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失せた記憶と解放

「やっぱり通帳に入ってるよね…あの子の名前で」


いつも使ってる銀行の通帳を広げて見ると、やっぱりあの子の名前でお金が振り込まれている。


やっぱり柩が混乱しているだけなのだろう。


ヴァーデを生首だけにしたのは柩だというし、疑惑の眼差しを向けてたのは普通に生きていたからだろう。


謝ろうが何しようがもう変わらない。


私は柩が嫌いだ。





後ろから柩が付いてくる事が多くなり何度も話し掛けられそうになるものの、その度にクオリが頓珍漢な事を言って抱き付いてくるお陰で話さずに済んだ。


だいたいだね。

私の親しくなった人を殺したにも関わらず、散々嫌がらせしたにも関わらず、今更になって仲良くしたいというのが図々しいのよ。


私はそんな奴に優しく出来るお人好しなんかじゃないんだよ。


違うと何かを否定する言葉を漏らす柩は、何が違うんだと言うのか。


要領を得ない科白には飽き飽きだわ。


その会話を聞いててヴァーデとシザリオンは気分を害したという表情をするのに対して、クオリはやけにご機嫌だった。


「なんでそんなに機嫌が良いのよ」


疑問に思ったヴァーデがそう言うと、柩をチラッと見てからにこにこ微笑んだ。


「だってリンコ、ぼくにすっごくくっ付いてくれる!えへへへ…リンコ、あったかい…」


いや、確かにクオリの手を握り締めているという自覚はあるけども、すっごくくっ付いてくるのはクオリ君の方でしょうが。


「ふむふむ、確かに暖かいのである!」


「何処触ってんだシザリオン!」


人の尻を触ってきた馬鹿を蹴り上げる前に、ヴァーデがシザリオンをぶん殴った。


するとシザリオンがぶっ飛んで柩にぶつかる。


「ざまぁ」


…クオリ、柩の事嫌い過ぎじゃないかな。

いや、シザリオンを嫌ってるのかな?

どうなんだろうか。

ちょっと怖くて聞けないんだけど。


そうこうしていると、巻き込まれた柩の頭部から黒いもやもやが出てきた。


黒いもやもや…もしやエクトプラズムか!?


黒いもやもやが出きると、柩の髪の毛やら何やらがぶわっと変わった。…何事?


東洋系から虹色の髪の毛と瞳の西洋系の美少年になった。


いや、本当に何事よ!?


「わあ…頭がすっきりしたぁ!!良かったぁ…ずぅっと頭が痛かったんだよねぇ」


可愛い声で頭をさする美少年。


柩は何処に消えたの?


じろじろと見ていると、美少年が此方を見て「お姉ちゃんありがとうねぇ!!」とブンブン手を振り回した。


ごめん…超展開過ぎて頭がついていかないよ。





「――という訳でぇ、おれは本っ当に何もやってないんだよぉ。いったい何なんだろうねぇ…」


学校をサボり、ファミレスにて美少年とお食事をする事にした。


その美少年がしてくれた説明によると、前から時々意識を失う事が多々あったらしい。

最近では意識を保っていたものの、体を乗っ取られてたとか…。


悪霊的なもの?はよく判然らないけれど、美少年は自分は柩だという。


いや、記憶の中の柩と違うんだけど。

少なくともこんなに人懐こくなかったよ。


「おれねぇ、普通の人間じゃないんだよぉ。前世の記憶があるんだぁ」


間延びした喋り方は矢張り柩っぽくないし、前世がどうたら言うような子じゃなかったし…なんともいえない展開になったなぁ…


「じゃあなに?あんたはあの黒いもやもやと関係ないっていうの?」


「ないよぉ?おれ、お姉ちゃんみたいな子は好きだなぁって思うけど、幼少期を一緒に過ごした記憶はないしぃ。あの黒いもやもやはなんかお姉ちゃん大好き過ぎて気持ち悪いぃ」


ヴァーデに質問されて答えた柩(仮)はおえっと嫌そうな顔をした後に、意味深な事を言った。


「多分だけどぉ…あの黒いのってお姉ちゃんの知り合いだよぉ?おれが来る前に死んでて、尚且つどろどろしてたしぃ…お父さんだったりしてぇ」


「え?彼奴は生きてるじゃない」


「あれぇ?もしかしてそんな記憶すら飛んでるのお姉ちゃんったらぁ。実父は死んじゃって、再婚したでしょぉ?」


本当に記憶にない。


脳細胞が著しく軽減するような事をされていたけれど、さっぱりと記憶にないのが少々怖い。


「兎に角ぅ!あの黒いのって多分簡単に何かに取り憑くんだと思うよぉ?気をつけてねぇ」


神妙な顔でそう言う柩は、嘘を付いているようには見えなかった。


それに…私自身、何か引っ掛かるものがあるし。


私、記憶ってあの子と知り合った時くらいからしか、はっきりしてないのよね。


ずっと栄養失調だったし、家から出して貰えない事が多かったし。


気持ち悪くて俯いていると、シザリオンがキリッとした顔で宣言した。


「我が輩があのくろいもやもやを剣の錆にしてやるから安心するのである」


…多分錆にはならないんじゃないかな。


だがありがとうよシザリオン。


ちっとは元気になりましたよ。





柩(仮)を連れて家に帰る事にした。

どうも柩(仮)は大学を卒業したので、暇らしい。なる程これが天才児。


家の中にはがたがた震える市太郎が座っていた。

昔に比べて大分イメチェンしちゃって。


クオリが市太郎の前に座り、じっと見る。

市太郎はびくびくとクオリを見やるが、クオリの笑顔で早くも絆されたのか強張りが抜けた。

恐るべし宰相さま。警戒心を拭い去る笑顔とは。


「君を殺したの、こいつ?」


ふぉ!?

クオリの顔が黒いもやもや装着時の柩になったので、かなりびびった。


私がびびったのだ、市太郎は絶句していた。


こんな特技持ってたの…


「ち、違う…俺が見たのは…春山先生だよ…」


「は?どういう事だ!?市太郎てめぇは何を見やがったんですか!?」


「落ち着いてリンコ」


おっと…つい興奮して市太郎をがくがくと揺らしてしまった。


クオリが柩(仮)を見ると、柩(仮)は頷いた。


「あのね、これ、ぼくの予想。黒いもやもやって、ふくすうに憑けるのかも」


「多分クオリさんの考えで間違いないよぉ」


柩(仮)も戻った(?)んだし、こ、これで終わりじゃ…


「ないと思う」


ですよな。

思いっきり風邪引いたので、頭が痛くて話を作り込めず、とても超展開になってしまいました。


でも元々柩は操られてる設定で、柩はヤンデレじゃないのです。

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