元凶は呑気に笑う
明けましておめでとうございますですー
学校から帰ってくると、家の中には儚げな女神が佇んでいた。
その神々しさ。
外見だけか…それとも中身もなのか…
何があっても驚かないという心構えをしてから「誰ですか貴方」と聞くと、女神はふわりと笑った。
「私はあなたの妻でぇすっ……うえっぷ…吐きそう…」
「そんな所で吐くな不審者!!」
違う意味で驚いたわ!
いきなり吐くとか何だこの女!!
イメージぶち壊しにも程が過ぎるだろ!!
思わず蔑んだ目で見ていると、ゲロ女はグフフとおっさん臭い笑い声を上げて言った。
「もお凛子ちゃん!ゲロ女は厭だぞぅ!私の事は愛情を込めてマルちゃんって呼んでね☆」
「おマルちゃん」
「きゃ~名前呼ばれちゃったぜ超嬉しい!グッフッフッフ…」
その笑い声止めて欲しいマジで。
悪夢を見ているような気分になるし。
おマルちゃんは女としてどうかと思う笑い声を響かせた後、思い出したように言った。
「あ、そうそう。私ったらビールぶっ零しちゃった所為でさー、No.966…は可愛くないからクロムで。クロムっていう超ド級に危ない犯罪者の魂を此処に逃がしちゃったのよー。いやー参った参った…××の作ったシステムに入った所為で凄いやばいくらい殺戮大好き凛子ちゃん大好きなラスボスが誕生しちゃったZE☆もうマルちゃんったらおきゃんでドジっこだわー」
なにそのラスボス。
殺戮と並んで好きとか真っ当じゃない好意なんかめちゃくちゃ要らねえよ!!
「敵は大量に分裂してるから気を付けてちょうだいな!ああ、そうそう、人が殺害されても何とか誤魔化すから安心してね☆」
「それって…市太郎が死んだという事実を無かった事にするっていうの?」
恐ろしい事実を取り敢えず無視してそう言う。
「そう☆貴女が生き返らせなくても大丈夫だったんだけど…まあ、少し手間が省けて良かったわ」
きゃふきゃふと笑うおマルちゃんと私。
私の場合はちょっとカクカクした笑い方だけど許せ。本音言えば笑えねーもん。
よく考えたらいま側に居るはずのクオリ達の姿がないけれど、多分恐らくきっと女神の力だとかそんなんで私と彼女の2人きりにしたんだろう。
やや不安だ。
「クロムは…貴女のお父さんの魂まで取り込んだ所為で、貴女に対して歪んだ愛情を持っちゃったのよ。取り敢えず出来たらお父さんを助けましょうね☆」
「ちなみにお父さんを取っただけだとどうなるか分かる?」
「白が赤に染まったら戻れないように、一度根付いた自我は消えないわよ?肉体が滅ばなきゃね」
逃げる道を絶たれてしまった!
そんな…面倒な事をこんなにしなきゃとか…死ねるわ。
「別に大丈夫よ?戦わなくても」
そう言った女神に後光が差しているように見えた。
「貴女が黒いもやもやに捕まれば多分満足して大人しくなるもの」
「ちょっと待てちょっと待てちょっと待て!そんな身を呈すくらいなら殺りに行くわよもう!」
「ヤりに行くの?ぐふ!楽しみだわーー」
きっと勘違いしている。
そんな気がしたけど無視した。
藪蛇はいやだもの。
気付けば女神は消えていて、クオリ達が隣に居た。
……夢か。
そう思ったけれど、クオリがアッと叫んだ。
「リンコ、そのまーくは何?きすまーく?」
「げ…やられた…」
私の首筋にキスマークに似たものがくっきりとあった。