつもりだから私は。
「あのね、リンコ、またポストにね「あークオリを食べたくなって来たかもしれないわぁ」本当!?ぼくを、食べるの!?」
わあ…凄い食い付き…
そのもちもちしたほっぺに取り敢えず噛み付くフリをしたら、怒りの表情をしたヴァーデが走って来た。
「駄目よリンコ!!噛みつかれたきゃ私があんたを噛み千切ってやるわ!!」
「やめてよばか!!ぼく君のだえき付くなんてヤダ!!」
どったんばったんと何故か最終的に殴り合いになる2人を見ると、そこはかとなく癒される。
実は未だに、ポストに脅迫文(恋文?)が届いていたりする。
クオリが凄まじく反応するのが、なんだかいたたまれないというか……まあぶっちゃけ面倒なのではぐらかしてる。
ほら、クオリ君は何故か 私に対しては三歳児になるから。
すっごく楽に黙せれるんだ。
取り敢えず…内心もう行きたくないなって思ってる学校に、クオリ達を連れて登校。
相変わらず女子達はきゃあきゃあと小山の猿みたいに騒ぐ。
めっちゃくちゃ煩いから頭をかち割りたくなるけれど、冗談では済まなくなるので我慢をする。
教室に入れば、声が止む。
クオリ達が来て2ヶ月も経つと、クラスメート達はとても立派な軍じ…体育会系な奴等になった。
「今日もおはよ!」
「「おはようございますクオリさん!」」
「リンコの席は?」
「「何時も通り綺麗に磨いておきました!」」
「えへへへ。あのね、誉めてあげる!」
…クオリさん…クラスメートを洗脳しないでくれないかな…。
こうなったのは間接的にとはいえ私の所為だけども、流石にちょっとこれは…
私はただ煩いのが嫌だと言っただけだし…
「えー…今日の出せ「「山田以外は出席しております!!」」そ、そうか」
まあ纏まってて良いか。早く終わるし。
「あー…急に決まった事だからいきなりになるが、今日から新しく留学生が入る事になった。…ほら、入っておいで」
嫌な予感がしつつ、留学生とやらをジッと見る。
やばい…こいつ…黒いもやもやが見える!
ジィィィッと私を見ながら、留学生は自己紹介した。
「こんにちはです!今日から暫くこのクラスに入ります、藍川セリムっていいますです!宜しくなのです!」
黒髪で黒目で肌の白い留学生…藍川セリムはにこにこ笑いながらそう言った。
何故か私をガン見しながら。
そして付け足すようにぽつりと言った。
「実はセリムは、超能力なのです!」
にこにこしながらの黒板割りは怖かった。
しかもすぐに直した辺り、かなりの力を持っているようだ。
しかし…簡単にバラすとは…
セリムは私の横をわざわざ選んで通り過ぎるその際に、人外にしか聴こえないような声量で囁いた。
「何時も通りに過ごせなくなるようにしてあげますです」
ぞわっと、鳥肌が立った。