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悍ましい気配の男

ある男が出来たての鞣し革を身に付け、ホテルから出た。


空は緋の色に染まりつつあり、もうじき朝が来る事を民家の飼い鶏が告げている。


男は目を細めて空を見やると、歩き慣れた道を進んで行った。


その瞳はどす黒い狂気の色に染まっていた。





ポストの中身はとりあえず置いといて、学校に登校しますたー。


荻原凛子さんでっす。


自分の席に着き、辺りを見回す。

おお…みんな結構お気楽ですなー。


自分に災厄が降りかかるとは思ってないのか、昨日のドラマやらどこそこで連載中の漫画やらの話で盛り上がっていた。

私が居る限り平和なんて来ないのにね(笑)


勿論巻き込む気満々ですが何か?


はげ…春山先生が教室に入ってきた事で会話は止まる。


私は出席を取る春山先生をガン見する事にした。

なんかね、ちょっとだけだけども違和感を感じたんだ。


事件の事について話す春山先生も、一旦クラスから出て行く春山先生も、一つも言動を聞き漏らす事ないように、一つも行動を見逃す事ないようにした。


なんだろうこの違和感。


胸が激しくのた打ち回っている…?


もしやこれは!!恋か!?これが恋なのか!?


「それはない」


クオリの何時になく冷静な突っ込みが悲しかった。





「ハルヤマ先生に違和感を感じる?」


「たしかに、ハルヤマ先生のは、じんこー毛って、かんじする!」


「ふむん…変な感じはしなかったのだが」


居候三人組に話すと、そう返ってきた。

クオリ…そんな無邪気な笑顔で残酷な事を言うのね。

そう思っていると、クオリは真面目な顔で私を見た。

なにかしら?


「あのね…春山先生にね…注意してた方が良いよ。僕も今の彼には違和感が拭えない」


神妙にそう言ったクオリ。

ヴァーデとシザリオンがそんなキリッとした表情のクオリを見て、がくがくぶるぶる震えながら言った。


「これ本当にクオリなの?だ、大丈夫?何か悩みでもあるの?私あなたの事嫌いだけど話しだけなら訊いてあげるわよ?」


「我が輩がぷりんを食べたから怒って壊れてしまったのであるか!?わ、我が輩の所為でクオリが…うぉぉおおお!!!!」


クオリは二人を冷めた目で見ていた。


「切り替え早いだけだよ僕は」


な、なんの切り替えなんだろう?知りたいけど知りたくないわあ。

ほら、リンコーって可愛く抱き付いてきて頬肉を削げ落とさんばかりにしてるし。

このわんこみたいなのがクオリ君の本性だって。


「遠い目をしてるわね…リンコ。ていうかクオリはリンコにくっ付き過ぎよ!リンコの香りが損なわれてしまうわ!」


「リンコ、寝るなら我が輩リンコの枕になるのである!…こらヴァーデとクオリ!我が輩を殴るな!我が輩はただ純粋にリンコの枕になりたいだけなのである!!」


ヴァーデによりクオリから引き剥がさたと思えば、やけに興奮しているシザリオンが服を脱ぎつつ抱き付いてきた。

何故脱いだお前は!


それを二人がぶん殴って引き剥がす。

更にはごすごすと二人仲良くシザリオンを蹴り上げる始末。


クラスメート達は顔を出来るだけ此方から背けていた。

此処には勇気ある生け贄はいないのか!


私がガン見してると気付いたのかは知らないけれど、先生が来るまでお花を詰みに行く人が続出してしまった。


申し訳ない春山先生。


教室中から漂う芳香剤の臭いはこの三人組の所為なんだ。





春山先生ウォッチングを続けること放課後。

矢張り違和感がするな。変な所はなかったのに。


その肝心の春山先生は、クラスメート達が帰る最中も何かの書類を纏めていたので、いまだ教室内に居た。


帰るクラスメート達が口々にオンラインゲームの話をしているのが聞こえてくる。


「しゃおん(♂)って名前変だろお前~!確かにリアルじゃよく女に間違われてるけど、お前のアバ、ガチムキだから間違えようないだろーが!」


名前…間違えようがない………あ。


そういえば私、名前とか見れるじゃない!

魔術使えるじゃない!

何故に気付かなかった!

いや、まあ、使わなくても普通に過ごせちゃうから忘れてたんだけどもね。


例の機能を早速ONしてみた。

そして春山先生を見てみる。


名前:荻原柩

愛情度:MAX


…ちょ、どういう事よそれ!

意味不明過ぎる!


頁をスクロールする感じをイメージして目を瞬くと、詳細が浮かんだ。


ほうほう…え?私の義理の弟?

そんな存在、居たっけ?………居たよそういえば。


何故か幼なじみに対して異様に冷たかった、我が弟。

私を凄まじく嫌っていた記憶は確かにあった。

普通なら忘れないような事だろう。


でも私、あん時も今も其処まで気にしてなかったからなー…


で、どうして春山先生に変装してるんだお前。


まさか犯人はお前じゃないだろうな…


ジッと見詰め続けていると、不意に春山先生(偽)がこっちを見てきた。


ニィィイイっと背筋の凍るような笑みを浮かべて、ゆっくりと薄い唇が動いた。





あ い に き た よ





う、うわあああぁぁぁぁあああ!!!!


悲鳴も上げれず、一目散に逃げ出す。


三人も後ろからはてなを浮かべつつも付いて来てくれるけど、鳥肌は止まらなかった。


……本物の春山先生は、どこに行ったんだろう?

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